ロック界のカリスマを撮り続けた伝説のカメラマン


「写真家 ミック・ロック ロック・レジェンドの創造主」
SHOT! The Psycho-Spiritual Manta of Rock

- ミック・ロック Mick Rock -
<元祖ビジュアル系アーティスト>
 デヴィッド・ボウイやクイーン、T-レックスなどビジュアル系の元祖ともいえるロック・ミュージシャンたちが活躍した1970年代。彼らのカリスマ性は当初はごく一部の女性ファンだけが認める存在でした。しかし、それが「グラム・ロック」と名づけられ、そのビジュアルが音楽と共に世界中に拡散すると、ファン層は一気に広がりました。当時は女性はビジュアルから入り、僕のような男性ファンはその音楽性から入って行った気がします。(当時は、ビートルズのメンバーも含め、ロングヘア―でラフな衣装がロックの定番スタイルでしたから)
 考えてみると、ロック界におけるブームを多くは、女性ファンによって支えられてきました。ビートルズもストーンズも、女性ファンによってブームが生み出され、クイーンの人気も日本の女性ファンから始まったと言われます。そんなビジュアル重視のスタイルが、衣装とヘアースタイルだけでなく、それまでにないメイクやアーティストの普段のファッション・スタイルにまで及ぶようになったのは、ビートルズを除けば「グラム・ロック」から始まったと言えると思います。

<グラム・ファッションの発信者>
 当初、ビジュアルにこだわるアーティストたちの存在はライブ会場を訪れる観客だけにアピールする限られたものでした。現在と違いインスタもネット情報もなくロックの雑誌も生まれたばかりでした。彼らが大衆にアピールする方法は、ほとんどなかったのです。そんな中、カメラを持って彼らのビジュアルを撮影するカメラマンが現れます。ロックが好きで、彼らのライフ・スタイルに憧れ、お金目的ではない熱烈なファンとしてのカメラマンの登場でした。
 ミック・ロックは、本名をミカエル・デヴィッド・ロック Michael David Rock といい、名前からして「ロック」の申し子でした。ゲイでもあった彼は、グラム・ロックのファッションや後のパンク・ファッションに魅せられ、イギリスに集中していた彼らの撮影を始めます。そんな彼の存在をいち早く利用してのは、サイケで性超越的で地球離れしたファッションで世界中を驚かすことになるデヴィッド・ボウイでした。彼はミックを自分専属のカメラマンとして、自分のステージ・ファッションだけでなくプライベートの写真までも撮らせ始めます。こうして生まれたボウイの密着写真は、アーティストとしてのボウイだけでなく人間としてのボウイのカリスマ性を表現する最高の発表媒体として機能し、グラム・ロック・ブームの火付け役の一つとなります。中でも彼がステージ脇から撮影した一枚、ミック・ロンソンの弾くギターの弦を咥えたボウイのセクシー過ぎる写真は、大きな話題となり歴史に残る一枚となりました。
 重要なのは彼がこうして撮り始めた写真は、単にグラム・ファッションに憧れるファンの写真ではなく、ボウイらのアーティストたちが発散していたアーティストとしての魅力をとらえるために撮られていたことです。

「僕が撮りたいのは、内なる魂じゃない。
 発散されるオーラだ」

ミック・ロック

 このドキュメンタリー映画では、ミック・ロック自身のインタビューと共に時代をさかのぼり、彼の写真を通して70年代から90年代にかかてのロックの歴史を一気に振り返ることができます。

<アーティストに密着した作品>
 彼が最初に密着したのは、プログレッシブ・ロックのお御所となったピンク・フロイドのメンバーだったシド・バレットでした。彼のソロ・アルバム「帽子が笑う・・・不気味に」(1969年)のアルバム・ジャケット写真は彼が撮影したものです。
 傾いた部屋の格子模様の床とシドの不気味で印象的な写真は、ピンク・フロイドを脱退し、精神的にも崩壊しかかっていた彼のイメージをそのままフィルムに焼き付けた作品として有名です。当時、ミックはシドと共に薬物でトリップ体験を繰り返す仲間の一人で、だからこそ、撮れた作品だったと言えます。
 ロンドンでの知名度が上がってきたミックは、大西洋の向こう側で活躍するヴェルヴェットアンダーグラウンドの中心メンバーであるルー・リードから、ニューヨークへこないかと誘われます。こうして彼は仕事場をアメリカ、ニューヨークにまで広げることになりました。
 1972年、ソロ活動を開始したばかりのルー・リードに密着した彼は、これも有名な傑作アルバム「トランスフォーマー」のジャケット写真を撮影し、その後、イギー・ポップの傑作アルバム「ロー・パワー」(1973年)の彼が担当しています。
 ということで、この映画の中に登場するアーティストたちを登場するおおよその順番にざっと紹介してみます!
<被写体たち>
ブライアン・フェリー(ロキシー・ミュージック)
ロッド・スチュワート(フェイセス)
ミック・ジャガー(ローリングストーンズ
マリアンヌ・フェイスフル
エルトン・ジョン
モット・ザ・フープル
ティム・カリー他(「ロッキー・ホラー・ショー」より)
ジョン・ケイル、ニコ(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)
パティ・ラベル
ブライアン・イーノ
シン・リジィ
トッド・ラングレン
ジェリー・ガルシア(グレイトフル・デッド
ボブ・マーリー
ティナ・ターナー
ジョー・コッカー
ストローブス
ビートルズ
トルーマン・カポーティ

