- ラテン・グルーブの熱い夜 -

ファニア・オールスターズ Fania All-Stars

この年の出来事 代表的な作品 デビュー 物故者
<サルサの決定版>
 あらゆる音楽ジャンルにおいて、その音楽のスタイルを決定づけたエポック・メイキングな作品というものが、必ず何枚かは存在するものです。例えば、80年代のパンクロックにおいては、セックス・ピストルズの「勝手にしやがれ」がそれに当たるでしょうしし、レゲエにおいてはボブ・マーレーの「ライブ」だったりするでしょう。しかし、サルサというジャンルにおける、このアルバムの存在ほど、歴史的に重要かつ素晴らしいアルバムは他に類を見ません。そして、それにはいくつかの理由があるのです。

<「オールスターズ」の決定版>
 先ずはなんと言っても、このバンド、ファニア・オールスターズが、その名に恥じない文字どうりオールスター・バンドであることがあげられます。
 レイ・バレット、ウィリー・コローン、ラリー・ハーロウ、ジョニー・パチェーコ、ロベルト・ロエーナ、ボビー・バレンティン、ルイス・ペリーコ・オルティス(このライブには不参加)、サントス・コローン、エクトル・ラボー、イスマエル・ミランダ、ピート・エル・コンデ・ロドリゲス、アダルベルト・サンチアーゴ、そしてゲストにボビー・クルーズ、リカルド・レイ、チェオ・フェリシアーノ、ヨモ・トロなど。
 なにせ、15人以上の参加者ほとんどが、その後リーダー・アルバムを発表し、サルサを代表するスーパースターになっているのです。70年代、ニューヨーク・サルサの黄金時代はこの作品に参加したファニア・レーベルのアーティストたちによって築き上げられたと言ってよいでしょう。これほどのスーパーバンドは、他のどの音楽ジャンルを見渡しても、例がありません。(ちなみに、我が日本のオールスターズ「サザン・オールスターズ」は、その名をこの「ファニア・オールスターズ」からとっています)

<サルサ誕生の瞬間>
 しかし、このアルバムが本当の意味で重要なのには、もうひとつ理由があります。「サルサ」というサウンドは、もともとキューバで生まれた「ソン」と言われるラテン・サウンドが、「ルンバ」や「マンボ」などのスタイルを経た後、アメリカでジャズの影響を受けながら、ジャム・セッションを繰り返す中で、磨き上げられた音楽と言うことができます。(この時代についてさらに知りたいかたは、「パルミエリ兄弟」へ)そして、このアルバムは、その完成型が今まさにできあがらんとする瞬間をとらえた貴重な作品なのです。それは、ニューヨークのクラブ「チーター」というラティーノたちの熱気に満ちあふれた空間において、最も熱く燃え上がっていた時代に録音されるという、幸運が生んだ奇跡の録音なのです。
 バンドの音はもちろん、それに合わせてまき起こる観客の手拍子や歓声は、他の時代の録音では聴けないグルーブ(熱気)を生み出しています。おかげで、このアルバムを聴く度に僕たちは、今まさに「サルサ」という新しいサウンドが生み出されようとしている奇蹟の瞬間を体験することができるのです。なんと幸せなことでしょう。

<追記-リンガラ・ポップとサルサ>
 ザイールから世界に飛び出したリンガラ・ポップの大御所、パパ・ウェンバのバンドの名前は「ヴィバ・ラ・ムジカ」といいます。ところが、この名前の由来は、かつてファニア・オールスターズが行ったザイールのキンシャサにおける公演において、彼らがスペイン語で連呼した「ヴィバ・ラ・ムジカ!」(音楽万歳!)からとられたものだったのです。彼らの素晴らしい公演を聴いて、感動し、影響を受けた多くのアフリカの若者たちの中にパパ・ウェンバもいたのです。このように、アフリカを代表するポップス、リンガラはアフリカの伝統的な民族音楽よりも、中南米のラテン音楽(サルサやマンボなどのキューバ系サウンド)の影響の元に生み出されたというのは、意外な事実です。こうして、音楽による感動が国境や音楽のジャンルを越えて、世界に広まり、さらなる新しい音楽を生み出していったというのもまた、20世紀という時代が生んだ素晴らしい成果の一つと言えるでしょう。

関連するページ
パルミエーリ兄弟
(デスカルガの時代)
ティト・プエンテ
(マンボからサルサ)
ウィリー・コロン
(サルサのリーダー)
ジョニー・パチェーコ
(ファニア創設の物語)

     アンダーラインの作品は特にお薦め!

