- ロック・フロンティアの終焉 -

イーグルス Eagles

この年の出来事 代表的な作品 デビュー 物故者
<初めて聴いた夜>
 初めてこのアルバムのタイトル曲を聴いたときのことは、今でもかなり鮮明に覚えています。それは毎週日曜日深夜12時オン・エアのラジオ番組の中でした。番組名は思い出せないのですが、その番組では横山さんという真面目で、感じの良いDJが、毎回アメリカン・ロックを中心に、新作をいち早くかけてくれていて、僕のお気に入りでした。
 「イーグルスの新作が来ました。もちろん、ラジオ初登場。かなり長い曲ですけど、あえて、最後までかけます。すごい曲です」と、いつもの静かな口調で、この曲を紹介すると、あの有名なイントロが始まりました。延々と続く静かなギター・ソロは、今でこそ聞き飽きてしまった感もありますが、あの夜は初めてということもあって、実に新鮮でした。そしてこの曲は、もしかしてインストロメンタルなのか?と思い始めた頃になって、やっと登場したドン・ヘンリーのヴォーカルを聴いた瞬間、背筋がゾクッときてしまいました。
 「こりゃ、間違いなく名曲だよ」一緒に聴いていた弟に僕は思わずつぶやいた。

<「ホテル・カリフォルニア」という作品の位置>
 「ホテル・カリフォルニア」という曲は、70年代に一世を風靡したウェストコースト・ロックの黄昏を告げただけでなく、50年代から続いていた「ロックの時代」そのものの終わりを告げた曲と言われています。拡大を続けたロック文化のフロンティアがついに、アメリカの西の端で終わりを迎えたわけです。その歌詞には、ロック文化の到達した退廃的な世界が美しく、皮肉に描かれています。しかし、別の見方をすると、この時期はロックがカウンター・カルチャーの枠を越え、大衆文化へと進化をとげた時期でもありました。そして、その結果としてこの時期に、かつてない売上を記録するモンスター・アルバムが次々に登場しました。

<1976年という年>
 フリートウッド・マック「ファンタスティック・マック」スティーブ・ミラー・バンド「鷲の爪」、ボズ・スキャッグス「シルク・ディグリーズ」、ピーター・フランプトン「フランプトン・カムズ・アライブ」、ジェファーソン・エア・プレイン「レッド・オクトパス」など。ロックは完全にアルバム・セールスの時代に突入し、桁違いの売上が期待できる巨大産業へと進化をとげました。(営業ロック・産業ロックとまで言われたハードロックバンド、フォリナーが登場したのも、この時期でした。彼らはヒット商品としてのロック・アルバムをつくる職人の先駆けだったと言えるでしょう)
 しかし、この頃時を同じくして、世界最高のロックバンドと呼ばれたザ・バンドが解散し、逆に80年代のパンク・ムーブメントをリードすることになるアーティストたちが次々にデビューしていました。(テレヴィジョン、セックス・ピストルズエルビス・コステロトーキング・ヘッズラモーンズクラッシュ、ストラングラーズなど)時代は確かに変わりつつありました。すでに、ロックの黄金時代は終わりを迎えようとしていたのです。
 あらゆる文化、社会の歴史において、必ず訪れる「黄昏時」。 「ホテル・カリフォルニア」は、ロック文化の歴史における「黄昏時のテーマソング」となるよう運命づけられていたかのように、あの年あの夜、静かにラジオから流れ出してきました。だからこそ、受験勉強に明け暮れ、世の中のことなどまだ何も知らなかった僕でさえ、あの夜あの時ラジオの前に釘付けになってしまったのです。
 「さらば!懐かしきロックよ!、着たれ!新しき音楽よ!」

<追記-イーグルスに個人的感謝を!>
 この曲「ホテル・カリフォルニア」は、僕が生まれて初めて、自分で日本語訳をした曲であり、、初めて歌詞を全部暗記した英語の曲でもありました。この曲とチャーリー・ブラウン&スヌーピーの「ピーナッツ・ブックス」によって、僕の英語学習が始まった、とも言えそうです。おかげで、僕はなんとか一人で海外旅行ができる程度には英語が話せるようになったし、おかげで世界の見方を大きく変えてくれました。ロックは世界を変えることはできなかったかもしれないが、少なくとも、僕の人生には大きな貢献をしてくれた。感謝します。

関連するページ
イーグルス

     アンダーラインの作品は特にお薦め!

