英国・アイリッシュ文学の魅力を訪ねて

「ブリティッシュ&アイリッシュ・マスター・ピース」

- ジョナサン・スウィフト、ジョージ・オーウェル・・・-

<柴田元幸作品集>
 英語文学の翻訳家として長年活躍する柴田元幸さんが選び、翻訳した英国とアイルランドを代表する作家による短編小説傑作選です。


「アイルランド貧民の子が両親や国の重荷となるを防ぎ、公共の益となるためのささやかな提案」(1729年)
A Modest Proposal : For Preventing the Children of Poor People in Ireland,from being a burden to theier Parents or Country..
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ジョナサン・スウィフト Jonathan Swift(1667年~1745年)
アイルランド生まれのイングランド系で各地を放浪した後、アイルランドで作家活動を行った。
「ガリバー旅行記」はこの作品の3年前1726年発表。
国民のほとんどがカトリックであるアイルランドは英国の植民地と言える状態で貧しい状態が続いていました。
そこで著者が提案したのは、「子供を1歳になったら国に食用として売るという提案でした。
人口問題、親の生活安定、副収入、食料問題・・・すべてが丸く収まる!って、さすがはブラック・ユーモアの本家です!
モンティ・パイソンが映像化していたかも?彼らならやりそうなアイデアです。 
「死すべき不死の者」 The Mortal Lmmortal 1833年 
メアリ・シェリー Marry Shelley(1797年~1851年)
フランケンシュタイン」(1818年)の著者。元祖SFであり、フェミニズム作家の元祖の一人でもある。 
不老不死の薬を飲んでしまった男が辿る不思議な人生。
主人公を残し、老いてゆく妻を悲しい思いも切ないラブ・ストーリー作品。 
「信号手」 The Signalmon (1866年)
チャールズ・ディケンズ Charles Dickens(1812年~1870年)
ミスタ―英国文学とも言えるエンターテイメント長編文学の最高峰 
鉄道事故を事前に教えてくれる亡霊を見てしまった鉄道の信号手。
でも予見できてもそれを信じてもらえなければ意味がない。どうすれば事故を防げるか?
さすがはディケンズ、短編だって面白い! 
「しあわせな王子」 The Happy Price(1888年) 
オスカー・ワイルド Oscar Wilde(1854年~1900年)
アイルランド出身の作家。同性愛が問題視されるなどスキャンダルが多く、悲劇の内に人生を終えます。
不幸な街の人々を救おうと身にまとっている宝飾品を与えてしまった王子の銅像。
彼の憧れ、彼のために働き続け、命を失った孤独なツバメ。
ワイルドにしては、珍しい真面目で美しく切ない愛と慈しみにあふれた短編小説。 
「猿の手」 The Monkey's Paw(1902年) 
W・W・ジェイコブズ W.W.Jacobs(1863年~1943年) 
3つの願いをかなえてくれる魔法の「猿の手」を使ってしまった一家の悲劇。
昔、テレビの「オーソン・ウェルズ劇場」で見た時の印象は今でも忘れられません。怖かった。
これぞ短編小説!という名作です。 
「謎」 The Riddle(1903年) 
ウォルター・デ・ラ・メア Walter de la Mare(1873年~1956年) 
7人の子供たちとお祖母さんによる短編ホラー。
「客用寝室にある古い木の収納箱。あそこにだけは入っちゃいけないよ」
そう言われちゃ、入るよね!という展開により、子供たちが次々と・・・
膨らませると一本の怖いホラー映画になりそうです。 
「秘密の共有者 - 沿岸の一エピソード」 The Secret Share : An Episodo from the Coast(1910年)
ジョセフ・コンラッド Joseph Conrad(1857年~1924年)
ポーランド出身で船乗りをしながら世界を旅し、英語により作家活動。
地獄の黙示録」の原作となった「闇の奥」や「ロードジム」などでその名を知られる作家。
別の船で殺人を犯してしまった男が船から脱出。泳ぎ着いた船で主人公と出会う。
なぜか主人公は殺人犯のはずの男を匿うことにします。
船という閉鎖された密室空間で起きた心理サスペンスを描いたコンラッド異色の中編小説。 
「運命の猟犬」 The Hounds of Fate(1911年) 
サキ Saki (1870年~1916年)
本名はH・H・マンロー。ビルマ生まれの英国人作家。 
人違いによって資産家の主になってしまった主人公。
うまくその主になり切るうちに、その人物が村人たちに恨まれていることがわかります。
命を狙うものまでいることが明らかになりますが・・・。
英国ブラック・ユーモアの最高峰サキらしい長めの短編作品。
「アラビー」 Araby(1914年) 
ジェームズ・ジョイス James Joyce (1882年~1941年) 
アイルランドを象徴する作家。
代表作である「ダブリン市民」からの2作品です。
憧れの少女にプレゼントを買おうと街で行われているバザー「アラビー」に向かった少年。
しかし、様々なトラブルでバザーは終わる寸前。彼はプレゼントを買えるのか?
少年時代の淡く苦い思い出を描いた短編作品。 
「エヴリン」 Eveline(1914年)
アイルランドからアルゼンチンへ移民船に乗る彼氏と共に家を出ようとする少女。
しかし、彼女には置いて行けない家族がいます。
彼女の決断は?移民の国、アイルランドらしい悲しい小説。 
「象を撃つ」 Shooting an Elephant(1936年) 
ジョージ・オーウェル George Orwell
「1984」や「動物農場」などで有名な英国人作家。 
ビルマで5年間警官として働いたオーウェルだからこそリアルに描けた小説。
暴走する象がクーリーを踏み殺し、ライフルを持って出動した白人警官。
周囲からの圧力で象を撃つくことになりますが・・・ 
「ウェールズの子供のクリスマス」 A Child's Christmas in Wales(1955年) 
ディラン・トーマス Dylan Thomas(1914年~1953年)
ウェールズが生んだ詩人・作家。ボブ・ディランは彼の名前から「ディラン」をとったと言われます。 
これといった事件や出来事があるわけではない、少年時代の懐かしいクリスマスの思い出。
詩人ならではの文章で描いた詩的な小説。 

「ブリティッシュ&アイリッシュ・マスター・ピース」 2015年
British and Irish Masterpiece
柴田元幸翻訳叢書
スイッチ・パブリッシング

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