マーベル・ヒーロー最後の闘い


「アベンジャーズ/エンドゲーム Avengers : Endgame」

- スタン・リー Stan Lee -
<「スター・ウォーズ」を越えた?>
 「アイアンマン」(2008年)から始まったマーベルのアベンジャ―ズ・シリーズ。心の中に闇を抱え、仲間内での対立と和解を繰り返した主人公たちのキャラクターは、「バットマン」以上に人間的でした。個人的には、次々に公開される関連作品が多すぎて、一時期ちゃんと見ていなかったので、話が見えなくなっていました。幸いうちの次男がシリーズにはまっていたため、その間も解説付きでシリーズ作品を見てはいました。
 そのうちに「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014年)、「ブラックパンサー」(2018年)のように単独の名作が誕生。「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」、「アベンジャーズ/インフィニティ―・ウォー」と物語が進むにつれ、どんどん見逃せなくなってきました。
 正直、「スター・ウォーズ」シリーズよりも面白くなりました!
 「スター・ウォーズ」シリーズが時間軸に沿った歴史大河ドラマなのに対し、「アベンジャーズ」シリーズは時間軸を遡った後、パラレル・ワールドへと展開。それぞれの登場人物が異なる時間、異なる次元、異なる場所を生きて行くことになります。考えてみると、「アベンジャーズ」の登場人物は、元々異なるコミックの世界であるパラレル・ワールドを生きる存在です。そんな異なるドラマを生きるキャラクターの人生を、どこでクロスさせるのか?それがこのシリーズをドラマチックで面白い作品にしているのだと思います。
 その象徴的な展開が、この作品のクライマックスでインフィニティ―・ストーンが集まった過去のある時点に遡るという選択です。そんなヒーローたちの人生がクロスしたドラマチックな瞬間を次々に見せてくれるのですから、面白いに決まっています。
 「スター・ウォーズ」の次回作は、超えられるでしょうか?

 他にもこのシリーズ最終作には、傑作になり得る理由がいくつもあります。
<最強の敵>
 最高のヒーロー映画には、最強の敵役が必要です。
 知能、攻撃力、精神力、どれをとっても最強なサノスに最強の武器であるインフィニティ―・ストーンを持たせることで、最強最悪の敵役が誕生。そのうえサノスには、自分は宇宙の救うのだという誰よりも強い信念があります。だからこそ、彼の究極の指パッチンに対して、観客は「それもありかもしれない?」と思わざるを得ないのです。
 ジョシュ・ブローリンの演技もあって、観客はどこかでサノスを憎み切れないのです。
<最悪の危機>
 最高のヒーロー映画は、ヒーローが最悪の危機に追い込まれてこそ面白くなるのです。
 ヒーローたちだけでなく、地球上の人間の半分も消えてしまった世界。人類の文明を崩壊してしまった世界をどうやって建て直せばよいのか?
 これほどの危機はないでしょう。
<最高の人間ドラマ>
 最高のヒーロー映画は、人間ドラマとしても優れていなければなりません。
 この作品には、友情あり、恋愛あり、嫉妬あり、裏切りあり、親子の愛情あり、様々な人間ドラマが詰め込まれています。
<最多ヒーロー登場>
 最高のヒーロー映画は、観客がヒーローに感情移入できなければなりません。
 様々な個性のヒーロー、ヒロインが登場するこの映画なら、誰もが自分とダブらせ感情移入できるヒーローがいるはず。
 ソロでも映画やテレビ・シリーズができるほど個性的キャラクターのヒーローたちが登場する「アベンジャーズ」は、アメリカ人が大好きなスポーツ、アメリカン・フットボールとそっくりです。そしてこの映画のラスト近く、インフィニティ―・ガントレットの争奪戦はそのアメリカン・フットボールのスタイルで行われました。
<最驚のラスト>
 最高のヒーロー映画には、観客を驚かせる仕掛けが必要です。
 ヒーロー映画にはある程度「お約束」的な展開も必要でしょう。
 しかし、映画とは「驚き」を与える娯楽です。それが映画の原点です。その意味で、「アベンジャーズ」シリーズは今までも様々な「驚き」を与えくれました。
 「ブラックパンサー」では、ほとんどの登場人物がアフリカ系という70年代エクスプロイテーション映画のスタイルで大ヒットを記録。
 「アベンジャーズ/インフィニティ―・ウォー」では、ヒーローが悪役に破れて終わるという衝撃のラスト。
 この作品でもラストにタイム・トラベルを使った驚きの展開が待っています。
 この映画の中でも数多くのタイム・トラベル映画のタイトルがあげられていますが、この作品はそれらの名作リストに加わるべき作品だと思います。
「ターミネーター」(1984年)、「スタートレック 故郷への長い道」(1986年)、「ある日どこかで」(1980年)、「ビルとテッドの大冒険」(1989年)・・・
 この映画でのタイム・トラベルの利用は、原作のコミックにはなく、この映画のために考え出されたアイデアのようです。でも最初から考えられていなのによくあそこまで話のつじつまがあうようにできたものです。あまりにも見事に様々な展開を回収したのは本当に見事です。

