
- バンド・エイド Band Aid , USA フォー・アフリカ
USA For Africa -
<バンド・エイドとは?>
バンド・エイドとは、ボブ・ゲルドフ(元ブームタウン・ラッツ)の呼び掛けで集まったスティング、フィル・コリンズ、ボノ(U2)、ジョージマイケル(ワム!)らが参加したシングル「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」で結成した一時的なユニット・バンドの名前です。それは、ボブが1984年にテレビのBBCニュースで飢餓に苦しむエチオピアの人々を見たことがきっかけで生まれました。その年の12月に発売されたこのシングルは、イギリスではもちろんヒットチャートの1位になり大ヒットを記録します。
<バンド・エイドのメンバー>
バンド・エイドに参加したのは、以下のようなメンバーでした。
ミッジ・ユーロ(ウルトラ・ボックス)、バナナラマ、フィル・コリンズ、ボーイ・ジョージとジョン・モス(カルチャー・クラブ)、ロバート・ベルとジェームス・テイラー、デニス・トーマス(クール&ザ・ギャング)、デュラン・デュラン、グレン・グレゴリーとマーティン・ウェア(ヘブン17)、ジョージ・マイケル、スパンダー・バレエ、ステイタス・クォー、スティング、ボノとアダム・クレイトン(U2)、ジョディー・ワトリー、ポール・ウェラー、ポール・ヤング
そして、これをきっかけに、世界中でチャリティーが盛り上がりをみせることになり、翌1985年にはアメリカでも同じような企画が発表されます。それが、USA・フォー・アフリカでした。
マイケルジャクソン、ボブディラン、ブルーススプリングスティーン、スティーブィーワンダー、ダイアナ・ロスらが参加したシングル「ウィー・アー・ザ・ワールド」はMTVの助けも借り、全世界で空前の大ヒットを記録します。こうして、この2枚のシングルの収益金がアフリカの飢餓に苦しむ人々への援助金として寄付されました。
そして、同年7月に両者を合体させた“ライブ・エイド”が開かれることになりました。
<ライブ・エイドの出演者>
<イギリス側>
Status Quo、The Style Council、The Boomtown Rats、Adam Ant、Ultravox、Spandau
Ballet、Elvis Costello、Nik kershaw、Sade、Sting&Phil Collins、Howard Jones、Brian Ferry(guitar:Dave Gilmore)、Simple Minds、ザ・プリテンターズ、Led Zeppelin(drams:フィルコリンズ、途中:Tony Thompson)、デュランデュラン、Paul
Young(途中:Alison Moyet)、U2、Dire Straits(途中:Sting)、Queen、David Bowie、The Who、Elton John(途中:Kiki Dee、Wam!)、フレディ・マーキュリー&ブライアン・メイ(Queen)、ポール・マッカートニー&デビッド・ボーイ&ピート・タウゼント(The Who)&Alison Moyet&ボブ・ゲルドフ
<アメリカ側>
Joan Baez、The Hooters、The Four Tops、Billy
Ocean、ブラック・サバス&オジー・オズボーン、RUN-DMC、Rick Springfield、REO Speedwagon、Crosby
Stills and Nash、ジュダスプリースト、ブライアン・アダムス、ザ・ビーチ・ボーイズ、George Thorogood and the Destroyers(途中:Bo Diddley、Albert Collins)、サンタナ(途中:Pat Metheny)、Ashford&Simpson(途中:Teddy Pendergrass)、Madonna、Tom Petty、The Cars、Neil Young、Power Station、Thompson Twins(途中:マドンナ、guitar:Nile
Rogers)、Eric Clapton(drams:フィル・コリンズ)、フィル・コリンズ、、Patti
Labelle、ホール&オーツ(途中:Eddie Kendricks、David Ruffin)、ミックジャガー&ホール&オーツ(途中:ティナターナー)、Bob Dylan&キースリチャーズ&ロンウッド(基本的に&と書いてあるものは全曲を通じて共演したという事)
<イギリス、アメリカ以外からのビデオ出演>
INXS、Loudness、OPUS、B.Bキング、Yu Rock Mission、Autograph、udo Linden berg
<おまけ>
ミックジャガー&デビッドボーイが共演した曲が唯一プロモビデオで流されました。(たぶん「ダンシング・イン・ザ・ストリート」でしょう)
<開催日時>
1985年7月13日正午(日本時間午後21時、アメリカ時間午前9時)開始。イギリスはロンドンのウェンブリースタジアムから、アメリカはフィラデルフィアのJFKスタジアムから2大スタジアムを拠点に全世界約170ヶ国に衛星生中継。約15億人が視聴したと言われています。各アーティストの出番は約20分。イギリス側のファイナルは7月13日午後22時(日本時間14日午前7時、アメリカ時間13日午後19時)。ポール・マッカトニーの「レット・イット・ビー」の後に出演者全員で「ドゥ・ゼイ・ノウ〜」を歌い終了。その後はアメリカ側のみ続けられ、アメリカ側のファイナルは7月14日午前4時(日本時間午後1時、アメリカ時間午前1時)。出演者全員で「ウィー・アー・ザ・ワールド」を歌って終了しました。こうして約16時間に渡る一大チャリティーイベントは幕を閉じ、世界にアフリカの飢餓を訴えるという目的を果たしました。これは、ロックという音楽が大人の音楽として世界の平和に貢献する存在意義を証明した瞬間だったのかもしれません。