ロック系
"All By Myself" Eric Carmen (ラズベリーズからソロへ、大ヒット曲)
"Blow Your Face Out(狼から一撃)" J.Geils Band
(この頃、J. Geils Bandは世界最高のライブバンドだった!)
化けもの」 David Lindley (スティール・ギターの名手、粋なアルバム!)
"Certified Live" Dave Mason(ギターが歌う、素敵なライブ)
"Chicken Skin Music" Ry Cooder (ライの最高傑作かもしれない)
地獄の軍団」 Kiss(「大衆芸能」としてのロック時代の到来)
"Frampton Comes Alive" Peter Frampton (とにかくはやりました!)
"Hard Rain" Bob Dylan(映画「ハリケーン」を救うためのライブ)
"How Dare You" 10CC (前作も傑作だがこれだって負けていません)
炎の叫び」 Bob Seger& The Silver Bullet Band(苦労人ボブいよいよ人気爆発)
放射能Kraftwerk (元祖テクノいよいよ黄金時代へ)
"Little Queen" Heart (正統派レディース系ロックバンド)
"Midnight Blue" Melissa Manchester(人気ソングライターの大ヒット曲)
"Night On The Town" Rod Stewart("Tonight The Night"が大ヒット)
"One More From The Road" Lynyrd Skynyrd (彼らの冥福を祈ります)
"Presence" Led Zeppelin
"Pretender"Jackson Browne
"Rocks" Aerosmith
"Red Octopus" Jefferson Starship (メガ・ヒット・アルバムの先駆けだった?)
"Radio Ethiopia" Patti Smith(よりハードな音づくりへ)
"Silk Degrees" Boz Scaggs (AORブームの先駆となった大ヒット作)
"Steel Your Face" Grateful Dead (盛り上がるばかりがライブじゃない!)
"Station To Station" David Bowie
"Turnstiles" Billy Joel
"Walking And Dreaming" Orleans
(ジョン・ホールのギターの音色は絶品です)
鷲の爪」 Steve Miller Band (全曲シングルになりそう、隙なし!)
"Year Of The Cat" Al Stewart(ほんわか不思議な大ヒット作)
ソウル、ファンク系
"Feels So Good" Grover Washington Jr.
"Gold" Ohio Players (金箔美女ジャケがファンキーなベスト・アルバム)
"Gratitude" Earth, Wind & Fire
(ライブ・パートのパワーはまさにアフリカ系!マイ・ベスト・アース)
"It's Your World" Gil Scott-Heron
(孤高のジャズ・ファンク詩人、代表作のひとつ、ライブ&スタジオ録音)
"Love To Love You Baby" Donna Summer
(18分のロング・ヴァージョンがヨーロッパのディスコを中心に大ヒット)
"Person To Person" Average White Band
(イギリス出身白いファンク・バンドの大健闘アルバム)
"Songs In The Key Of Life" Stevie Wonder
"Spirit" Earth,Wind & Fire
"The Wild Tchoupitoulas"The Wild Tchoupitoulas
(ニューオーリンズならではの融合ファンク)