ロック系
雨を見たかい」 (シングル)Creedence Clearwater Revival
"At Fillmore East" The Allman Brothers Band
(サザン・ロック時代の先駆けとなったライブ・アルバム)
"The Concert For Bangla Desh" Various Artists
イマジンJohn Lennon(これが甘っちょろい夢とは思わない!)
こわれものYes (名曲「ラウンド・アバウト」収録の代表作)
君の友だちJames Taylor (シンガー・ソングライター・ブームの火付け役)
"Led Zeppelin W"Led Zeppelin (これが最高傑作かもしれない)
"L.A.Woman" The Doors (ジム・モリソンの遺作となった)
"Naturally" J.J.Kale (シブーイ男の魅力、カントリー・ロックの大ベテラン)
"Nilson Schmilson" Nilson (永遠の名曲「ウィザウト・ユー」収録)
"Mad Dogs And Englishmen" Joe Cocker
(彼ほど個性的なヴォーカリストが他にいただろうか?)
"Maggie May" Rod Stewart(いよいよキツツキ・ヘアー時代へ)
"Mud Slide Slim And The Blue Horizon" James Taylor
おせっかいPink Floyd
"Pearl" Janis Joplin (ジャニスの最高傑作はこれでしょう)
"Poems, Prayers And Promises" John Denver(「太陽を背に受けて」収録)
"Sticky Fingers" The Rolling Stones
(かなりファンキーな内容、ウォーホルデザインのジャケットが最高!)
"Teaser And The Firecat" Cat Stevens
"Tupelo Honey" Van Morrison
(かたやイスラム、かたやカソリック、でもこの頃すでに変わった人でした)
対自核」 Uriah Heep (わけの解らないタイトルながら大ヒット)
タルカス Tarkus」 Emerson,Lake & Palmer
電気の武者T-Rex (別次元のロックを生み出したバンド)
つづれおりCarole King(とにかく、いやと言うほど聴いた。でもまだ聴ける)
ソウル、ファンク系
暴動 There Is A Riot Goin' On 」 Sly & The Family Stone
"Extension Of A Man" "Live"Donny Hathaway
(上記2作とも、煮詰まりきった傑作、二人に明日はなかったのか?)
"Let's Stay Together" Al Green
(メンフィスのハイ・レーベルが生んだサザン・ソウル・ヒーロー)
"Maggot Brain" Funkadelic(こちらは、ブチ切れたところからスタート!)
"Pieces of a Man" Gil Scott- Heron
(名曲「Revolution Will Not Be Televised」収録)
"Stand By Your Man" Candi Staton
(映画「ブルース・ブラザース」のウエスタン・バーで歌われた名曲、ただしオリジナルはカントリー歌手のタミー・ウィネット)
"The Theme From Shaft" Isaac Hayes
(映画よりも音楽の方が格好良かった)
"What's Goin' On" Marvin Gaye
(雑誌ローリング・ストーンが選んだロック時代の最高傑作アルバム)

サルサ系
"Live At University Of Puerto Rico" Eddie Palmieri
(この時代のテンションの高さが、そのままサウンドに!)
"Live at Sing Sing" Eddie Palmier
(シン・シン刑務所でのライブ、テンションとにかく高し)
アフリカン・ポップ系
"Live 1971" Bembeya Jazz National
(ギニアの老舗バンドの10周年記念アルバム)
ユーロ・ポップ
愛の物語」「愛のコレクション Michel Polnareff
J-ロック、フォーク、歌謡曲など

乙女の浪漫あがた森魚
風街ろまん」 はっぴいえんど (とにかく、聴いてなければ買いましょう!)
河童」ミッキー・カーチス&サムライ
黒いカバン泉谷しげる
結婚しようよ」吉田拓郎
世界革命戦争宣言」「赤軍兵士の歌頭脳警察
さいはて慕情」渚ゆう子
SATORI」 フラワー・トラベリン・バンド
さらば恋人」境正章
出発の歌」上条恒彦&六文銭
放送禁止歌」 山平和彦
また逢う日まで」尾崎紀世彦(レコード大賞)
真夏の出来事」平山三紀
夢は夜ひらく」 三上寛




ロック系
Bonnie Raitt "Bonnie Raitt"
Carly Simon "Carly Simon"
Crazy Horse "Crazy Horse"
The Doobie Brothers "The Doobie Brothers"
Eagles "Eagles First" ,
The J.Geils Band "The J.Geils Band"
Little Feat "Little Feat" ,
Olivia Newton-John "If Not For You"
Rita Coolidge "Rita Coolidge"
Scorpions "Lonesome Crow"
Thin Lizzy "Thin Lizzy"
ZZ Top "First Album" ,
ソウル、ファンク系
Earth,Wind & Fire "Earth,Wind & Fire"
OSIBISA "OSIBISA" (アフロ・ロック・バンドの先駆け)

