- パンクの青白き炎 -

パティ・スミス Patti Smith

この年の出来事 代表的な作品 デビュー 物故者
<パンクという存在>
 この時代、1975年から1980年に一世を風靡した「パンク・ロック」をどう聴いたかで、ロック・ファンは大きく分けられるでしょう。60年代からロックを聴いてきたファンの多くにとって、「パンク」は頭の悪いガキどもの馬鹿騒ぎとしか思えなかったかもしれません。しかし、この時代に青春時代を迎えたロック・ファンにとって、「パンク」は真のロックであり、それ以前から同じ曲を演奏し続けているロートル・アーティストたちこそ「ロックの墓石」的存在でした。また、90年代に青春時代を迎えたさらに若い層にとってパンクとは、「ロックの時代」と「ニューウェーブの時代」をつなぐ「混沌の時代」の音楽であり、かつての「グラム・ロック」のような「時代のあだ花」的存在であったと思えるかもしれません。

<ロンドン・パンクの仕掛け人>
 すでに、「パンク」は純粋に音楽として評価されるより、歴史的、文化的価値を評価される時代になってしまったのかもしれないようです。そのうえ、パンク・ムーブメントの仕掛け人マルコム・マクラーレンのおかげで「パンク」は音楽としてより、パフォーマンスとして評価されるようになってしまったのかもしれません。もちろん、それも間違いではないでしょう。「パンク」とは、既成概念を否定することから生まれた「ロック」という文化ですら、いつしかその否定されるべき既成概念になってしまうという事実を表現するために生まれたパフォーマンスと言うこともできるのですから。(セックス・ピストルズのジョン・ライドンが90年代にバンドを再結成して見せたのも、自ら「パンク」を否定してみせる偉大な?パフォーマンスだった見ることもできるでしょうから)
(注)ロンドン・パンクについては、セックス・ピストルズのページをご覧下さい!

<元祖パンクについての誤解>
 パンクには、もう一つ誤解されている事があります。それは、パンク・ロック=ロンドン・パンクという図式が常識になっていることです。パンクが、ロンドンのあのツンツン頭と安全ピンの若者たちによって生み出された、というのは大きな誤解なのです。確かに、パンクを時代の先を行くファッション=パフォーマンスとして、巨大なムーブメントにしたのは、マルコム・マクラーレン率いるロンドンの若者たちでしたが、音楽としての「パンク・ロック」を生み出したのは、実際はニューヨークに住むアート系の若者たちでした。テレヴィジョントーキング・ヘッズはなどは、まさにその代表格でと言えるでしょう。そして、その中でも21世紀を迎えようとする今、相変わらずパンク本来のパワーを持続し、走り続けているパティ・スミスこそ、「パンクの女王」と呼ぶにふさわしい、ただ一人時代を突き破ったパンク・ロッカーと言えるでしょう。

<青白き女王=パティ・スミス>
 彼女はもともとは、ミュージシャンではなく詩人でした。しかし、ロック・バンドの演奏をバックに詩の朗読をしているうちに、いつしかバック・バンドを持つようになり、詩にメロディーがつくようになっていったのです。そして、ついにこのアルバムによって、ロック・ヴォーカリストとして衝撃のデビューを飾ったのです。(日本の「叫ぶ詩人の会」も同じようにして生まれたようです)
 残念ながら、パンクの時代に生まれた作品の多くは、時代の象徴としての価値は高くても、時代の壁を越えるだけのクオリティーを持ったものは数が少なかったと言えるでしょう。ロンドン・パンクではクラッシュ、ニューヨークでは、上記のバンド以外では、ジョーイ・ディビジョンあたりは、時代を越えて活躍を続けましたが、その多くは時代の流れとともに消えて行きました。しかし、パティ・スミスは完全に「時代性」を越えた存在でした。だからこそ、彼女はこのデビュー・アルバムの後、結婚や出産などにより、少しづつ変化をしつつも、パンク・ロッカーとしてのスタンスを変えることなく、未だにそのクオリティーを保ち続けているのです。多くのバンドが花火のように散っていった中で、ひとり彼女だけは青く輝くクールな炎を燃やし続けているのです。その意味では、彼女のサウンドに、「パンク・ロック」というくくりを押しつけるのは間違っているのかもしれません。それは、本当の意味で「ロックの原点」であり、「プレ・ロック」とでも呼ぶべきものなのです。

<追記-パティ・スミスへの謝辞>
 もし、彼女がこの文章を読んだら、「くだらないジャンル分けなんて、クソ食らえ!」と叫ぶかもしれません。でも、そう言われたら僕はこう言い返したい。「こうやって40過ぎてもまだロックを聴いているのは、それだけあなたに感動を与えられたからですよ。継続は力なり。そして、ピープル・ハブ・ザ・パワーと歌い続けているあなたに感謝します」と。

関連するページ
パティ・スミス セックス・ピストルズ
(ブリティッシュ・パンク)
クラッシュ ポリス
(ニューウェーブ)

