- ニューミュージック世代 -

荒井由実(松任谷由実)

この年の出来事 代表的な作品 デビュー 物故者
<先ずはカミング・アウトから>
 僕が初めて買ったLPは、恥ずかしながら小柳ルミ子の「雪明かりの町」でした。その後、尾崎紀世彦、吉田拓郎と続きましたが、カーペンターズ、ビートルズを聴き出して以降は、「けっ!日本の歌なんてくだらなくて聴いてられるかよ!」と、生意気な中学生になってしまいました。高校時代になると、時代はグラム・ロックの全盛期、ロキシーだ、ボウイだ、とすっかりロックマニアの仲間入りをしていました。そんなわけで、僕が再び日本の音楽を聴き出すようになったのは、大学に入ってからのことでした。それは、ちょうどRCサクセションムーンライダース山下達郎大滝詠一佐野元春など、J−ポップの基礎を築いたアーティストたちが活躍を始め、サザン・オールスターズという歌謡ロックの完成者が登場したころのことです。しかし、そんなJ−ポップのヒーローたちの中でも、荒井由実はちょっと違う存在でした。

<ユーミンの秘密-キャラメル・ママ>
 まず、曲作りのセンス、日本人離れしたバックの演奏のかっこ良さに驚かされました。この頃の曲は、実際今聴いても全然古くありません。シンプルな演奏でありながら、そこにはラテンやレゲエ、ファンクなど、おしゃれなサウンドのエッセンスが見事に生かされています。どうしてこんなにカッコ良かったのだろう?僕の疑問は後になって、やっと解けました。その秘密は、彼女のバックバンドにあったのです。それが、今や伝説のバンド「キャラメル・ママ」でした。細野晴臣、松任谷正隆、鈴木茂、林立夫の四人からなるこのバンドは、ユーミン以外にも、大貫妙子、吉田美奈子、矢野顕子らのバックも務めており、その仕事は演奏だけでなく、実質的にはプロデュースにまで及んでいたのです。彼らの、時代の先を行くセンスとチャレンジ精神があったからこそ、ユーミンの歌は未だに古さを感じさせないのです。

<ユーミンの秘密-小さな物語>
 彼女の歌の最大の魅力は、なんと言っても一曲、一曲に仕掛けられた素敵な詞にあります。それぞれが、最後まで聴きたくなる小さな物語になっていて、そこには「ユーミン」だけの世界が広がっていました。個人的、地域限定的な物語の数々は、けっして多くの人々が感情移入できるものではなかったはずですが、そこから広がる想像の世界は逆にどこまでも広かったのかもしれません。これは、イギリスの詩人、ウィリアム・ブレイクの有名な記述、「一握の砂から世界を見る」を思い出させてくれます。残念ながら、最近のユーミンの歌詞は、この頃のものに比べ、グローバルかつ宇宙的になった分、かえって聴く者に想像力の翼を与えてくれなくなったような気がします。横浜、横須賀を中心とする、あこがれの街のイメージこそ、ユーミンの世界そのものだったのですから。

<ユーミンの秘密-個人の時代>
 おりしも、時代はアメリカも、日本も「激動の時代」=「ロックの時代」から「個人の時代」=「シンガー・ソングライターの時代」へと移り変わろうとしている時でした。ジェイムス・テイラーキャロル・キング、ジャクソン・ブラウン、キャット・スティーブンス、ジム・クロウチ、ニルソン、ゴードン・ライトフット、アル・スチュアート、ブルース・コバーン、ランディ・ニューマンビリー・ジョエルトム・ウェイツジョニ・ミッチェル、カーリー・サイモン、エルトン・ジョン、それに黒人のダニー・ハサウェイフィービー・スノーなどの大物シンガー・ソングライターたちは、皆この時期から活躍を始めています。ユーミンは、まさにそんな時代の申し子だったのです。しかし、ユーミンが全国的なスターへと階段を駆け上がったのは、この時代ではありませんでした。それから遅れること10年近く後、1980年代に入ってからのことだったのです。

<ユーミンの秘密-バブルの時代>
 その頃、日本の若者たちは、ようやくかつて夢みた「ユーミンの世界」の主人公になる機会をえようとしていたのです。湘南の海や横浜の山の手にある小さなレストラン、雪の中のスキー場のロッジが手の届く存在になろうとしていたのです。そう、日本中がいよいよ「バブルの時代」を迎えようとしていた頃なのです。時代が、ユーミンの世界に追いつこうとしていたと言えるでしょう。ユーミンは、彼女の分身「松田聖子」らとともに、一気に時代のアイドルとなりました。

