LGBT映画50選+αの名作たち 


<LGBTとは?>
 LGBT(もしくはGLBT)とは、女性同性愛者(Lesbian レズビアン)、男性同性愛者(Gay ゲイ)、両性愛者(Bisexual バイセクシュアル)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字からつけられた名前です。(トランスジェンダーとは、身体の性と心の性が一致しないが外科的手術は望まない場合)
 そのにも、セクシュアリティーのアイデンティティが未確定な人と場合をクエスチョニング(Questioning)、男性・女性両方の性的特徴と器官があるインターセックス(Intersex)、無性愛(アセクシュアル Asexual)、性別移項(トランスクシュアル Transsexual)など、様々な呼び名が存在し、民族や国によっても言い方が違い、統一された定義は存在しません。全体をまとめて、「クイア」(Queer)と呼ぶ場合もありますが、下品な言い方として否定的に見られているようです。
 なぜ、こうも様々な呼び方があるのか?それはどうやら、「性」を決める要素が「男」と「女」の二者択一ではないからのようです。そのことについて、わかりやすく書いた文章があったのでここに書き出しておきます。

 人間性を決定する要素には、大ざっぱに言って、生物学的性(性器もしくは染色体によって判別)の他に、性自認(ジェンダー・アイデンティティ)、性的役割分担(ジェンダー・ロール)、性的指向(セクシュアル・オリエンテーション)の、合計四つがあり、生物学的性だけがすべてを決定するわけではない。この四つの要素がそれぞれの個体の中で入り交じっている。
 例えば、生物学的性、性自認、性的役割分担が男性であって、性的指向が女性に向かうなら、異性愛者。それに対して、同性愛というのは、例えば生物学的性が男性であって性自認も、性的役割分担も男性だが、性的指向が男性である場合を指す(ちまり、同性愛の男性とは、「女性化した男性」ではなくて、あくまでも男性であり、ただ性の対象が同性であるだけということ)。
 生物学的性が男性なのに、自分ではそのことになじめず、自分の体に違和感があり、性自認や果たしい役割が女性である場合は、同性愛ではなくてトランスセクシュアルと呼ばれ、欧米などでは、この苦痛な状態から抜け出すため性転換が医学的措置として認められている。
 トランスセクシュアルにももちろん異性愛者と同性愛者がおり、例えば、自分の男性だと考えながら男性と結婚するマドンナは、女装して女性の役割を演じるゲイでも性自認は男性である場合が多く、その場合には、生物学的性と性自認との間の違和感はない。また、女装(トランスベスタイト)する男性の多くは、異性愛者であって、たんにストレスの解消を女装に求めているにすぎず、永遠に女性だろうと願っているわけではない。(映画「エド・ウッド」の主人公がこの例に当てはまります)このように、個々人の性は簡単に一括りにはできず、この先いっそうの理解が望まれる。

石原侑子(「現代作家を知る17の方法」内「クイア」の注記より)

 もちろん、上記の内容もすでに古くなっているかもしれませんし、今後も変更が加えられることになるでしょう。問題はこうした分類や定義の方法がどう変わろうとも、それら特殊な性的指向を持つ人々のことを、「認めるか」、「認めないか」ということと考えることもできます。

<LGBT映画の名作映画50選>
 以下の一覧表は、イギリスの雑誌「Time Out London」が2016年に発表されたLGBT映画の名作50選です。選んだのは、LGBTの映画監督、脚本家などの関係者です。(グザヴィエ・ドラン、キンバリー・ピアース、ブルース・ラ・ブルース、トッド・ヘインズ、ジョン・ウォーターズ・・・)
 50作品の年代別の内訳は、1940年代までが1本、1950年代が1本、1960年代が5本、1970年代が7本、1980年代が4本、1990年代が17本、2000年代が8本、2010年代が6本。特に1990年代は、次々と新たな才能が登場し、数多くの名作が生まれた転換点となる時代だったといえそうです。
 この発表の後に発表された作品にもこの中に入る可能性が高い、名作が何本かあります。
ムーンライト」(2016年バリー・ジェンキンス)、「キャロル」(2015年トッド・ヘインズ)、「君の名前で僕を呼んで」(2017年ルカ・グァダニーノ)

