ミュージカルの歴史
<PART3>
1970年代~1990年代
 
<1970年代の代表作>
 1970年代、映画や音楽の世界とは異なりミュージカルの世界では、ベトナム戦争や人種差別問題などを扱う社会派の作品よりも、保守化する時代の流れを反映する作品がヒットしています。キリスト教関連の「ジーザス・クライスト・スーパースター」、「ゴッドスペル」。回顧的な青春讃歌「グリース」はその流れの作品でした。それはある意味ブロードウェイが新たな作品を生み出せなくなっていたことを示していたと言えそうです。
 「エヴィータ」のヒット以降は、ロンドン製ミュージカルのブームとなり、ブロードウェイに代わり、新たな作品を次々と生み出すことになります。


「カンパニー Company」(1970年705公演)
 (作曲・作詞)スティーブンソンドハイム(台)ジョージ・ファース(演)ハロルド・プリンス
 ニューヨークの独身サラリーマンの恋愛物語。
 「ビーイング・アライブ」「サイド・バイ・サイド」などがヒット。

「アプローズ Applause」(1970年896公演)
 (作曲)チャールズ・ストラウス(作詞)リー・アダムス(脚)ベティ・カムデン&アドルフ・グリーン(演)ロン・フィールド
 大女優とその付き人が俳優としての成功を目指して争う野望と裏切りに悲劇。
 ジョセフ・L・マンキウィッツ監督ベティ・デイヴィス主演の映画「イブの総て」(1950年)をミュージカル化した作品。

「ジーザス・クライスト・スーパー・スター Jesus Christ Superstar」(1971年米711公演、1972年英3358公演)
 (作曲)アンドリュー・ロイド=ウェバー(作詞)ティム・ライス
 イエス・キリスト最後の一週間をロック・オペラ化した作品。
 「ショウ・ボート」で用いられたライト・モチーフの手法を復権させた作品とも言われます。
 「私はイエスがわからない」「スーパー・スター」などがヒット。
 イボンヌ・エリマンがポップチャートでも人気となりました。
 1973年、ノーマン・ジェイソン監督、テッド・ニーリー、イボンヌ・エリマン主演で映画化。「ジーザス・クライスト・スーパー・スター」

「ゴッドスペル Godspell」(1971年オフ・ブロードウェイでスタート、2651公演)
 (作曲・作詞)スティーブン・シュワルツ(演・台)ジョン=マイケル・テベラック
 現代のニューヨークが舞台。聖書の「マタイ伝」を基にイエス・キリストの物語をミュージカル化。
 オフ・ブロードウェイ作品として大ヒット。
 1973年、デヴィッド・グリーン監督、ヴィクター・ガーバー、デヴィッド・ハスケル主演で映画化。「ゴッドスペル」
 映画の公開後、ブロードウェイでの公演開始。

「グリース Grease」(1972年3388公演)
 (作曲・作詞・台)ジム・ジェイコブス&ウォレン・ケイシー(演)トム・ムーア
 1950年代アメリカの青春ドラマをロックン・ロール・ミュージカルとして作品化。
 公演数で当時の記録を塗り替える大ヒットとなった。
 1978年、ランダル・クレイザー監督、ジョン・トラボルタ、オリビア・ニュートンジョン主演で映画化。「グリース」
  映画用にバリー・ギブが作曲した「愛のデュエット」が大ヒット。

「リトル・ナイト・ミュージック A Little Night Music」(1973年601公演)
 (作曲・作詞)スティーブン・ソンドハイム(台)ヒュー・ホイーラー(演)ハロルド・プリンス
 原作は、スウェーデン映画界の巨匠イングマール・ベルイマンの「夏の夜は三たび微笑む」
 真夏の白夜を背景に上流階級の人々の恋愛ドラマ。
 「センド・イン・ザ・クラウンズ」「ナイトワルツ」など
 1977年、ハロルド・プリンス監督、エリザベス・テイラー主演で映画化。「リトル・ナイト・ミュージック」