<僕の秘密-青春時代>
 その頃一応神奈川県民だった僕は、湘南台に住む女の子に誘われて、ブームになる直前のスキューバ・ダイビングを始め、その魅力にとりつかれようとしていました。今考えると、僕はまさにユーミン世代のど真ん中に位置していたかもしれません。その後、ダイビングの仲間だった我が愛妻と出会い、その彼女もユーミンの大ファンでした。そんなわけで、僕の青春時代の明るい思い出は、しっかりとユーミンの歌とつながっているのです。(逆に暗い思い出は、その頃はまっていた本場アメリカのブルースとしっかりと結びついている)

<ユーミンの原点-ひこうき雲>
 70年代、80年代とユーミンは、まさに時代そのものと言える存在でした。そして、その原点がこのデビュー・アルバムであり、そこには、彼女のサウンドが今のように分厚い化粧を塗る前のピュアな素顔があります。その輝きは、時がたってもけっして衰えることがないでしょう。おかげで、このアルバムを聴く度に、僕はあの静かで優しい1970年代へとタイム・トラベルできるというわけなのです。

関連するページ
松任谷由美
60年代から21世紀へ
風都市
(ティンパンアレー、はっぴいえんどなど)
ニューミュージックの時代
(はっぴいえんど、ユーミンなど)

     アンダーラインの作品は特にお薦め!

ロック、ポップ系
アメリカン・バンドGrand Funk Railroad
(この頃、彼らはまさに「アメリカン・バンド」でした)
"Beck,Bogert & Appice" Beck,Bogert & Appice
"Brother And Sisters" The Allman Brothers Band
(長尺インスト・ナンバー「ジェシカ」は何度聴いても飽きません)
"Berlin" Lou Reed(ベルリンほど、題材として魅力的な都市はないかも?)
"Blue River" Eric Anderson
"Captain And Me" The Doobie Brothers
(前期の最高傑作、個人的にはこれがベスト!)
"Desperado" Eagles (タイトル曲をイーグルスのベストと言う人も多い)
"Dixie Chicken" Little Feat(やはりこれが最高傑作でしょう!)
"Don't Shoot Me I'm Only The Piano Player" Elton John
"For Your Pleasure" Roxy Music
"Goodbye Yellow Brick Road" Elton John (才能爆発の時期でした)
"GP" Gram Persons(カントリー・ロックの悲劇の天才)
グリーヴァス・エンジェル Grievous Angel」 Gram Parsons
聖なる館Led Zeppelin
"The Joker" Steve Miller Band
ヘンリー8世の六人の妻Rick Wakeman
海洋地形学の物語」 "Yes Songs" Yes
(プログレ・ブーム、いよいよピークへ。イエスの絶頂期)
狂気Pink Floyd (プログレのジャンルの枠を越えた歴史的ヒット作品)
"Life And Times" Jim Croce
"Mind Games" John Lennon , "Moondog Matinee" The Band
"No Secret" Carly Simon(「うつろな愛」が大ヒット)
"Now And Then" The Carpenters (最高傑作であり、大ヒット作)
"Piano Man" Billy Joel(この作品から彼の時代が始まった)
"Please Don't Ever Change" Brinsley Schwarz
(今や伝説のパブロック・バンド)
Quadrophenia 四重人格The Who
"Red Rose Speedway" Paul McCartney & The Wings
"Row Power" Iggy Pop(復活アルバムだったが、この後再び活動休止に)
"Rock'n Roll Gypsies" Vinegar Joe(ロバート・パーマーがいました)
"Ringo" Ringo Starr(「想いでのフォトグラフ」などヒット曲揃い!)
"Todd","A Wizard,A True Star" Todd Rundgren
幸せの黄色いリボン」 Dawn (もちろんあの映画の元です)
太陽と戦慄King Crimson

ソウル系
"Fresh" Sly & The Family Stone (スライの語られざる傑作?)
"Innervisions" Stevie Wonder(スティービー絶頂期三部作の二作目)
"Let's Get It On" Marvin Gaye
(前作とこの作品で独自のスタイル、「スローなファンク」を確立)
"Living High Off the Goodness of Your Love "Barino Brothers
"Touch Me In The Morning" Dianna Ross
"Tower Of Power" Tower Of Power
"Wild And Peaceful" "Jungle Boogie" Kool And The Gang
(文句なし最高傑作、ファンク史に残る名作)