<チャリティーの限界>
しかし、こうして大型チャリティが相次ぐと、本来の狙いはぼやけ、主張が一過性のものとなってしまう危険もはらんでいました。その点では、U2のボノが「バッド」を歌った際に、(取り決めで禁止されていた)聴衆の女性を引っ張り上げて踊るというパフォーマンスに出て、世界の喝采を浴びたのは象徴的な出来事でした。ボノは「抽象的な大義」を叫ぶより「人間同士の絆」を見せつけることで、難民問題の本質をえぐり出したと言えるのかもしれません。実際、“ライブエイド”の後出演者の中で彼だけが、オフを利用してエチオピアの労働キャンプに出掛けているのです。
金集めの是非の問題について、ボブは「ライブエイドの目的は金を集めることにある」と明言しています。それを象徴する逸話もあります。ライブエイドは英米の超大物たちが顔をそろえましたが、黒人の出演者が少ないという難点がありました。プリンスやマイケルジャクソンすら出ていなかったのです。これは黒人軽視ではないか、という問いかけに対し、ボブはライブエイドの目的は「出演者はどれだけ多くの人を集められるかという観点で選んだ。スティールパルスとワム!のどちらかを選べといわれたら、迷わずワム!を選ぶ」と答えています。「より多くの人を呼べれば、より多くの金が集められ、アフリカで生きられる人の数が増える」という現実的な理由からです。こうして、この企画は約1億ドル以上を集めたと推定されています。(しかし、その大半がアフリカの人々に行き渡らなかったのではないか?とも言われているようですが・・・)さらに、この企画をきっかけにして、次々とミュージシャンたちによるチャリティー・コンサートが開催されるようになり、20世紀後半は、成熟したロック・ミュージシャンたちによる社会貢献の時代だったとも言えそうです。
<本質的な問題点>
しかし、そこには重要な問題点もあります。それは、これらアフリカで起きている飢餓の問題は、この時だけのことではなかったということ、そしてその原因は、西欧諸国によるアフリカからの富の収奪が原因だったということを、このライブは明らかにすることを避けていたということです。この収奪の構造を作り上げたのは、かつて西欧諸国が行った植民地政策であり、その構造が経済構造として残っているかぎりアフリカの厳しい状況はなくならないのは明らかです。したがって、この事実を明らかにすること無しに、ただのチャリティー募金だけで問題が解決することはないのです。
実際、飢餓の問題は、その後も続き、1990年代に入ってから再び最悪の状態を迎えています。しかし、その時はもうロック界はなんのチャリティーも行っていません。結局は、現状に対する短期的なお金による対処をしただけだったのでしょうか。
その意味では、アフリカのミュージシャン自身が中心となってチャリティーとして行った企画、その名もずばり「Starvation(飢饉)」の方が分かりやすい企画だったのかもしれません。本当にアフリカを救いたいのなら、彼らアフリカのミュージシャンたちを主役にして、海外のアーティストたちが脇役にまわる企画があって良かったとは思うのですが、・・・。そう考えると、「WOMAD」の存在は非常に重要だったと改めて思います。
<「Starvation」参加メンバー>
Ray Falconer(UB40)、George Agard(Pioneers)、Jerry
Dammers(Special AKA)、Manu Dibango、Mory
Kante、Ray Lema、King Sunny Ade、Ghetto Blaster、Salif Keita、Toure Kunda、Malopoets、Youssou N'Dour、Martin Meissonnier、Alpha Blondy、Bob Geldof
<未来について考える想像力>
もちろん、考えるだけで何もしないより、ミルク1ビンでも子供たちに与えることの方が重要なのは確かなのかもしれません。しかし、未来について考えながら行動することもまた重要なはずです。歴史を振り返ることはその意味非常に役に立つはず。残念ながら、それができないのがアメリカという国なのかもしれません。だからこそ、彼らは世界を助けているつもりが、かえって多くの国々に嫌われるという状況を生むことになってしまったのだと僕は思うのですが・・・。
<静かな2003年春>
2003年アメリカとイギリスによるイラクへの攻撃が今まさに始まろとしている時、アメリカ国内であれだけ反戦運動が高まっているにも関わらず、アメリカのミュージシャンたちによる大がかりな反戦コンサートが行われないのはなぜでしょう?かつてあれだけ平和を求める歌を歌っていたミュージシャンたち、そして音楽業界は、歴史上最も愚かな大統領の元ですっかり保守化してしまったようです。
そう考えると、ライブ・エイドも所詮他人事に首を突っ込んだだけの余計なお世話に思えてしまいます。
そうではないと、誰か示してくれ!
<感謝>
このページは、ユウタさんの提案と情報提供によってできました。この場を借りてお礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございました。
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