クイーン
 クイーンの有名な黒い背景に顔だけが浮き上がるジャケット写真(アルバム「クイーンⅡ」)もミックの作品です。この写真は有名な女優マレーネ・ディートリッヒのポートレイト写真が元になっているようです。(映画「上海特急」のワンシーンでもあります)
アンディ・ウォーホル
 ニューヨークで活躍していたポップアートの象徴であり、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの生みの親でもあったアンディ・ウォーホルや作家のトルーマン・カポーティの写真も彼は撮っています。

<薬物との付き合い>
 この時期、彼はこうした様々なジャンルの人々との関係と同時に麻薬ディーラーたちとも付き合いが深くなっていました。最大7人の売人との付き合いがあり、彼の写真のファンだった売人には写真1枚と3.5gのコカインを交換してもらっていたとのこと。当時のアーティストにとって、薬物は切っても切れない関係でした。それだけに彼の薬物使用は必然だったとも言えますが、そのおかげで被写体に密着できたことは確かでした。
 ただし、薬物使用の影響は彼の健康を害し、そのおかげで彼は命を落としかけることになります。(映画はその危機的状況から始まることになります)

<パンクの時代へ>
 1975年以降、彼の被写体は「パンク・ロック」や「ニューウェーブ」のアーティストたちへと代わって行きます。ニューヨークのクラブ、CBGB'sは特に撮影の中心になっていたようです。
ラモーンズ
ジョニー・ロットン(セックス・ピストルズ
マルコム・マクラーレン
デボラ・ハリー(ブロンディ)
トーキング・ヘッズ(ポートレイト写真のイメージはSF映画「光る眼」のポスターが元でした!)
パティ・スミス
ジョーン・ジェット

ダリル・ホール&ジョン・オーツ
カーリー・サイモン
モトリー・クルー
ダフトパンク
スヌープ・ドギー・ドッグ

 彼が写真として、アーティストたちの人生を切り取ることで、彼らのカリスマ的な生き様が歴史に記憶されることになりました。ある意味、彼こそが彼らの存在を生み出したと言えるかもしれません。彼のようなロック大好き人間でなければ、その記録を残すことはできず、その魅力が世界にアピールするチャンスもなかったのかもしれないのです。

「アーティストは存在しない。それは人々の想像の産物なのだ」
デヴィッド・ボウイ

 彼が薬物の影響で命の危険に陥った時、資産を失っていた彼の治療費を払ってくれたのは、かつて彼はメジャーにしたアーティストたちだったといいます。さらに彼が薬物中毒から立ち直るために行ったこと、それもまたカメラでした。カメラを手にそれぞれの時代のアーティストたちのポートレイトを撮り続けることで、彼は精神は保たれ、なんとかそこから立ち直う事ができたのです。
「正しい脅迫観念があるかどうかだと思う。
 それが病的な強迫観念でも魅了される能力を持たなければならないんだ。
 僕からすれば誰もが魅力的だ。
 僕はバナナを手にしたサルだ。つまりカメラがあるということだ」