歌謡曲、フォークなど
高田渡「ファースト・アルバムごあいさつ」
PYG「花・太陽・雨」(ショーケン&ジュリーのスーパー・グループ)
南沙織「十七才」


Duan Allman  10月29日 オートバイ事故 24歳
Frank Wolff(ブルーノートの経営者)  3月 8日 心臓発作 ?歳
Gene Vincent 10月20日 胃潰瘍による出血 36歳
Jim Morrison(Doors)  7月 3日 麻薬、心不全 27歳
Junior Parker(Blues Harpist) 11月18日 脳腫瘍 44歳
King Curtis  8月17日 刺殺   37歳
Luis Armstrong   7月 6日 心臓障害、肺病 71歳



海底軍事利用禁止条約調印
<アメリカ>
ロスアンジェルス大地震
ドル・ショックにより、国際通貨不安が高まる
<ヨーロッパ>
ドル安により西ドイツのマルクが高騰
ユーゴで集団指導体制発足
北アイルランド紛争激化
<アフリカ>
アスワン・ハイ・ダム完成
コンゴが国名をザイールに変更
国際司法裁判所が南アによるナミビア支配を非合法と裁定
<アジア>
中国、国連に加盟。台湾は脱退
インド・パキスタン戦争勃発
南ヴェトナム軍、ラオスに侵攻
韓国ソウルのホテル火災で163人死亡
<日本>
円為替が変動相場制に移行(1ドル=308円)
沖縄返還協定調印

<芸術、文化、商品関連>
「生きのびるためのデザイン」ヴィクター・パバネック著
「自由の国にて」V・S・ナイポール著(ブッカー賞受賞)
「サムラー氏の惑星」ソール・ベロウ著(全米図書賞)
「笑う警官」マイ・シューバル、ペール・ヴァールー著(エドガー賞)
映画「時計じかけのオレンジ」公開(スタンリー・キューブリック作品)
インテルがマイクロプロセッサ「4004」開発(パソコン開発に大きな影響を与える)
ボシュ&ロム社がソフト・コンタクト・レンズ開発
日清食品が「カップヌードル」発売


<音楽関連(海外)>
アメリカで、バングラディッシュ難民救済コンサート開催
ローリング・ストーンズ・レーベル設立
フィルモア・イースト閉鎖、「フィルモア最後の日」として映画化
作曲家ストラヴィンスキー、アメリカで死去
インドネシアで、オマ・イラマがダンドゥットを作り上げる
<音楽関連(国内)>
ジョン・メイオール、B・S&TシカゴGFRピンク・フロイドらが相次いで来日公演
日本で初のデジタル録音アルバム「打!ツトム・ヤマシタの世界」発売
日本テレビのタレント・スカウト番組「スター誕生」開始(1983年まで)
南沙織、天地真理など、アイドル・タレントのブームが始まる

<映画>
←この年の映画についてはここから!
フレンチ・コネクション The French Connection」(監)ウイリアム・フリードキン
アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞(ジーン・ハックマン)受賞)

[1971年という年] 橋本治著 「二十世紀」より(2004年11月追記)
 銀座の歩行者天国にマクドナルド1号店がオープンし、日清食品がカップヌードルを発売。
東京郊外の多摩丘陵に多摩ニュータウンができ、新宿には日本初の高層ホテル、京王プラザがオープン。1971年は、繁栄の時代を担う大衆の年、「大衆元年」とも言うべき年である。
「昭和30年代、休日の日本人はお洒落をしてデパートに行った。日本各地の盛り場の中心にはデパートがあった。1970年代に人の生活の中心はスーパーマーケットに移り、1980年代も後半になると、盛り場の中心に必須となるものは、「お洒落なシティー・ホテル」になる。・・・」

<作者のコメント>
 1970年に銀座に行った時、僕は当時大流行していたアメリカン・クラッカーを買って貰いました。小樽に帰って見せびらかそうと、大喜びで持ち帰ると、近所のデパートの店頭にはすでに特設コーナーが設けられ、アメリカン・クラッカーが大量に売られようとしていました。考えてみると、この頃すでに地域による情報格差はかなり小さくなっていたのかもしれません。(当時はまだ小樽という街は、新しもの好きが多い元気な街だったせいもあるかもしれませんが、・・・)

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