やさしく歌って Killing Me Softly With His Song」 Roberta Flack
 ロリ・リーバーマンという白人女性フォークシンガーのカバー。ある日、その女性がまだ無名だったドン・マクリーンのライブで「Empty Chairs」という曲を聴いていて、自分のすべてが歌われていると感じたところから誕生した詩がもとになっています。「歌で殺される」そう思ったという心境が元になっているわけです。しかし、アレンジしたのはロバータ・フラック。彼女はジャマイカでのライブを終えて帰国後にこの曲を録音しています。それがこの曲に独自のバック・ビートをもたらしたのかもしれません!さらに彼女はクラシック・ピアノを学び、ピアノの教師もしていました。その音楽的知識が、名曲の名アレンジを生んだのでしょう。
 ビルボード連続4週ナンバー1の大ヒットで、日本ではネスカフェのCMで誰もが忘れられない曲となりました。

サルサ系
"Live At Yankee Stadium" Fania All Stars
ジャズ系
"Solitude On Guitar" Barden Powell
"Supersax Plays Bird" Supersax
"Crystal Silence" Gary Burton & Chick Corea
"Headhunter" Herbie Hancock
アフリカン・ポップ系
"Soul Makossa" Manu Dibango (カメルーンのアーティスト、仏米で大ヒット)
ユーロ・ポップ系
さよならを教えてFrancoise Hardy (フレンチ・ポップスを代表する世界的ヒット)
J-ポップ系
神田川」 かぐや姫
君はファンキー・モンキー・ベイビーキャロル
氷の世界」 井上陽水
心の旅」 チューリップ
個人授業」 フィンガー5  
センチメンタル通りはちみつぱい
にんじん」友部正人
悲惨な戦いなぎらけんいち(2000年に現実となった大相撲の珍事件)
Make Up 」フラワー・トラベリン・バンド
夜空」五木ひろし(レコード大賞)




ロック・ポップ系
Aerosmith "野獣生誕Aerosmith"
Bruce Springsteen 「アズベリー・パークからの挨拶」
Bette Midler "Bette Midler Debut"
Cockney Revel 「美しき野獣の群れ」
Lynyrd Skynyrd "Lynyrd Skynyrd"(悲劇のサザンロック・バンド)
Mike Oldfield "Tubular Bells"
(映画「エクソシスト」が良いのは音楽だけでありません!)
New York Dolls "New York Dolls"(元祖パンクとも呼ばれる)
Queen 「戦慄の女王」
Suzi Quatro "Suzi Quatro"
Tom Waits "Closing Time"
10CC "10CC"
アイリッシュ、ケルト系
Donal Lunny ( Planxty ) "Planxty"
ユーロ・ポップ系
ハリス・アレクシーウ With ヨールゴス・ダラーラス「小アジア」
ソウル、ファンク系
The Average White Band "Show Your Hand"

Third World "Aiye-Keta"
(ボブ・マーリーとともにレゲエ・ブームの牽引車となったバンド)
J−ポップ系
泉谷しげる「泉谷しげる登場」
オフ・コース「僕の贈り物」(再デビュー)
キャロル 「ルイジアンナ」
サディスティック・ミカ・バンド「サディスティック・ミカ・バンド」
はちみつぱい「センチメンタル通り」
細野晴臣「Hosono House」
南佳孝「摩天楼のヒロイン」
村八分「村八分」
山口百恵「としごろ」
吉田美奈子「扉の冬」


Bobby Darin 12月20日 心臓障害 37歳
Clarence White (The Byrds)  7月15日 交通事故 29歳
Gram Parsons  9月19日 薬物中毒 26歳
Jim Croce  9月20日 飛行機事故 30歳
Ron McKernan (Grateful Dead)  3月 8日 肝硬変 26歳
Memphis Minnie (女性Blues Singer)  8月 6日 病死 77歳
Paul Williams ( The Temptations)  8月17日 自殺  34歳
Victor Jara (チリのプロテスト歌手)  9月 ?日 軍による虐殺 35歳
Murry WilsonBrian Wilsonらの父親)  6月 4日 心不全 55歳




