香港が生んだ演技派美人女優


- マギー・チャン Maggie Cheung 張曼玉 -

「花様年華」

<中華圏を代表する美人女優>
 マギー・チャンMaggie Cheung張曼玉といえば、日本ではジャッキー・チェンのカンフーアクション映画に登場するロングヘアーのカワイ子ちゃん女優としてのイメージが強いかもしれません。彼女が出演しているジャッキーの代表作「ポリスストーリー 香港国際警察」(1985年)、「プロジェクトA2」(1987年)、「九龍の眼 クーロンズ・アイ」(1988年)などは日本でも大ヒットしているので、ご覧になっている方も多いでしょう。1980年代日本でのジャッキーの人気が凄かった分、彼女のロングヘアーとジャッキーとのからみの印象が深いのではないかと思います。しかし、21世紀に入って彼女の評価は美しき演技派女優として中華圏を代表する存在になっています。アイドルから見事な脱皮を遂げた美人女優の歴史に迫ります。

<モデルからのスタート>
 マギー・チャンは、1964年9月20日香港の経済的に恵まれた家庭に生まれました。1972年、両親がイギリスに移住したため、彼女はロンドンで少女時代を過ごすことになります。
 1982年、故郷香港への思いが強かった彼女は故国へ一時帰国し、そこでデパートの店員として働き出します。すると、その美しさが目を引き、モデルとしてスカウトされます。ファッションショーでモデルとして活躍し、雑誌のモデルとしても有名になる中、1983年にはミス香港の第2位に選ばれます。すっかりアイドルとなった彼女は、テレビ・ドラマに女優として出演後、1984年には映画「君が好きだから」でデビューします。そして、世界的なブレイクを果たしつつあったジャッキー・チェンの「ポリス・ストーリー 香港国際警察」(1985年)に出演したことで、いよいよ彼女はアイドル女優としてブレイクすることになります。ジャッキーとのコンビ作は、他にも「プロジェクトA2史上最大の標的」(1987年)、「九龍の眼クーロンズ・アイ」(1988年)、「ツイン・ドラゴン」(1992年)、「ポリスストーリー3」(1992年)などがありますが、彼女はこうしたアクション映画への出演とは別に異なるジャンルの映画への挑戦も行い、アイドル女優からの脱皮を着実に進めていました。

<国際的演技派女優へ>
 1988年、ウォン・カーウァイ監督のデビュー作「いますぐ抱きしめたい」に出演し、早くも彼女は香港電影金像賞にノミネートされます。彼女とウォン・カーウァイ監督との関係はこの後も続くことになり、「欲望の翼」(1990年)、「楽園の瑕(きず)」(1994年)、そして名作「花様年華」(2000年)が生まれることになります。
 1989年、アンソニー・チャン監督の「仔猫のように抱きしめて」で前記の香港電影金像賞を獲得しています。
 1989年、スタンリー・クワン監督の「フルムーン・イン・ニューヨーク」に出演。中国人女優スチン・ガオワー、台湾人女優シルヴィア・チャンと共演。彼女は台湾の映画賞、金馬奨で最優秀主演女優賞を獲得。それ以外にも、この作品は作品賞、脚本賞、撮影賞、美術賞、録音賞も獲得しています。この映画の成功で、彼女は香港だけでなく台湾と中国でも人気者になりました。

「ロアン・リンユイ 阮玲玉」(1991年)
 1991年、彼女はスタンリー・クワン監督の「ロアン・リンユイ 阮玲玉」で中国の伝説的女優ロアン・リンユイを演じ、ベルリン国際映画祭で最優秀主演女優賞を受賞。国際的な演技派女優として、その名が世界中に知られることになりました。
<あらすじ>
1930年代に上海の映画界で活躍した実在の女優ロアン・リンユイは、日中戦争の戦火が及び香港に逃げます。そこで彼女は女優として再び活動し始めます。ところが、地元資産家男性との不倫関係が発覚し、夫に姦通罪で訴えられてしまいます。彼女は周囲の人々に助けを求めますが、ことごとく裏切られ、裁判所への出頭前日、自ら命を絶ってしまいました。

 1993年、ツイ・ハーク監督の「青蛇転生」に出演し、青蛇の精を演じ妖艶な美しさを披露しています。
 1996年、ピーター・チャン監督の「ラブ・ソング」に出演。この映画は彼女にとって久々の青春恋愛映画でした。もともとはテレサ・テンの同名タイトルのヒット曲をモチーフに作られた作品で、大陸から香港への移民青年(レオン・ライ)を愛し、彼をニューヨークまで追いかけるというラブストーリー。この作品は、香港電影金像奨グランプリや台湾金馬奨グランプリなど、数多くの賞を獲得しています。