 その他にも、ランク外の重要作品としては、・・・(やはりこの中にも1990年代の作品が多いです)
「マルホランド・ドライブ」(2001年デヴィッド・リンチ)、「モンスター」(2003年パティ・ジェンキンズ)、「さらばわが愛/覇王別姫」(1993年チェン・カイコー)、「ウェディング・バンケット」(1993年アン・リー)、「ロッキー・ホラー・ショー」(1975年ジム・シャーマン)、「クルージング」(1979年ウィリアム・フリードキン)、「ケレル」(1972年ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)、「アナザー・カントリー」(1984年マレク・カニエフスカ)、「蜘蛛女のキス」(1985年ヘクトール・バベンコ)、「欲望の法則」(1987年ペドロ・アルモドバル)、「チョコレート・ドーナツ」(2012年トラヴィス・ファイン)、「シークレット・ロード」(2014年ディート・モンティエル)、「人生はビギナーズ」(2010年マイク・ミルズ)、「インタビュー・ウィズ・バンパイヤ」(1994年フランシス・フォード・コッポラ)、「イン&アウト」(1997年フランク・オズ)、「ベルベット・ゴールドマイン」(1998年トッド・ヘインズ)、橋口亮輔監督の「ニ十才の微熱」(1993年)「渚のシンドバッド」(1995年)「ハッシュ!」(2001年)・・・
 他に映画のテーマではないものの、主人公の同性愛指向が隠れた意味をもつ映画としては、「アラビアのロレンス」があり、他にも多くの映画で主人公の同性愛が推測されます。例えば、「明日に向かって撃て」、「ディア・ハンター」などは有名です。
 とりあえず、この中の作品なら十分に見ごたえがあると言えそうですから、何を借りるか、何を見るか、迷った時の参考にしていただければと思います。