国際通貨危機
<アメリカ>
ウォーター・ゲイト事件の波紋全米へ拡がる
キッシンジャー国務長官就任
ヴェトナム和平協定調印(アメリカ軍の撤退完了)
<中南米>
チリで軍事クーデター、アジェンデ政権倒れる
<ヨーロッパ>
東西ドイツが同時に国連加盟
パブロ・ピカソ死去
<中東、アフリカ>
第四次中東戦争の勃発により、石油危機
<アジア>
金大中事件発生、韓国国内で学生運動激化
<日本>
円為替変動相場制に移行
オイル・ショックで石油買い占め騒動
日本で、金大中氏誘拐事件発生

<芸術、文化、商品関連>
「モモ」ミヒャエル・エンデ著(独)
「セポイの反乱」ジェムズ・G・ファレル著(ブッカー賞受賞)
「キマイラ」ジョン・バース著(全米図書賞)
「リンガラ・コード」ウォーレン・キーファー著(エドガー賞)
イッセイ・ミヤケがパリ・コレクションにデビュー
映画「コフィー」主演のパム・グリアの影響でアフロ・ヘアーなど独特のファッションが人気になる
ビックの「使い捨てライター」登場(フランス)
テレビ・アニメ「ドラエモン」放送開始


<音楽関連(海外)>
「ソウル・トレイン」全米ネットで放映開始
タイの民主化運動をリードするバンド、カワランがスラチャイ・チャンティマートーンらによって結成される
<音楽関連(国内)>
四畳半フォーク・ブーム
チューリップの「心の旅」がナンバー1になる。(フォークでもロックでもないポップ・バンド初のナンバー1は、「ニューミュージック」時代を到来を告げるもので、この後オフ・コース、アリスなどが後を追って活躍することになります)

<映画>
ここからどうぞ!
「アメリカン・グラフィティ American Graffiti 」 1973年
(監)ジョージ・ルーカス George Lucas
アメリカの夜 映画に愛をこめて」(監)フランソワ・トリュフォー
ビリー・ザ・キッド 21才の生涯」(監)サム・ペキンパー

<1973年という年> 橋本治著「二十世紀」より(2004年11月追記)
 1973年はオイルショックの年である。
「10月6日エジプトとシリアの軍隊はイスラエルに対する攻撃を開始した。第四次中東戦争の勃発である。1967年の第三次中東戦争で負けたアラブ側は、自分たちが輸出する石油を武器として、イスラエルを支援する国の首を締め上げてやろうという作戦に出た。・・・」
「オイルショックは、やがて収まった。アラブの産油国はより金持ちになり、日本の石油関係者もちゃんと儲けて、世界の石油消費国のネオンもまた元のように輝いたが「省エネ省資源」という発想は消えなかった。輸入国は微妙に石油からの距離を置き、やがて石油の価格はジリジリと下がり始める。石油で儲けたアラブの産油国にも貧富の差が生まれ、1991年には産油国のイラクが同じ産油国のクウェートを襲う事態になり、湾岸戦争が勃発する。つまり、『オイルショックとは何だったのか?』ということの答えには、『戦争を口実に使った産油国側の値上げ戦略もあった』ということである」
「オイルショックがあって、それで日本がどうなったかは分からない。その二年前、ドルショックで円を切り上げ、オイルショックの八ヶ月前、1973年の2月には、円が変動相場制に移行した。しかし、円は強かった。いかなる「国際情勢」とも無関係に、日本は世界最強の経済大国になった。日本は自力で勝ったのである。日本はあらかじめ、それを知っておくべきだった。そうすれば、日本は国際社会の『強い紳士』になれただろう」
「知って勝てば紳士だが、知らないで勝つのは成り上がり者・・・国際社会とは、どうもそういうルールでできあがっているらしい。しかし、日本は、そのことだけを知らない。それで日本は、いつもオドオドしているのだ」

<作者からのコメント>
 「知らないで勝つのは成り上がり者」という言葉は、日本の平和憲法のことを思い出させます。素晴らしい内容の憲法でありながら、アメリカによって押しつけられたことへのこだわりから、未だに自分たちのものと胸を張って言えないもどかしさ。世界を平和に導くことができるのは我が国の憲法だけだと力強く言いきれる日はいつか来るのでしょうか?それとも、その前に憲法自体が変えられてしまう運命にあるのでしょうか?それは21世紀を生きる人々の選択にかかっています。

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