- ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson -

<懐かしい時代>
 70年代後半から80年代にかけてのパッとしないポップスをバックにしたパッとしない人々のパッとしない物語。それがなんだか妙に懐かしく愛おしく思えたりするのは、僕がちょうど同じ世代にあたるせいでしょうか?(1980年、僕はちょうど20歳でした)
 巨匠ロバート・アルトマンのB級版と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、それにしても見事な出来映えです。第一ロバート・アルトマンのマネをした監督、それも成功した監督など聞いたことがありません。この後、彼はロバート・アルトマンの正当な跡継ぎともいえる活躍をしてゆくことになります。
 それでも、アルトマンが超ジャズ・マニアなのに対して、この作品は、ディスコ音楽が中心ということで、その違いははっきりと現れています。もちろん、彼がディスコ音楽のファンとは限りませんが・・・作品中、最も映像と音楽が一体となって美しかったのが60年代の名曲ビーチ・ボーイズの「ゴッド・オンリー・ノウズ God Only Knows」のシーンだったというのは、やはり70,80年代の曲では役不足だということなのでしょうか?それとも、そこだけは彼の音楽の趣味を前面に出したということなのでしょうか?
 ところで、たしかあの頃ポルノ映画出身のダサイ男優がいたことを思い出しました。ハリー・リームス?だったような気がしますが・・・どうやら、これは彼の物語だったようです。(なぜ彼の名前を覚えていたのか?それは、映画雑誌の中のポルノ映画のページを熱心に見ていたおかげでしょう。高校生にとっては、あのキャラクターでも充分刺激的だったということでしょうか?・・・)

<バート・レイノルズ復活>
 それに監督役のバート・レイノルズも当時ヌード写真を発表するという快挙?を成し遂げた話題の男優でした。今思うとやっぱりこの時代って、パッとしない時代だったのでしょうか?
 パッとしない人々が集まって、パッとしない物語が展開されるだけなのに、どっこいそこには涙と笑い、感動が生まれる。これこそ映像の魔術、本当の映画の魅力なのかもしれません。そして、人生もまたこの映画と同じように、ほとんどがパッとしない場面の連続です。そう考えると、自分自身の演出しだいでは、どんなパッとしない人生でも充分感動的になりうるものだということを、この映画は教えてくれているのかもしれません。この映画は世の中のパッとしないすべての人々を元気にしてくれる貴重な作品なのです。こうした、「雑音」から「交響曲」を構成してしまうという手法こそロバート・アルトマン演出の決め手といわれています。やっぱり彼はアルトマンの後継者になりうるのかもしれません。
 もちろん、この映画は男性だけでなく女性も元気にしてくれます。ちなみに、この映画のキャッチ・コピーは「夢をオッ立てろ!」でした。ジャンジャン。

<追記>
彼の次作「マグノリア」も、本当に面白く暖かさにあふれた作品です。トム・クルーズのアカデミー賞受賞もうなずける傑作です。これもまた、必見!
他の作品
インヒアレント・ヴァイス
こちらもまたバリバリ1970年代の色が出た作品です!

「ブギー・ナイツ Boogie Nights」 1997年(日本公開1998年)
(監督)(脚本)ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
(撮影)ロバート・エルスウィット Robert Elswit
(音楽)マイケル・ペン Michael Penn
(出演)マーク・ウォルバーグ Mark Wahlberg
     バート・レイノルズ Burt Reynolds
     ジュリアン・ムーア Julianne Moore

<あらすじ>
 1977年ポルノ映画の製作現場周辺で繰り広げられる数々のドラマを群像劇として見事に組み上げた作品。ポルノ映画界の奇才監督にはバート・レイノルズ、その監督に見出されたシンデレラ・ボーイ、エディ(マーク・ウォルバーグ)が主人公ですが、それだけでなく主人公は複数いるのがこの映画の特徴でした。ディスコ・ブーム真直中の底抜けに明るい雰囲気とお馬鹿な雰囲気が懐かしい作品。

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