- ブルース・ブラザース Blues Brothers -

<謎のバンド、ブルース・ブラザース登場>
 彼らがヒット・チャートに現れた当時、僕はまだ高校生でした。アメリカン・トップ40を欠かさず聴いていたその頃、突然聴いたこともない連中、ブルース・ブラザースのアルバムがチャートに現れ、あれよあれよという間に全米ナンバー1に輝いてしまい、ずいぶん違和感を感じたことを憶えています。。「なんじゃ、こうつら!」
 ブルース・ブラザースというダサイ名前と彼らが演奏する実に本物っぽいR&Bナンバー、それがなぜ全米チャートの一位になっちゃうわけ?(当時、僕は本物のR&Bもブルースも聴いたことなど、なかったのですが)
 バンドの正体を知らなかった僕にとっては、すべてが謎でした。

<ブルース・ブラザースの起源>
 ブルース・ブラザースの起源は、70年代初め、カナダのトロントにありました。この街で出会ったブルース好きのカナダ人ダン・エイクロイドとロック好きのアメリカ人ジョン・ベルーシは、コンビを組んでコメディアンとしての活動を始めましたが、それと平行して音楽活動も行っていました。彼らの知名度はしだいに上がってゆき、1975年ついにテレビ番組「サタデイ・ナイト・ライブ」のレギュラーの座を獲得します。そして、1977年いよいよ人気が高まっていた番組の中の重要なキャラクターとして、登場したのが、ブルースの伝道師<ブルース・ブラザース>だったというわけです。

<サダデイ・ナイト・ライブ>
 生放送のバラエティー番組として、きわどい人種ネタのギャグなど独特のスタイルで大ヒットしていたこの番組では、多くのミュージシャンたちが生演奏を行うコーナーがあり、そこの登場する音楽のセンスの良さもまたこの番組の重要な売りでした。(NHKのBS放送で時々この番組の音楽コーナーを集めた特別番組が放映されています)
 となれば、ブルース・ブラザースもまた本物のブルース・バンドでなければならないわけで、彼らのバックには本物以上の優れたR&B系のミュージシャンたちが集められました。
 先ず、ブッカーT&MG'sとして、オーティス・レディングなどR&Bの総本山アトランティック・レーベルのアーティストたちを影で支えてきた男たち、スティーブ・クロッパー(ギター)とドナルド・ダック・ダン(ベース)の二人、ブルースの世界にファンクを持ち込み新しいファンク・ブルースを誕生させたジェイムス・コットン・バンドのリズムの要、マット・ギター・マーフィー(リズム・ギター)。それに、バンドの音楽面のアドバイザーであり、後に映画音楽の分野でも活躍するキーボード・プレイヤーのポール・シェファー(映画版「ブルース・ブラザース」には出演していないが、続編の「ブルース・ブラザース2000」では大活躍しています)その他、ドラムスがスティーブ・ジョーダン(映画はウィリー・ホール)、サックスはブルー・ルー・マリーニ、トランペットがアラン・ルーヴィン、そして映画には出ていませんが映画「タクシー・ドライバー」のプレイなどで有名なトム・スコットがホーンで参加していた。

<ブルース・ブラザース、まさかの大ブレイク>
 時代はディスコ・ブームの真っ最中でしたが、彼らの直球ど真ん中のR&Bは、それに反発するかのように大受けしました。気をよくした彼らは、コンサート会場でのライブも数多くこなすようになり、ついに1978年ライブ・アルバム「ブルースは絆」を発表します。
 このアルバムは、番組の人気の助けを借りて大ヒット。さらにサム&デイブの名曲「ソウル・マン」のカバー・シングルも全米ナンバー1に輝き、彼らの勢いは止まりませんでした。こうして彼らは、アメリカ・ナンバー1のコメディー映画の大御所ジョン・ランディスを監督に向かえ、映画の制作に入ったわけです。