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ロック系
明日なき暴走 Bruce Springsteen (ロック史に残る永遠の名作)
"Atlantic Crossing" Rod Stewart(ソロとしていよいよ大スターへ)
"Blow By Blow" Jeff Beck (これぞジェフ・ベック・サウンド!)
"Bongo Fury"Captain Beefheart & Frank Zappa & Mothers
"Captain Fantastic And The Brown Dirt Cowboy" Elton John
(個人的には、このアルバムが一番好きです)
欲望 Desire」 Bob Dylan (映画化された「ハリケーン」収録の名作)
17歳の頃」 Janis Ian(ほろ苦い青春の歌、ああ懐かしい)
哀しみのマンディ」 Barry Manilow (最後のポップ・エンターテイナー?)
"The Last Record Album" Little Feat(別に最後のアルバムではない)
呪われた夜Eagles (タイトル曲の大ヒットでいよいよ大スターへ)
"Original Soundtrack" 10CC(美しく、ドラマチックな文句なしの傑作!)
オペラ座の夜Queen (これぞクイーン’s・オペラ・サウンド)
"Phigical Graffiti" Led Zeppelin
(これぞヘビー・ロック、本物です、未だに古くない!)
"Prisoner In Disguise" Linda Ronstadt
ロックン・ロールJohn Lennon (セピア色のアルバム)
南十字星The Band
(カナダのバンドらしさ、美しさが光る、個人的には最も好きな作品)
"Siren" Roxy Music (ロキシーのもっともヒットした作品)
"Struttin' My Stuff" Elvin Bishop(かっこいい!ギター・サウンド)
"Takin' It To The Street" The Doobie Brothers
(ドゥービー新時代へ突入、昔の方が僕は好きですが)
"Tommy ( Original Soundtrack)" V.A. (豪華なメンバーでした)
"Where We All Belong" Marshall Tucker Band
(カントリー・ロックの最高峰、これぞアメリカの音楽)
ビーナス&マースWings
闇夜のヘビーロック Aerosmith(いよいよブレイク!)
ソウル系
"Adventures in Paradise" Minnie Riperton
"Ain't No 'Bout-A-Doubt It" Graham Central Station
(元祖チョッパー・ベース、ラリー・グラハムのファンク・バンド)
"Car Wash" Rose Royce(サウンドトラック)
"Chocolate City" "Mothership Connection" Parliament
(いよいよパーラメント、P−ファンク時代が到来!)
"Do It 'Til You're Satisfied" B.T.Express
"Fight The Power Part1&2" The Isley Brothers
(「権力と闘え!」ガッツのあるタイトルに感動)
"Fire On The Bayou" The Meters
(ニューオーリンズ・ファンクもいよいよ活動開始!)
"Honey" "Fire" Ohio Players (中西部ファンクの歴史をつくった先達)
"The Hutsle" Van McCoyディスコでブレイクしたバンプの大ヒット作)
"Love To Love You Baby" Donna Summer
"Southern Night" Allen Toussaint
(ニューオーリンズ・ファンクの仕掛け人の代表作)
"That's The Way I Like It" KC&The Sunshine Band
"That's The Way Of The World" Earth, Wind & Fire

ライヴBob Marley(伝説の熱狂レゲエ伝道集会)
サルサ系
"Este es Ismael Miranda" Ismael Miranda
"La Voz" Hector Lavoe (NYサルサを代表する悲しき歌声)
"New York City" Tabou Combo(ハイチのコンパ・バンドがフランスで大ヒット)
ブラジリアン・ポップ(MPB)系
"Minas" Milton Nascimento
(MPB時代の幕開けを告げた美しい作品)
"Antrogia do Samba Cansao Vol.1" Quarteto Em Cy
(サンバ・カンソンの美しい世界に驚き!)
ブラジリアン・ホット・デュオ」 Gilberto Gil & Jorge Ben
(アフロ・ブラジル系を代表する二人のぶつかり合い)
ジャズ系
"The Kern Concert" Keith Jarett
(コンサートは眠かった、でも美しかった。紙一重か?)
"Saturday Morning" Sonny Criss
アジアン・ポップ系
ブガダーン(夜更かし)」 Oma Irama (ダンドゥットの王様の大ヒット曲)
J-ポップ系
I Love You OK矢沢永吉(永チャン初のソロ・アルバム)
あの日に帰りたい」 「ルージュの伝言荒井由実
いちご白書をもう一度」ばんばん
有頂天」サンハウス
君に捧げるほろ苦いブルース」荒木一郎
グッバイ・キャロルキャロル
シクラメンのかほり」布施明(作詞、作曲小椋佳、レコード大賞)
スモーキン・ブギ」ダウンタウン・ブギウギ・バンド
ティンパンアレーキャラメルママ
トロピカル・ダンディー細野晴臣(ニューオーリンズから南の島へ)
年下の男の子」キャンディーズ
日本少年あがた森魚
バンド・ワゴン 鈴木茂(まさにL.フィート・サウンド!)
ブルース・パワー」ウエストロード・ブルース・バンド
ほうろう」 小坂忠(限りなくソウルに近い世界を見事に構築)
港のヨーコ、ヨコハマ・ヨコスカ」ダウンタウン・ブギウギ・バンド
ロマンス」岩崎宏美
我が良き友よ」かまやつひろし