"Super Ape" Lee Perry (レゲエ界の怪人、その代表作)
解禁せよPeter Tosh(今は亡き、ピーターの代表作)
サルサ系
"Cheo" Cheo Feliciano
"De Ti Depende" Hector Lavoe(美しき悲劇のヴォーカリスト、名盤です)
"Puerto Rico All Stars" Puerto Rico All Stars
(NYサルサの影響でプエルト・リコ・パワーも爆発)
"Salsa At Woodstock" Bobby Rodriguez
"Smokin'" Las Siete Potencias(ジャズ系サルサの逸品)
ブラジリアン・ポップ(MPB)系
"Africa Brasil" Jorge Ben
(アフロ・ブラジル系の代表的アーティスト、70年代MPBの代表作)
"Meus Caros Amigos" Chico Buarque
(サントラ盤としてヒットした曲を集めたアルバム)
"Antologia do Samba CancaoVol.2" Quarteto Em Cy
アフリカン・ポップ系
"20 Anniversary 思いでの70年代" Franco et le T.P.O.K.Jazz
"Aragbon Close/Kalakuta Show" Fela Kuti
(アフリカン・パワーの腰の強さに、恐れ入りました)
ジャズ、フュージョン系
輝き」 Al Jarreau(アル・ジャロウの歴史的名盤)
"Breezin'" George Benson (フュージョン・ブームを代表する傑作)
"Stuff" Stuff(スタジオ・ミュージシャンの時代を代表する名作)
"I'm Old Fashioned" 渡辺貞夫
(フュージョン系がポップチャートをにぎわした年でした)
J−ポップ、歌謡曲系
あばよ」研ナオコ
SOS」 ピンク・レディ
思い出ぼろぼろ」内藤やす子
およげ!たい焼きくん」 子門正人
北の宿から」 都はるみ(レコード大賞)
昭和枯れすすき」さくらと一郎
ときどきわたしは・・・」石川セリ
ナイアガラ・トライアングルVol.1大滝詠一山下達郎、伊藤銀次
春一番」キャンディーズ
釜山港へ帰れ」 チョー・ヨンピル
泰安洋行細野晴臣
木綿のハンカチーフ」太田裕美
横須賀ストーリー山口百恵
惑星」 富田勲(シンセサイザーの第一人者、アメリカでブレイク)




ロック系
AC/DC "High Voltage"
Boston 幻想飛行」(伝説のバンド、ボストン。伝説は21世紀まで続く)
Chris Rea "Fool"
Firefall "Firefall Debut"
Graham Parker "Howlin' Wind"
Heart "Dreamboat Annie"
John Cougar
"Chestnut Street Incident"
Little River Band "Little River Band"
Michael Franks "Art Of Tea"
Ramones "Ramones"
Rainbow "Rainbow Rising"
Stephen Bishop
"Careless"
Sex Pistols 「アナーキー・イン・ザ・UK」 (ご存じ元祖ロンドン・パンク)
Tom Petty & The Heartbreakers "American Girl"
ソウル系
August Darnell "Dr.Buzzard's Original Savannah Band"
Brothers Johnson "Look Out For No.1"
Randy Crawford "Everything Must Change"

ASWAD "ASWAD" (ブリティッシュ・レゲエの大御所)
J-ポップ系
大貫妙子「グレイ・スカイズ」
尾崎亜美「マイ・ピュア・レディ」
ゴダイゴ「僕のサラダ・ガール」
チャー "Char"
ハイファイ・セット「卒業写真」
BOW BOW 「吠えろ!BOW BOW」
浜田省吾「路地裏の少年」
ピンク・レディー「ペッパー警部」
丸山圭子「どうぞこのままで」
Moon Riders(鈴木慶一) 「火の玉ボーイ」
 「紫」
矢野顕子 "Japanese Girl"


 Phil Ochs    12月19日   自殺   36歳
 Paul Kossoff ( Free )    9月14日  心不全  25歳
 Keith Relf ( Yardbirds )   5月14日  感電死   33歳
 Tommy Bolin ( Deep Purple )   12月 4日  薬物中毒  24歳
 Gary Thain ( Uriah Heep )   3月19日  薬物中毒   ?
 Freddy King  12月28日  心不全   42歳
 Florence Ballard(The Supremes)    2月22日  心臓障害  36歳
 Howlin' Wolf     1月10日    ?   65歳
 Jimmy Reed     8月29日    ?  50歳
 Percy Faith    2月 9日    癌  67歳




