1979年

- ウディ・アレン Woody Allen -

<授賞式での意外な出来事>
 2002年アカデミー賞の授賞式で最も観客を驚かせた出来事は何だったと思いますか?
 史上初の黒人俳優による主演男優、主演女優賞の独占(ハル・ベリーとデンゼル・ワシントン)も確かに驚きではありました。しかし、それ以上に僕にとって驚きだったのは、ウディ・アレンの登場でした。今まで、何度と無くアカデミー賞の候補になりながら、彼は一度として授賞式に出席したことはありませんでした。(「アニー・ホール」では、最優秀作品賞を受賞しているにも関わらずです)その代わり、彼はニューヨーク市内のジャズ・クラブで自らクラリネットを演奏しているというのが恒例でした。そんな式典嫌いの彼が極秘のうちに出演を承諾し、舞台に突然現れたのですから、会場内が驚きに包まれたのは当然です。まして、今回も授賞式会場は、彼が大嫌いな西海岸のロスアンジェルスです。
 彼が登場したのは、授賞式の中の特別プログラム、ニューヨークを舞台にした懐かしの作品集を紹介するためでした。もちろん、それは9月11日の同時多発テロ事件によって無惨な姿になったニューヨーク市と市民に捧げられた企画でした。だからこそ、誰よりもニューヨークを愛するウディーは、出演依頼を断れなかったのです。これが、彼にとって最初で最後の出席になるかも知れません。(実際、彼はこのコーナーが終わるとすぐ帰宅したということです)

<ニューヨークへ愛をこめて>
 そんな「ミスター・ニューヨーク」ウディ・アレンの最高傑作とも言える作品が「マンハッタン」です。そして、この映画は彼にとっての傑作であると同時に、数ある「I Love NY」映画の中でも、その代表作に数えられる作品といってよいでしょう。
 オープニングの「ラプソディー・イン・ブルー」と白黒映像のノスタルジックなマンハッタンの風景、もうこれだけで傑作になってしまっていました。その後のストーリーが無くても良いくらい、街自体の姿がストーリーを語っているように見えるのです!その他にも、ジョージ・ガーシュインの曲は、「誰かが私を見つめてる」、「But Not For Me」、「わが恋はここに」などが使われ、映像とともにストーリーを雄弁に語っています。
 おまけにこの白黒映像が、カラー・フィルムから色を抜いたという特殊な手法で、それがまた実にノスタルジックな雰囲気にぴったりでした。

「ニューヨークには白黒画面とジョージ・ガーシュインの音がふさわしい」
ウディ・アレン

<ウディの到達点のひとつ>
 「アニー・ホール」(1977年)、「インテリア」(1978年)、そしてこの作品ときて、ウディ・アレンは完全に一流監督の仲間入りを果たしたと言えるだろう。ある意味では、彼のこの後の作品は、どれも上記3作品の焼き直しと言えなくもない。もちろん、その金太郎飴的な作品群は、どれもしっかりと水準を保っていて、見るに値する作品ばかりだ。(もちろん中には、「ハンナとその姉妹」のように傑作もあります)それは、日本のテレビ界なら久世光彦の向田邦子シリーズであり、ロック界ならヴァン・モリソンのの作品群を思わせます。

<ウディ・アレン小伝>
 ウディ・アレンは、1935年12月1日ニューヨークのブルックリンに生まれた生粋のニューヨーカーだ。そして、この地域を中心にアメリカの経済、文化を支えている典型的なユダヤ系の血筋で、そのことは彼の作品において、非常に重要な意味を持っている。
 ギャグの投稿家からスタートし、スタンダップ・コメディアン(お笑い芸人)を経て、1965年映画「何かいいことないか子猫チャン」で映画デビューを果たした。(いきなり脚本と主演)その後、1969年の「泥棒野郎」からは監督を務めるようになる。初めはメチャメチャなドタバタ・コメディーばかりだったが、「ボギー、俺も男だ」あたりからは、質の高いコメディー映画の監督として活躍するようになり、「アニー・ホール」でアカデミー監督賞、作品賞を獲得、一躍アメリカを代表する監督の仲間入りをした。
 アメリカの作家ではあるが、本国アメリカで彼を評価しているのはユダヤ系のニューヨーカーだけだという説もある。但し、本人もそれで満足かも知れないと思えるほど、自分がユダヤ系であることにこだわっている。ユダヤ系でなければわからないようなエスニック・ジョークやマニアックな芸術の話題など、我々日本人には関わりがなさそうなことばかりの内容にもかかわらず、何故か日本人のファンも多い。やはりユダヤ系と日本人は、どこか似ている部分があるのだろうか?

「マンハッタン Manhattan」 1979年公開
(監)ウディ・アレン Woody Allen
(製作)チャールズ・H・ジョフィ Charles H. Joffe、ジャック・ロリンズ Jack Rollins
(製作総指揮)ロバート・グリーンハット Robert Greenhut
(脚)ウディ・アレン、マーシャル・ブリックマン Marshall Brickman
(撮)ゴードン・ウィリス Gordon Willis
(音)ディック・ハイマン Dick Hyman
(出)ウディ・アレン Woody Allen
   ダイアン・キートン Dian Keaton
   マニエル・ヘミングウェイ Maniel Hemingway
   マイケル・マーフィー Maichael Murphy
   メリル・ストリープ Maryl Streep

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