「シカゴ Chicago」(1975年936公演)
 (作曲)ジョン・カンダー(作詞)フレッド・エッブ(演・振付)ボブ・フォッシー(台)フレッド・エブ
 原作は、モーリン・ダラス・ワトキンズの同名戯曲。
 1920年代後半、禁酒法時代のシカゴが舞台。
 コーラスガール、犯罪者、弁護士らによる犯罪ドラマ。
 オープニング曲「オール・ザット・ジャズ」がヒット。
 1996年にリヴァイヴァル版が8000公演を超える大ヒットとなった。
 2002年、ロブ・マーシャル監督、レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア主演で映画化。「シカゴ」
 映画版はアカデミー賞作品賞などを獲得し、ここからハリウッドでミュージカルの映画化ブームが始まりました。
「シカゴ CHICAGO」 2002年
(監)ロブ・マーシェル(米)
(脚)ビル・コンドン(撮)ディオン・ビーブ(編)マーティン・ウォルシュ(音)ダニー・エルフマン
(出)レニー・ゼルウィガー、キャサリン=ゼタ・ジョーンズ、リチャード・ギア 
禁酒法時代のシカゴを舞台にしたショービズ物語
アカデミー作品、編集、助演女優、美術、衣装デザイン、音響賞 

「コーラス・ライン A Chorus Line」(1975年6137公演)
 (作曲)マーヴィン・ハムリッシュ(作詞)エドワード・クリーバン(演・振付)マイケル・ベネット(台)ジェームズ・カークウッド、ニコラス・ダンテ
 アンサンブル・ダンサーのオーディションをミュージカル化した作品。
 「ワン」が大ヒットし、6137公演は当時のトップとなる大ヒットでした。
 1985年、リチャード・アッテンボロー監督、マイケル・ダグラス、アリソン・リード主演で映画化。「コーラスライン」

「ウィズ The Wiz」(1975年1672公演)
 (作曲・作詞)チャーリー・スモールズ(台)ウィリアム・F・ブラウン(演)ジェフリー・ホルダー
 L・フランク・ボームの童話「オズの魔法使い」を黒人によるミュージカルとして作品化。
 1978年、シドニー・ルメット監督、ダイアナ・ロス、マイケル・ジャクソン主演で映画化。「ウィズ」

「アニー Annie」(1977年2377公演)
 (作曲)チャールズ・ストラウス(作詞・演)マーティン・チャーニン(台)トマス・ミーハン
 ハロルド・ブレイの漫画「小さな孤児アニー」をミュージカル化した作品。
 1933年大恐慌時代、冬のニューヨークを舞台に孤児院で暮らす11歳の少女アニーの成長物語。
 1982年、2014年に映画化。「アニー」

「スウィニー・トッド Sweeney Todd」(1979年557公演)
 (台)ヒュー・ホイーラー(演)ハロルド・プリンス
 原作は、クリストファー・ボンドの同名戯曲。
 産業革命期のロンドンを舞台にしたブラック・ユーモア。
 床屋が復讐から次々に髭剃りナイフで客の喉を切ってゆく連続殺人犯が主人公のホラー作品。
 2007年、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演で映画化。「スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」

「エヴィータ Evita」(英国1978年3176公演、米国1979年1567公演)
 (作曲)アンドリュー・ロイド=ウェバー(作詞)ティム・ライス(演)ハロルド・プリンス
 アルゼンチン大統領夫人エヴァ・ペロンの伝記をミュージカル化。
 「アルゼンチンよ、泣かないで」がヒット。
 1996年、アラン・パーカー監督、マドンナ、アントニオ・バンデラス主演で映画化。「エヴィータ」
「エビータ」 EVITA 1996年
(監)(製)(脚)アラン・パーカー
(製)ロバート・スティグウッド、アンドリュー・G・バイナ(脚)オリバー・ストーン(撮)ダリウス・コンジ(編)ジェリー・ハンプリング(詞)ティム・ライス(曲)アンドリュー・ロイド・ウェバー
(出)マドンナ、アントニオ・バンデラス、ジョナサン・プライス、ジミー・ネイル、ヴィクトリア・サス、ジュリアン・リットマン
<あるすじ>
愛人の娘として生まれ、父親の葬儀にも出席を許されなかった少女。成功を夢見た彼女はタンゴの歌手の愛人となりサンチアゴへ。
次々と男を変えながら、女優としてのチャンスを得た彼女は、有名人の仲間入りを果たし、軍部の大物ぺロンと出会います。
戦後の経済の低迷から抜け出せず、社会主義運動が盛り上がる中、ペロンは貧しき者の人気を集め、大統領選挙に勝利。
彼女はファースト・レディーとして国民の人気を集め、海外でもその活躍が有名になります。
しかし、ペロンの政治は決して貧しき者の見方ではないことが次第に明らかになって行きます。 
マドンナ入魂の演技・歌唱でした。ストーリーの展開役だったバンデラスも素晴らしかった。 
歴史的事実が興味深いため、もう少し歴史的部分を知りたかったし、ミュージカルでなくても良かった気すらします。
とはいえ、ミュージカルとしての完成度はさすがに高く音楽は素晴らしい!
演出もさすがはアラン・パーカー。画面の質も高くリアリズムは徹底されてます。脚本はオリバー・ストーンとは!