ロック系
The Alan Parsons Project 「怪奇と幻想の世界」 ,
Bay City Rollers "Bay City Rollers"
Hirth Martinez "Hirth From Earth"
The Heart "Dreamboat Annie"
Pablo Cruise "Rock'n Roller"
Tubes "The Tubes First"
ソウル、ジャズ系
All Jarreau "We Got By" (ワン&オンリーのヴォーカル)
Manhattan Transfer "Debut! Manhattan Transfer"(素敵なジャズ・ポップコーラス)
J−ポップ系
カルメン・マキ&OZ「カルメン・マキ&OZ」
サン・ハウス 「有頂天」
シュガー・ベイブ 「SONGS」
センチメンタル・シティー・ロマンス「センチメンタル・シティー・ロマンス」
友川かずき「やっと一枚目」
中島みゆき「アザミ嬢のララバイ」
森田童子「さよならぼくのともだち」
山崎ハコ「飛びます」
憂歌団「憂歌団」


 Tim Buckley   6月29日  薬物中毒 28歳 
 Pete Ham(Badfinger)  4月24日 自殺 27歳
 T-Bone Walker   3月16日 肺炎 64歳
 Al Jackson(Booker T& MG's) 10月 1日 射殺 39歳
 Luis Jordan   2月 5日 心臓麻痺  66歳
 Cannonball Adderley  8月 8日 脳卒中 46歳




国際婦人年世界会議
先進6カ国首脳ランブイエ会議(日、米、英、仏、西独、伊)第一回サミット
<アメリカ>
米ソ宇宙船のドッキング成功
サイゴン陥落、ヴェトナム戦争が終結
<ヨーロッパ>
ソ連の作曲家ショスタコービッチ死去
サハロフ氏にノーベル平和賞、ソ連が授賞式への出国許可せず
<アフリカ>
モザンビーク、アンゴラが独立
エチオピアの元皇帝ハイエセラシエ死去
ナイジェリアでクーデター
<アジア>
中国新憲法発表(党主導による国家体制確立)
ラオス人民民主共和国が成立
<日本>
沖縄海洋博覧会開催

<芸術、文化、商品関連>
「最後の一球」マイケル・シャーラ著(ピューリツァー賞受賞)
「これからの一生」エミール・アジャール著(仏ゴンクール賞受賞)
アレックス・ヘイリーの「ルーツ」がベストセラーとなる
「法王の身代金」ジョン・クリアリー著(エドガー賞)
コム・デ・ギャルソンが東京コレクション・デビュー
ヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラーレンがブティック「セックス」をオープンさせる
第一回ミラノ・コレクション


<音楽関連(海外)>
ボブ・ディランのローリング・サンダー・レビューが行われる
ベイシティ・ローラーズ、英国で人気爆発
ロン・ウッドがローリング・ストーンズの新ギタリストとなる
ロッド・スチュアートが、フェイセスから独立しソロとなる。
<音楽関連(国内)>
サディスティック・ミカ・バンドがイギリス・ツアーで大人気、彼ら以外にもミッキー・カーチスのザ・サムライ、村八分、フラワートラベリンバンド、クリエイション、YMOなど、海外に活躍の場を求めるロック・バンドが多かった。それだけロックは喰えない音楽だったということでしょう。
アーテイストによる初のレコード会社フォーライフ・レコード(小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる)
大滝詠一はナイアガラ・レーベル設立
キャロルが解散し、矢沢永吉がソロ・デビュー
吉田拓郎、かぐや姫、つま恋でのライブに6万人の観客を集める 
西城秀樹、野口五郎、郷ひろみ、御三家の黄金時代

<映画>
この年の映画についてはここから!

[1975年という年] 橋本治著 「二十世紀」より 2004年11月追記
「昭和50年の日本は『不景気』ということになっているが、実は戦後稀にみる『なにもない年』なのである。この年の日本は、『紅茶キノコのブーム』でしかない。・・・」
「1975年の前後は、世界各地で独裁政権が消えて行く時代でもある。・・・ポルトガル、ギリシャ、エチオピア、スペイン、そして1976年には毛沢東が死に、アルゼンチンでも政変が起こる。王政から軍政というパターンもあれば、軍政から王政というパターンもある。しかし、共通していることは、『第二次世界大戦の時代から続いていた権力者の時代が終わる』ということである。・・・」

<作者からのコメント>
 革命ではなく旧体制の中心人物が老いて消えて行くことで生まれた自然発生的な体制の革新。考えてみると、これほど平和的かつ確実な時代の変化はないでしょう。しかし、現実にはそう上手く行くことは少なく、多くの場合それまでの旧体制の崩壊によって新たな火種が誕生、再び新たな問題が噴出しています。(ユーゴやアフリカでの民族紛争は、その典型的な例と言えます)              

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