 1位 「ブロークバック・マウンテン」 2005年 アン・リー
(中国)
ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール
アカデミー監督賞、脚色賞、作曲賞
ゴールデングローブ作品、監督、脚本、主題歌賞
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞
アカデミー賞を本命視されながら壁に跳ね返された名作
 2位 「ボーイズ・ドント・クライ」  1999年 キンバリー・ピアース
(米) 
ヒラリー・スワンク
アカデミー主演女優賞
様々な役をこなしてきた名女優の代表作
 3位 「ブエノスアイレス」  1997年 ウォン・カーウェイ 
(台湾)
レスリー・チャン、トニー・レオン
カンヌ国際映画祭監督賞 
イケメン男優二人と台湾の巨匠による名作
 4位 「マイ・プライベート・アイダホ」  1991年  ガス・ヴァン・サント
(米)
リバー・フェニックス、キアヌ・リーブス
リバー・フェニックスがカンヌ国際映画祭主演男優賞
2年後のこの世を去るリバー・フェニックスの代表作
 5位 オール・アバウト・マイ・マザー 1999年  ペドロ・アルモドバル
(スペイン) 
セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルス
カンヌ国際映画祭監督賞、アカデミー外国語映画賞
ペドロ・アルモドバルの代表作
 6位 「甘い抱擁」  1968年  ロバート・アルドリッチ 
(米)
ベリル・リード、スザンナ・ヨーク
舞台劇「シスター・ジョージ殺し」の映画化
 7位 「ぼくのバラ色の人生」  1997年  アラン・ベルリネール
(ベルギー) 
ミシェール・ラロック、ジャン=フィリップ・エコフィエ
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭グランプリ 
 8位 「ミルク」  2008年  ガス・ヴァン・サント
(米)
ショーン・ペン、エミール・ハーシュ
実在の政治家ハーヴェイ・ミルクの伝記映画
アカデミー主演男優賞、脚本賞 
 9位 「とても素敵なこと-初恋のフェアリーテール-」 1996年  ヘッティ・マクドナルド 
(英)
グレン・ベリー、リンダ・ヘンリー 
10位 「オルランド」  1992年 サリー・ポッター
(英)
ティルダ・スウィントン
ヨーロッパ映画賞新人監督賞 
11位 「マイ・ビューティフル・ランドレット」  1985年 スティーブン・フリアーズ
(英)
ゴードン・ウォーネック、ダニエル・デイ=ルイス
ニューヨーク映画批評家脚本賞、助演男優賞
12位 「ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ」  2001年 ジョン・キャメロン・ミッチェル
(米)
ジョン・キャメロン・ミッチェル、マイケル・ピット
同名ロック・ミュージカルの映画化作品
13位 「プリシラ」  1994年  ステファン・エリオット
(オーストラリア) 
テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィービング
アカデミー衣装デザイン賞 
14位 「ウィークエンド」  2011年  アンドリュー・ヘイ
(英) 
トム・カレン、クリス・ニュー
英国インディペンデント映画賞製作業績賞
15位 「愛の唄」  1950年  ジャン・ジュネ
(仏) 
男娼でもあったフランスの小説家、詩人による唯一の映画作品
16位 「自由の代償」  1975年  ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
(独)
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ペーター・シャペル
脚本、主役も演じたドイツの巨匠は両性愛者でした
17位 めぐりあう時間たち」  2002年  スティーブン・ダルドリー
(米) 
ニコール・キッドマン、エド・ハリス、ジュリアン・ムーア
アカデミー主演女優賞 
18位 「乙女の祈り」  1994年  ピーター・ジャクソン
(オーストラリア) 
メラニー・リンスキー、ケイト・ウィンスレット
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞 
19位 「真夜中のパーティ」  1970年  ウィリアム・フリードキン
(米) 
ケネス・ネルソン、クリフ・ゴーマン
「フレンチコネクション」でブレイクする直前の作品 
20位 「パレードへようこそ」  2014年 マシュー・ウォーチャス
(英) 
ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン
炭鉱での労働運動とゲイ・グループの活動が合体した実話 
21位 「キッズ・オールライト」  2010年 リサ・チョロデンコ
(米) 
アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア
ゴールデングローブ作品賞、女優賞 
22位 「モーリス」  1987年  ジェームズ・アイヴォリー
(英) 
ジェームズ・ウィルビー、ヒュー・グラント、ルパート・グレイブス
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞、男優賞、音楽賞
23位 「スコーピオ・ライジング」  1963年  ケネス・アンガー
(米) 
ブルース・バイロン
同性愛者、神秘主義者で知られるアンガーによるカルト映画
24位 「トランス・アメリカ」  2005年  ダンカン・タッカー
(米) 
フェリシティ・ハフマン、ケヴィン・ゼガーズ
ゴールデングローブ女優賞 
25位 「Go!Go!チアーズ」  1999年  ジェイミー・バビット
(米) 
ナターシャ・リオン、ミシェル・ウィリアムズ
青春同性愛コメディ映画らしいのですが・・・ 
26位 「バウンド」  1996年  ウォシャウスキー兄弟
(米) 
ジェニファー・ティリー、ジーナ・ガーション
ウォシャウスキー兄弟の出世作 
27位  ベニスに死す」  1971年  ルキノ・ヴィスコンティ 
(伊)
ビヨルン・アンドレセン、ダーク・ボガート、シルバーナ・マンガーノ
カンヌ国際映画祭25周年記念賞 
28位 「フィラデルフィア」  1993年  ジョナサン・デミ
(米) 
トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン、アントニオ・バンデラス
アカデミー主演男優賞、主題歌賞 
29位  「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」 1972年 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
(独)
マーギット・カーステンゼン、ハンナ・シグラ
ファスビンダー監督による戯曲の映画化
30位 「The Terence Davies Trilogy」(3部作)
『子供たち』Children,76、『聖母子』Madonna and child,80
『死と変容』Death and transfiguration,83)
1983年  テレンス・デイヴィス
(英)
同性愛者である監督の自伝的映画3部作
31位 「ピンクフラミンゴ」  1972年  ジョン・ウォーターズ
(米) 
ディバイン
巨漢のドラッグ・クイーン主演の70年代カルト映画の代表作 
32位 「エドワードⅡ」  1991年  デレク・ジャーマン
(英) 
スティーブン・ウォーディントン、ティルダ・スウィントン
ヴェネチア国際映画祭女優賞
33位  「サテリコン」  1969年  フェデリコ・フェリーニ
(伊) 
マーティン・ポッター、ハイラム・ケラー
ヴェネチア国際映画祭最優秀イタリア映画賞 
34位 狼たちの午後 1975年  シドニー・ルメット
(米) 
アル・パチーノ、ジョン・カザール、クリス・サランドン
アカデミー脚本賞 
35位  「ピンクナルシス」  1971年  ジェームズ・ビドグッド
(米) 
ボビー・ケンダル
謎に包まれたゲイ・カルト・ムービー
36位  「マイ・ブラザー・ザ・デビル」  2012年  サリー・エル・ホセイニ
(英・エジプト) 
ファディ・エルサイド、ジェームズ・フロイド
ベルリン国際映画祭欧州シネマズ・レイベル賞
37位  「ロングタイム・コンパニオン」  1990年  ノーマン・ルネ
(米) 
キャンベル・スコット、ブルース・デイヴィソン
ゴールデングローブ最優秀助演男優賞(B・デイヴィソン) 
38位  「By Hook or By Crook」  2001年  ハリエット・ダッジ、シラス・ホワード
(米) 
 