IMF世界銀行第一回総会
先進7ヶ国首脳サンファン会議
<アメリカ>
アメリカ建国200年
ヴァイキング1号が火星に到達
カーター氏、米国大統領に就任
アップル・コンピューター設立
<ヨーロッパ>
イタリアを中心にユーロ・コミュニズム台頭
ソ連の軍人によるミグ25亡命事件
西ドイツの物理学者ウェルナー・ハイゼンベルク、哲学者ハイデッガー死去
フランスの俳優ジャン・ギャバン死去
<中東・アフリカ>
イスラエル軍、エンテベ空港(ウガンダ)襲撃し人質解放
南アフリカ、ソウェトで暴動発生
<アジア>
南北ヴェトナムがヴェトナム社会主義共和国に統一される
周恩来、毛沢東死亡、四人組追放事件
天安門事件発生
<日本>
ロッキード事件発生、日本の政界を揺るがす(田中角栄逮捕)
国鉄料金約50%値上げ

<芸術、文化、商品関連>
「フンボルトの贈りもの」ソール・ベロー著(ピューリツァー賞受賞)
「蜘蛛女のキス」マヌエル・プイグ著(アルゼンチン)
「サヴィルの青春」デイヴィド・ストーリー著(ブッカー賞受賞)
「ホップスコッチ」ブライアン・ガーフィールド著(エドガー賞)
「限りなく透明に近いブルー」村上龍著(芥川賞受賞)
アニエスbがパリでショップをオープン
アニタ・ロディクが「ザ・ボディー・ショップ」設立
雑誌「ポパイ」創刊
東急ハンズ、藤沢に一号店オープン


<音楽関連(海外)>
メガ・ヒット・アルバムの登場に対応してプラチナ・レコード創設(100万枚)
スライ&ロビーによるレゲエの新しいリズム・スタイル誕生
「フランプトン・カムズ・アライブ」に代表されるライブ・アルバム・ブーム
(その他、D.メイソン、G.デッド、J.G.バンド、L.スキナード、B.ディランなど)
ニューヨークでロフト・ジャズ・ムーブメントが盛り上がる
世界初の12インチ・リミックス・シングル「Ten Percent」発売
(by ダブル・イクスポージャー)
<音楽関連(国内)>
「春一番」「哀愁のシンフォニー」のヒットでキャンディーズの人気ピークに達する
ファニア・オールスターズ来日公演

<映画>
この年の映画についてはここから!                             

[1976年という年] 橋本治著「二十世紀」より 2004年11月追記
「『日本の与党が永遠に調和的な”一つ”であらねばならない』というのは、独裁への待望ではない。それ以外の選択肢を持ち得ないでいた日本人の貧しさの結果である。だから、日本人が『豊かさ』への道を歩き始めた1970年代になると、新しい動きが生まれる・・・『脱サラ』である」
「『脱サラ』を可能にする日本社会の豊かさは、その一方で終身雇用の豊かさを目指して進む多くの子ども達をも育てた。・・・黙って列の後ろに並べばいい。列はゆっくりと進む。『古い人』は定年で消える。いつの間にか日本人は、その行列の進行をこそ『世代交代』と錯覚した。『豊かさ』という名の停滞が始まるのは、この頃からである」

<作者からのコメント>
 「古い人」が死ぬことで「改革」が自然に起きると考える日本人の無責任さ、これこそが我々日本人の最も愚かな特質かもしれません。そうなるまでは、見て見ぬ振り「見ざる、聞かざる、言わざる」とはよく言ったものです。21世紀の日本人は、この無責任な体質から脱却することができるのでしょうか?もしくは、いやでも脱却せざるをえない状況へと追い込まれて行くのでしょうか?

年代記編トップへ  1977年へ      トップ・ページへ