<映画版「ブルース・ブラザース」>
 映画版「ブルース・ブラザース」(1980年)には、バンドのメンバーに加え、豪華なゲストが出演、R&Bに捧げる永久保存版作品となりました。
 出演したミュージシャンは、ファンクの神様ジェームス・ブラウン、ジャンプ・ブルースの大御所キャブ・キャロウェイ、ソウルの女王アレサ・フランクリン、ソウルの創始者の一人レイ・チャールズ、ブルース界の生き証人ジョン・リー・フッカー、それにちょい役だがチャカ・カーン(教会の聖歌隊のメンバーのひとり)に元イーグルスのジョー・ウォルシュ(ラスト・シーンの「監獄ロック」で最初に踊り出した囚人)などが顔を見せていた。それ以外にも、スター・ウォーズのレイア姫ことキャリー・フィッシャー、アメリカの寅さんことジョン・キャンディースティーブン・スピルバーグも出演していました。
 ブルースの本場シカゴを舞台にしたこの映画は、コメディー映画の傑作として高い評価を得たことはもちろん、アメリカのポピュラー音楽の原点、ブルース、R&Bを忘れかけていたアメリカ人にとって、アメリカ文化の再発見にもつながり、その影響は非常に大きなものがありました。(ブルース・ブラザースに憧れ、ブルースを始めたブルース・トラヴェラーズのようなバンドも登場したくらいです)
 当然、映画のヒットと同時に続編の計画もできたそうですが、映画「トワイライト・ゾーン」のジョン・ランディス作品におけるビック・モローの事故死、それにジョン・ベルーシの突然の死(自殺、他殺、暗殺、事故死?未だに謎に包まれています)によって、不可能となり、それはもう永遠にかなわぬものになったかと思われました。

<映画のあらすじ>
 刑務所から出所したジェイク(ジョン・ベルーシ)は、迎えに来てくれた兄弟分のエルウッド(ダン・エイクロイド)とともに自分たちを育ててくれた孤児院を久しぶりに訪れますが、資金難のために経営の危機にあることを知ります。二人はその危機を救おうと幻のブルース・バンド、ブルース・ブラザースの再結成コンサートを実現することを思い立ちます。警察、ネオナチ、ジェイクの婚約者など、彼らの計画を妨害する敵が次々に現れる中、彼らは孤児院を救うことが出来るのか?

<「ブルース・ブラザース2000」>
 そして、20年近い歳月が流れました。ダン・エイクロイドはブルースを聴かせるクラブ、ハウス・オブ・ブルースを経営するなど、相変わらずブルースの伝道者としての使命を果たし続けていました。しかし、そんなある日、彼は光を見ました。「20世紀が終わる前にブルース・ブラザースを甦らせよ!」(すいません、これはでっち上げです)とにかく、再びブルース・ブラザースが集められることになったのです。
 続編の出演者は、前作に比べてさらに豪華になっています。それも多くの出演者が電話一本で出演をOKし、そのほとんどがノー・ギャラで参加したということです。それは、ブルース・ブラザースのR&Bに対する多大な貢献へのトリビュート作品でもあったのです。
 前作に続いて出演しているミュージシャンは、ジェームス・ブラウンとアレサ・フランクリン、そしてブルース・ブラザースのメンバー。そして今回参加のミュージシャンは、「21世紀ソウルの女王」エリカ・バドゥー、R&B界最高のデュオだったサム&デイブのサム・ムーア、かつて来日したブルース・ブラザース・バンドのヴォーカルもつとめた「ノック・オン・ウッド」で有名なエディ・フロイド、「ダンス天国」のヒットで一世を風靡したウィルソン・ピケット、アーバン・ブルースの王様、B.B.キング、若手白人ブルース・ギタリストのアイドル・スター、ジョニー・ラング、白人ソウル・ヴォーカルの最高峰、スティーブ・ウィンウッド、白人ブルース・ギタリストの神様、エリック・クラプトン、ロックン・ロールの元祖の一人、ボー・ディドリー、ニューオーリンズ・ファンクの継承者、ドクター・ジョン、ブラック・ファンクのドン、アイザック・ヘイズ、もう一人のローリング・ストーンズと言われた黒人キーボード・プレイヤー、ビリー・プレストン、ブルース・スプリングスティーンの名脇役、サックス奏者のクラレンス・クレモンズスティーリー・ダン、ドゥービー・ブラザースで活躍したジェフ・バクスター、シブーイ声が一度聴いたら忘れられないサム・クックの弟子の一人ルー・ロウルズ、ジャズ界から登場のジョシュア・レッドマン、豪快なおばさまココ・テイラー、それにグローヴァー・ワシントン・Jr.、ウィリー・ウィークスタジ・マハールゲーリー・US・ボンズ、そして、ブルース界からはジュニア・ウェルズロニー・ブルックス・・・よくぞまあ、これだけの出演者をうまいこと画面に登場させられたものです。たぶん、これだけ多くのミュージシャンが出演した映画は過去にないし、これからも現れることはないかもしれません。
 こうして、ブルース・ブラザースは神からのメッセージ、R&Bの伝道のために、再びこの世に使わされたのです。
 そして、このミッションは未だに続けられ、2001年には世紀を越えて再結成されたブルース・ブラザースが再び日本にR&Bの伝道のためにやって来ました。