ミック・ロック

<使用されている曲>
曲名  演奏  作曲  コメント 
「Wolf Like Me」  TV On The Radio Bahatunde Adeloimpe アルバム「Return to Cookie Mountain」(2006年)収録
NYブルックリンのインディ・ロック・バンドのヒット曲 
「I Wanna Be Your Dog」  ストゥージズ The Stooges  Dave Alexander,Iggy Pop  デビューアルバム「ストゥージズ」(1969年)収録
イギー・ポップがヴォーカルの元祖パンク・バンド 
「Astronomy Domine」  ピンク・フロイド Pink Floyd シド・バレット Syd Barrett アルバム「夜明けの口笛吹き」(1967年)収録 
「Love You」  シド・バレット Syd Barrett  Syd Barrett  初ソロ・アルバム「帽子が笑う・・・不気味に」(1970年) 
「Moonage Daydream」  デヴィッド・ボウィ David Bowie  David Bowie  「ジギー・スターダスト」(1972年)収録のシングル 
「The Jean Genie」  デヴィッド・ボウィ David Bowie  David Bowie  「アラジン・セイン」(1973年)収録のUK2位ヒット 
「Life On Mars ?」  デヴィッド・ボウィ David Bowie David Bowie 「ハンキー・ドリー」(1971年)収録 
「White Light・White Heat」
(ライブ) 
デヴィッド・ボウィ David Bowie  ルー・リード Lou Reed オリジナルはヴェルヴェット・アンダーグラウンド
1967年の曲 
「I'm Waiting For The Man」  ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
The Velvet Underground 
Lou Reed  デヴュー・アルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」
(1967年)収録の名曲 
「1970」  ストゥージズ The Stooges  Don Asheton,Scott Asheton
Iggy Pop,Dave Alexander
アルバム「Fun House」(1970年)収録 
「William Tell Overture」  Marco Beneunto  Gioachino Rossin 「ウイリアム・テル序曲」 
「Amazona」 ロキシー・ミュージック
Roxy Music 
Bryan Ferry
Fhil Manzanera
3作目のアルバム「Stranded」(1973年)収録 
「Procession」  クイーン Queen Bryan May 2作目のアルバム「クイーンⅡ」(1974年)収録 
「In The Lap of the Gods」  クイーン Queen Freddie Mercury 3作目のアルバム「Sheer Heart Attack」(1974年)収録
「Some of them are old」  ブライアン・イーノ Brian Eno  Brian Eno  アルバム「Here Come the Warm Jets」(1974年)収録
「Success」  イギー・ポップ Iggy Pop  David Bowie,Ricky Gardiner他 名作アルバム「Lust For Life」(1977年)収録 
「Dirt」  ルー・リード Lou Reed Lou Reed 名作アルバム「Street Hassle」(1978年)収録 
「Charley's Girl」  ルー・リード Lou Reed  Lou Reed  アルバム「Coney Island Baby」(1975年)収録 
「Heroin」  ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
The Velvet Underground  
Lou Reed  デヴュー・アルバム「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」
(1967年)収録の名曲 
「Pinhead」  ラモーンズ Ramones Joey Ramone, Dee Dee Ramone 2作目のアルバム「Leave Home」収録 
「Pretty Vacant」  セックス・ピストルズ
Sex Pistols 
Paul Thims Cook
John Lydon他
「Never Mind The Bollocks, Here's The Sex Pistols」
デビュー・アルバム収録
「Cantions Lip」 ブロンディ Blondie Chris Stein,Ronnie Toast アルバム「Parallel Lines」収録 
「I am a photograph」  アマンダ・リア Amanda Lear  Anthon Monn フランスのシンガーによる同名アルバム(1977年)収録 
「Company of Angels」  Paul Mottram  Paul Mottram 映画、テレビなどの作曲家 
「Hall of the Mountain King」 Savatage  Christopher Oliva,John Oliva他  1983年年にデビューしたフロリダ出身のヘビメタ・バンド
「Insane」  Paul "Ace" Frehley  Paul Frehley,Gene Moore  アルバム「Second Sighting」(1988年)収録
Kiss創設時のリード・ギタリスト
「Snakeskin」  Deerhunter  Bradford Cox  「Fading Frontier」(2015年)収録
アメリカ、アトランタ出身のアートロック・バンド 
「Date With The Night」  ヤー・ヤー・ヤーズ
Yeah Yeah Yeahs 
Brian Chase Karen Orzolek他  アメリカNYのオルタナ・ファンク・ロック・バンド
初アルバム「Fever To Tell」(2003年)からのシングル 

「写真家 ミック・ロック ロック・レジェンドの創造主」
SHOT! The Psycho-Spiritual Manta of Rock

(監)バーナビー・クレイ
(製)モニカ・ハンプトン、マリサ・ポリビーノ、ジム・カリザネキ、ダニー・ガバイ
(製総)エディ・モレッティ、シェイン・スミス、ケイト・コーエン他
(撮)マックス・ゴールドマン
(編)ドリュー・レニコラ、マイケル・ダート・ワーズワース
(音)スティーヴン・ドローズ
(音監)ランドール・ポスター
(出)ミック・ロック

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