古き良きパリの街へようこそ!


「アメリ LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN AMELIE」

- ジャン=ピエール・ジュネ Jean -Pierre Jeunet -

<アメリとの再会>
 久しぶりに「アメリ」に再開しました。幸い最近記憶力がいいかげんなので、ほとんどストーリーを忘れていて新鮮に見ることができました。フランスの映画史を変えた大ヒット作は、まだまだ色あせていません。というか、時代を越える魅力をもっていることに改めて気づかされました。
 セピア色の画面と古いモンマルトルの街並みは、現代とは思えない古き良きパリの再現で、何年後に見ても古さを感じさせないはずです。かつてフランス映画は、ラザール・メールソンの「巴里の屋根の下」やアレクサンドル・トローネルの「天井桟敷の人々」など、優れた美術監督がパリの街をセットで再現することでロケーション撮影とは異なる美しい名画を生み出していました。そう考えると、この映画もまたそうしたフランス映画の伝統の延長線上にあるといえそうです。
 映画の中には、携帯電話も出てこないし、八百屋の店先も現代のお店には見えません。まるで戦後すぐのパリの街にも見えます。このノスタルジックな舞台を背景に一軒のカフェと古いアパルトマンが登場。絵本の中のような世界でおとぎ話のように物語が展開します。

<ジャン=ピエール・ジュネ>
 監督のジャン=ピエール・ジュネは、もともとアニメ映画の作者から映画作りをスタートした人です。そう考えると、彼の映画の絵画的なカメラ・センスの良さや特殊効果の使い方の上手さに納得です。それにちょっと現実離れした登場人物たちのキャラクター設定や見た目の面白さもまたアニメ的にデフォルメされています。
 オドレイ・トゥトゥ(アメリ)はヒロインなのに独特のヘアースタイルからして異色な「不思議チャン」キャラで、「のだめカンタービレ」の上野樹里のようです。
 八百屋の口うるさいコリニョンおじさんも憎めないキャラでどこかカワイイし、彼にバカにされ続ける使用人のリュシアンは、それ以上にカワイイ・キャラクターです。
 ガラスの骨をもつ画家のおじさんも強面なだけにかえってカワイく見えます。(彼の病気はたぶん天才ジャズ・ピアニストのミシェル・ペトルチアーニとい同じですね)
 アメリが愛してしまうニノ(マシュー・カソヴィッツ)も全然二枚目ではなくカワイイ・キャラそのものです。
 そんな愛すべきキャラを、古き良きパリの街並みに配置したこの作品は、日本でいうと「Always 3丁目の夕日」のようにも見えてきます。考えてみると、あの映画で東京をCGで再現してみせた山崎貴監督はもともと特殊効果の監督でした。
 映画には物語が最重要とは限らないと思います。魅力的な背景を用意して、そこに魅力的なキャラクターを置くことで、時にはおのずと魅力的な世界が生まれるものなのです。ドキュメンタリー作品は、だからこそ面白い作品になりうるのです。(そうでなければ、脚本のある映画の方が面白いに決まっています)
 彼の長編デビュー作品「デリカテッセン」もまさにそうした魅力的な背景があって初めて生み出せた作品だったと思います。もちろん、彼がその後ハリウッドに招かれて撮った「エイリアン4」のその典型的作品。中世ヨーロッパの修道院(名作「薔薇の名前」の世界の宇宙版)にエイリアンを投げ込んだらどうなるのか?という彼らしい「エイリアン」作品でした。

<映画の故郷フランス>
 映画の故郷フランスが得意にしてきたのは、こうした動く絵画的な美しい映画でした。ジュネ監督のまたそうしたフランス映画の伝統の正統なる継承者のひとりかもしれません。

「破壊するよりも、つくりあげるhぽうが興味深い努力目標である。わたしは人生のこの段階で、軽くて夢を見させる、楽しませる映画をつくりたかった。わたしという個人の思いが大衆と一致したのだ。演出家にとって、このヒットは、もっともすばらしいプレゼントである」
ジャン=ピエール・ジュネ

 この映画の中でアメリが好きなこととして、映画を見ている観客の表情を見ることをあげていました。たぶんこれは監督自身の好きなことでもあるのではないでしょうか?
 大衆が求めている世界と監督が描きたかった世界が見事に一致したからこそ、この映画はフランスで空前のヒットを記録し、国境を越えて世界の観客にも受け入れられたのでしょう。
 隣近所や仕事仲間がお互いに関わりあうことを「ウザイ!」と感じる21世紀に生きる人々の目に、古き良きウザイ世界は、ちょっと懐かしく居心地の良い世界に見えたのでしょう。でも、もうそれはファンタジーの世界であって現実には存在しない世界なのかもしれません。

「アメリ LE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN AMELIE」 2001年
(監)(脚)ジャン=ピエール・ジュネ Jean -Pierre Jeunet
(脚)ギヨーム・ロラン
(撮)ブリュノ・デルボデル
(美)マリ=ローラ・ヴァラ
(美監)ヴォルカー・シューファー
(衣)マドレーヌ・フォンテーヌ、エマ・ルバイユ
(音)ヤン・ティエルセン
(出)オドレイ・トゥトゥ Audrey Tautou、マチュー・カソヴィッツ Mathieu Kassovitz、リュフェ、ロレラ・グラヴォッタ、、デルジュ・メルラン

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