<ブルース・ブラザースと言えばやっぱり、シカゴ>
 最後に、映画「ブルース・ブラザース」の中で僕が一番好きなシーンのことを書いておきたいと思います。それは、ジェイクとエルウッドが、マット・マーフィーを連れに行くため、シカゴの街を歩いていると、今は亡きブルースの大御所、ジョン・リー・フッカーが路上で歌っているシーンです。
 これぞブルース、これぞシカゴ!と言う感じのこの場面は、明らかに他のシーンとは違い、まるでドキュメンタリー映画のように仕上がっています。(テレビで放映される時は、たいていこのシーンはカットされているので、要注意)
 僕はテレビ・ドラマ「ER」の大ファンでもあるので、シカゴの街はすっかりなじみの街になってしまいました。ちなみに、シカゴという都市は、LAやニュー・ヨークと違い、人種の融合がより進んだ最もアメリカ的な土地とも言われています。なるほど、そうなのかも知れません。

<ブルース・ブラザース2001見てきました>
 ブルース・ブラザース2001を札幌で見てきました。前半は、白人ヴォーカリスト、トミー・マクドネルが、一人でジェイクとエルウッド、キャブ・キャロウェイそれにジョン・グッドマンまでを演じるブルース・ブラザース・ショウという感じで楽しかったし、後半はエディー・フロイドによる正調サザン・ソウル大会という感じで、黒人のグルーブ感は、やっぱり違うなあと感心しました。10年ほど前に東京で見たときより、内容も濃く楽しかった気がします。何はともあれ、やっぱり生の音は良いです。久々の生ライブに感激しました。それにしても、スティーブもマットもブルー・ルーも、みんなすっかり髪は白くなっていましたが、まだまだ若い。とは言え、2時間に渡る長丁場、ご苦労様でした。

<御冥福をお祈りします>
 天に召された方々のご冥福をお祈りします。
キャブ・キャロウェイ、ジョン・リー・フッカー(2001年6月21日83歳老衰)、ジョン・キャンディー、ジュニア・ウェルズ、そしてジェイクことジョン・ベルーシ、ジェームス・ブラウン・・・ 

<締めのお言葉>
「私は光を見た」 ジェイク・エルウッド 映画「ブルース・ブラザース」より

「ブルース・ブラザース The Blues Brothers」 1980年
(監督)ジョン・ランディス
(製作)ロバート・K・ワイス
(脚本)ジョン・ランディス、ダン・エイクロイド
(撮影)スティーブン・M・カーツ
(編集)ジョージ・フォルシー・Jr.
(音楽)アイラ・ニューボーン
(出演)本文参照

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