<60年代へのノスタルジー>
 この映画のもうひとつの魅力は、彼らの物語の原点ともいえる60年代末のパートのノスタルジックな雰囲気です。
 1960年代末といえば、アメリカにおいて人種差別との闘いが最も熱かった時代であり、女性の地位向上を求めるウーマンリブの盛り上がり、同性愛差別との闘い、若者たちのカウンターカルチャーの爆発など、多様性を受け入れるための社会変化が急激に起きていた時代でした。そんな時代、ニューヨークの街で生み出されたのが、マーベルの物語でした。アベンジャーズのメンバーの多様性は、そんな時代を象徴しているわけです。
 トニーが過去に戻っていた際、父親のハワードに「君はビートニクなのか?」と尋ねる場面はそんな時代をちらっと見せています。
 オバマ大統領の誕生など、遥かな未来のこの時代に「キャプテン・アメリカ」が白人から異なる人種になるなんて想像さえ困難だったはずです。・・・・
 ただし、そんな60年代末から現代へと至るまでにアメリカはどこまで変化したのか?
 トランプ大統領のもとで再び1950年代に巻き戻されたように見えるアメリカ社会。
 アベンジャーズの闘いはまだまだ続きそうです。
 ところで、この映画のラストは「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャ―」へとつながります。「エンドゲーム」の前にできれば再見しておくと良いと思います!

<スタン・リー Stan Lee>
 マーベル・シリーズの原作者スタン・リー Stan Lee は、1922年12月8日ニューヨーク市マンハッタンにルーマニア系ユダヤ人家庭に生まれています。俳優を志し演劇学校に通っていましたが、1939年に叔父が社長を務めていた後にマーベル・コミックスとなる出版社に就職。
 1940年、原作にも関わりながら、その能力を発揮し、18歳で編集長となりました。その後、兵役により3年間陸軍に所属。しかし、コミックの作者であることがわかると、教育用映画の脚本を書く仕事につきました。戦後、マーベルに戻った彼は、西部劇、怪奇、SFなどのコミックを書き続けますが、まったくヒットしませんでした。
 最後の賭けとして彼が挑んだのが、スーパー・ヒーローもの「ファンタスティック・フォー」でした。地元ニューヨークも街を舞台に、リアルな社会とヒーローの活躍を融合させることにこだわって書かれたシリーズは大ヒット。
 こうして、1960年代に彼は「ハルク」、「ソー」、「アイアンマン」、「ドクター・ストレンジ」、「スパイダーマン」、「X-メン」、「アベンジャーズ」、「デアデビル」、「キャプテン・アメリカ」などを次々に発表。
 2018年11月12日95歳でロサンゼルスにて死去。
 俳優になるという夢は実現したとはいえないかもしれませんが、数多くの作品にカメオ出演し、その興行収入は世界一としてギネスブックにも登録されました。様々な映画と共に彼の存在は永遠に残されることになるのです。
 95年の闘いを追えた後、彼はもしかすると過去に戻って、もうひとつ別の俳優としての人生を歩んでいるのかもしれない。彼が愛したキャプテン・アメリカのように・・・そんなことを思いながら、ラストシーンに泣けてきました。ご冥福をお祈りします。


「アベンジャーズ/エンドゲーム Avengers : Endgame」 2019年
(監)アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
(製)ケヴィン・ファイギ
(製総)ルイス・デスポジート、ヴィクトリア・アロンソ、ジョン・ファブロー、トリン・トラン、スタン・リー、マイケル・グリロ、ジェームズ・ガン
(脚)クリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリー
(撮)トレント・オパロック
(PD)チャールズ・ウッド
(視効)ダン・デレウ
(視ア)インダストリアル・ライト&マジック
(編)ジェフリー・フォード、マショー・シュミット
(音)アラン・シルヴェストリ
(音監)デイヴ・ジョーダン
(キャスト)サラ・ハリー・ファン
(出)
「アイアンマン」シリーズ関連
「アイアンマン」(2008年)、「アイアンマン2」(2010年)、「アイアンマン3」(2013年)
ロバート・ダウニーJr(アイアンマン/トニー・スターク)
グイネス・パルトロー(ペッパー・ポッツ)、ジョン・ファブロー(ハッピー・ホーガン)、ジェームズ・ダーシー(ハワードの執事/エドウィン・ジャービス)、ジョン・スラッテリー(ハワード・スターク)、タイ・シンプキンス(ハーレー・キーナー)