39位 「Parting Glances」  1986年  ビル・シャーウッド
(米) 
リチャード・ガノウン、ジョン・ボルジャー
エイズでこの世を去ったゲイ監督唯一の作品
40位  「オズの魔法使い」  1939年  ヴィクター・フレミング
(米) 
ジュディ・ガーランド
ゲイのキャラクターはいないはずが、確かにそのムードはある 
41位  「ハイ・アート」  1998年  リサ・チョロデンコ
(米) 
ラダ・ミッチェル、アリー・シーデイ
元カメラマンの女性と女性編集者の恋の物語 
42位  「真夜中のカウボーイ」  1969年  ジョン・シュレシンジャー
(米) 
ダスティン・ホフマン、ジョン・ボイト
アカデミー作品、監督、脚色賞
43位 「パリ、夜は眠らない」 1990年  ジェニー・リビングストン
(米) 
ドキュメンタリー映画(舞台はNYのハーレム)
全米、LA、NY批評家協会賞 
44位 「ストレンジャー・インサイド」  2001年  シェリル・デュニエ 
(米)
ヨランダ・ロス、ダヴェニア・マクファデン
テレビ向けに製作された作品 
45位 「テオレマ」 1968年 ピエル・パオロ・パゾリーニ
(伊) 
テレンス・スタンプ、シルバーナ・マンガーノ
ヴェネチア国際映画祭女優賞、国際カトリック映画事務局賞
46位 「Pariah」 2011年 ディー・リース 
(米)
アデペロ・オデュイエ、パーネル・ウォーカー
インディペンデント・スピリット賞ジョン・カサベテス賞
47位  「アデル、ブルーは熱い色」  2013年 アブデラティフ・ケシシュ
(仏)
アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥ
カンヌ国際映画祭パルム・ドール、全米批評家協会外国語映画賞
48位  「ショー・ミー・ラブ」 1998年  ルーカス・ムーディソン
(スウェーデン) 
アレクサンドラ・ダーレストレム、レベッカ・リリエベリ
レズビアン青春ドラマ 
49位  「バッド・エデュケーション」  2004年  ペドロ・アルモドバル
(スペイン)
ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルティネス
NY批評家協会外国映画賞 
50位  「噂の二人」  1961年  ウィリアム・ワイラー
(米) 
オードリー・ヘップバーン、シャーリー・マックレーン
リリアン・ヘルマン「子どもの時間」の映画化 
二人の名女優による初のハリウッド作品


<女装パーティ>
 正直言うと、僕自身は完全にストレートで、様々な性的指向の存在を頭では認めているのですが、生理的にはなかなか受け入れられない面もあります。でも、昔のことを思い出してみると、男の子を愛しても不思議はないかも?と思っていた瞬間もあった気がします。大人になってからそんな瞬間が訪れる場合だってあるかもしれません。
 これまた振り返ると、昔僕が働いていた会社(2部上場のちゃんとした会社)で、年に一度「女装パーティー」が一部のおじさんたちによって開催されていました。(ちょっとオネエっぽい人もいましたが)今思えば、それは年に一度様々なストレスを発散するために開催されていたのでしょう。
「楽しいぞ!鈴木君も参加して見ないか?」と誘われたこともありました。
 本当にストレートな人などいないはず。誰もが微妙にどこかちょっと違う要素をもっているはずです。ですから、あまり難しく考えることはないのかもしれません。

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