「宋家の三姉妹」(1997年)
 女性監督メイベル・チャンの「宋家の三姉妹」は、香港の中国復帰を記念した歴史大作。彼女は、ミシェル・ヨー、ヴィヴィアン・ウーと上海財界の大物チャーリー宋の三姉妹を演じ、孫文や蒋介石らが活躍した中国独立運動の時代を再現しました。香港・日本合作のこの映画は、香港映画界が初めて本格的に中国本土の近代史を描いた作品として高い評価を受けることになりました。
 この年には、彼女はウェイン・ワン監督の作品「チャイニーズ・ボックス」にも出演。中国が生んだ大女優コン・リーと共演。この時、マギーは33歳で、コン・リーは32歳。二人はほぼ同期のライバルだといえます。
(監)メイベル・チャン(製)ン・シー・ユエン(脚)アレックス・ロウ(撮)アーサー・ウォン(音)喜多郎、ランディ・ミラー
(出)マギー・チャン、ミシェル・ヨー、ヴィヴィアン・ウー、ウィンストン・チャオ、ウー・シンクオ
<ミシェル・ヨー>
 ミシェル・ヨ―Michelle Yeohは、1962年8月6日マレーシア生まれ(中国系)。ロンドンでバレエを学んでいたが怪我でマレーシアに帰国。ミス・マレーシアに選ばれたことから香港映画界からスカウトされ映画女優としてデビューすることになります。
 彼女のブレイクのきっかけもやはりジャッキー・チェンの作品で、コメディー・アクションのヒット作「七福星」(1985年)でした。1987年に結婚して一度引退していますが、離婚後すぐに復帰。1997年に「宋家の三姉妹」に出演後、同年「007トゥモロー・ネバー・ダイ」でハリウッド・デビューを果たします。1999年にはレスリー・チャンの「もういちど逢いたくて 星月童話」では日本人女優、常盤貴子とも共演しています。
 2000年にはアカデミー外国語映画賞受賞作に出演し、「グリーン・デスティニー」では見事な剣技アクションを披露しています。
<ヴィヴィアン・ウー>
 ヴィヴィアン・ウーVivian Wuは、1966年2月5日中国本土上海に生まれています。映画デビューは、ハリウッドの超大作「ラスト・エンペラー」(1987年)。その中で彼女はジョン・ローン演じる溥儀の第二夫人を演じていきなり有名女優の仲間入りを果たします。その後も中国外の作品中心に活躍。1990年柳町光男監督作「チャイナ・シャドー」では再びジョン・ローンと共演。日本との関係も深く、「ピーター・グリーナウェイの枕草子」(1996年)では日本人女性を演じています。

「花様年華」(2000年)
 彼女は久しぶりにウォン・カーウァイ監督の作品に出演します。隣り合う夫婦の間に生まれた禁断の恋を描いた名作「花様年華」です。この作品は、2013年にイギリスの映画協会が世界の映画監督にアンケート調査を行って作ったオールタイムベスト100で67位にランクインしています。
 ウォン・カーウァイのスタイリッシュな映像が、この作品では究極の映像美に高められ、他の映画にはない独特の世界観を生み出すに至っています。
 トニー・レオンはこの作品でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞。撮影のリー・ビンビン、クリストファー・ドイルは、全米批評家協会、ニューヨーク批評家協会撮影賞を受賞。さらに前記の全米批評家協会、ニューヨーク批評家協会でこの作品は外国語映画賞も受賞。フランスのセザール賞の外国語映画賞も受賞しています。
<あらすじ>
 マギー・チャン演じるチャン夫人と隣の部屋に住むチャウ(トニー・レオン)。狭いアパートで知り合いになった二人は、ある時、お互いの妻と夫が不倫関係にあることを知ります。そして、二人は急速に接近し愛し合うようになります。ただし、心は通じ合っていても、二人は決して不倫関係になろうとはしませんでした。逆にお互いの熱い恋ごころを内に秘めたまま歳月を重ねて行きます。
 「最高の愛」とは、二人が離れたままでいることだと言ったのは、たしかアンディ・ウォーホルだったでしょうか。この作品は、そんなストイック過ぎる男女の恋を描きながら、セクシーで美しく哀しい恋愛ドラマとして見ものをひきつけて話しません。
 トニー・レオンの男っぷりも素敵ですが、常にタイトなチャイナ・ドレスを身につけている大人の女性チャン夫人を演じた彼女の演技は、かつてジャッキー・チェンの恋人役だったアイドルだったとは思えない大人の色気たっぷりです。映像、音楽、演技・・・どれをとっても一級品の名作です。
(監)(製)(脚)ウォン・カーウァイ
(撮)クリストファー・ドイル、リー・ビンビン
(出)トニー・レオン、マギー・チャン、スー・ピンラン、レベッカ・パン、ライ・チン

「花様的年華」チョウ・シアン(映画のテーマ曲ともいえるヒット曲)
花のように魅惑的な年
月のように輝く心
水のように清い悟り
楽しい生活
深く愛しあう二人
満ち足りた家庭
でも急に闇に迷い込み
つらい日々になる
愛する故郷よ もう一度

2003年、彼女はチャン・イーモウ監督の歴史アクション大作「HERO」に出演。タイトルが英語になっているようにこの作品は、香港・中国合作映画ですが海外市場を意識して作られ世界中で大ヒットを記録しています。この作品で、彼女はアクションも出来る女優であることを久々に証明。美しさと演技力、そこにアクションまで加わる才能を世界中アピール、まさに怖いモノなしの女優です。

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