「キャプテン・アメリカ」シリーズ関連
「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャ―」(2011年)、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014年)、「キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー」(2016年)
クリス・エヴァンス(キャプテン・アメリカ/スティーヴ・ロジャース)
アンソニー・マッキー(ファルコン/サム・ウィルソン)、セバスチャン・スタン(ウインターソルジャー/バッキ―)、ヘイリー・アトウェル(ペギー・カーター)

「ドクター・ストレンジ」(2016年)関連
ベネディクト・カンバーバッチ(ドクター・ストレンジ/スティーヴ・ストレンジ)
ベネディクト・ウォン(ウォン)、ティルダ・スウィントン(エンシェント・ワン)

「スパイダーマン」シリーズ関連
「スパイダーマン/ホームカミング」(2017年)、「スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム」(2019年)
トム・ホランド(スパイダーマン/ピーター・パーカー)
ジェイコフ・バタロン(ネッド・リーズ)、マリサ・トメイ(メイおばさん)

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ関連
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014年)、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」(2017年)
クリス・プラット(スター・ロード/ピーター・クイル)
ゾーイ・サルダナ(ガモーラ)、デイヴ・バウティスタ(ドラックス)、ポム・クレメンティエフ(マンティス)、カレン・ギラン(ネビュラ)
(声)ブラッドリー・クーパー(ロケット)、ヴィン・ディーゼル(グルート)

「マイティー・ソー」シリーズ関連
「マイティー・ソー」(2011年)、「マイティー・ソー/ダーク・ワールド」(2013年)、「マイティー・ソー/バトルロイヤル」(2017年)
クリス・ヘムズワース(ソー)
トム・ヒドルストン(ロキ)、レネ・ルッソ(フリッガ/ソーの母)、ナタリー・ポートマン(ソーの元恋人ジェーン・フォスター)

「キャプテン・マーベル」(2019年)関連
ブリー・ラーソン(キャプテン・マーベル/キャロル・ランヴァース)

「アントマン」シリーズ関連
「アントマン」(2015年)、「アントマン&ワスプ」(2017年)
ポール・ラッド(アントマン/スコット・ラング)
エバンジェリー・リリー(ワスプ/ホープ・ヴァン・ダイン)、マイケル・ダグラス(ハンク・ピム博士)、ミシェル・ファイファー(ピム博士の妻/初代ワスプ)

「ブラックパンサー」(2018年)関連
チャドウィック・ボーズマン(ブラックパンサー/ティ・チャラ)
ダナイ・グリラ(オコエ)、レティーシャ・ライト(シュリ)、ウィンストン・デューク(エムバク)、アンジェラ・バセット(ラモンダ/ティチャラの母)

「アベンジャーズ」シリーズ関連
「アベンジャーズ」(2012年)、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015年)、「アベンジャーズ/インフィニティ―・ウォー」(2018年)
マーク・ラファロ(ハルク/ブルース・バナー)「インクレディブル・ハルク」(2008年)(ハルク役はエドワード・ノートンでした)
ジェレミー・レナー(ホークアイ/ローニン/クリント・バートン)
スカーレット・ヨハンソン(ブラックウィドウ/ナターシャ・ロマノフ)
ドン・チードル(ウォーマシン/ジェームズ・”ローディ”・ローズ)
エリザベス・オルセン(スカーレット・ウィッチ/ワンダ・マキシモフ)

サミュエル・L・ジャクソン(ニック・フューリー)、マリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)
ロバート・レッドフォード(アレクサンダー・ピアースSHIELD理事/ヒドラ幹部)
ウィリアム・ハート(元アメリカ陸軍将軍、ロス長官)

ジョシュ・ブローリン(サノス)
真田広之(アキヒコ)
スタン・リー

 出演者については、各シリーズごとに集めて並べてみました。総勢48名です!
 よくぞこれだけの俳優を集めたものです。キャラクター名と豪華な俳優の名前を書いているだけでうれしくなりました。
 ラストの葬儀の場面に一気に上記キャラクターの多くが登場するので、そこはじっくりとチェックしてください。(DVDを待つしかないかな)
 考えてみると、これだけ多くの有名俳優が出演する映画は、かつての戦争超大作「史上最大の作戦」以来かもしれません。ただし、戦争映画なのでほとんど男性俳優でした。
それとロバート・アルトマン監督の「プレタポルテ」も多くの名優が出演しています。そして、そちらはファッション界の内幕ものだったので女性の方が多いです。

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