<ロンドン・ミュージカル黄金時代のはじまり>
 「エヴィータ」は、ロンドン・ミュージカルの黄金期の先駆となった作品で1980年のトニー賞を外国作品として初めて受賞しました。
 1980年代にはいると、ロンドン発のミュージカルが次々にブロードウェイに進出するようになります。

<1980年代の代表作>
 1980年代に入り、いよいよブロードウェイから大物の作曲・作詞家が消え、オリジナルのヒット作が生まれなくなります。
 過去作品のリメイク、音楽界の内幕、ヨーロッパ文学、ヨーロッパ映画、オフ・ブロードウェイ、英国製など、様々な方面からヒット作が生み出されることになります。

「42nd Street」(1980年3486公演)
 (作曲)ハリー・ウォレン(作詞)アル・デユービン(台)マイケル・スチュワート・マーク・ブランデル(演・振付)ガワー・チャンピオン
 原作は、ブラッドフォード・ロペスの同名小説。1933年にミュージカル映画化されたものを舞台化。
 1933年大恐慌下のニューヨーク、新作ミュージカルの製作現場におけるオーディションや恋愛などを描いた作品。

「ドリーム・ガールズ Dream Girls」(1981年1521公演)
 (作曲)ヘンリー・クーガー(作詞・台)トム・アイエン(演・振付)マイケル・ベネット
 モータウンのヴォーカルトリオ「ザ・シュープリームス」でのリード・ヴォーカルの交代劇を中心に1962年ショービズ界の裏側を描いた作品。
 メンバー内の恋愛や主導権争い、成功と裏切りの物語が歌と共に描かれます。
 「私は決して退場しない」など
 2006年、ビル・コンドン監督、ジェイミー・フォックス、ビヨンセ・ノウルズ主演で映画化。「ドリーム・ガールズ」
 新人だったジェニファー・ハドソンがこの作品でブレイク。アカデミー助演女優賞を受賞しました。
 この作品は日本公演を見ました!
「ドリーム・ガールズ Dreamgirls」 2006年
(監)(脚)ビル・コンドン(米)
(原)(詞)トム・アイン(撮)トビアス・シュリッスラー(衣)シャレン・デイヴィス(音)ヘンリー・クリーガー
(出)ジェイミー・フォックス、ビヨンセ・ノウルズ、ジェニファー・ハドソン
モータウンのアーティストたちをモデルにしたソウル界の伝説 

「キャッツ Cats」英国1981年8949公演、米国1982年7485公演)
 (作曲・作詞)アンドリュー・ロイド=ウェバー(演)トレヴァー・ナン(振付)ジリアン・リン
 原作は、T・S・エリオットの詩集「ポッサムおじさんの猫とつき合う方法」(1939年)
 「メモリー」が世界的にヒット。
 2019年、トム・フーパー監督、ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ主演で映画化。「キャッツ」

「ナイン NINE」(1982年729公演)
 (作曲・作詞)モーリー・イエストン(演・振付)トミー・チューン(台)アーサー・コピット、マリオ・フラッティー
 フェデリコ・フェリーニの名作「81/2」(1963年)のミュージカル化。
 1960年代映画界の巨匠となった監督グイドとその周辺に集まる女性たちを中心に創作の悩みと人生の苦悩を描いた作品。
 2009年、ロブ・マーシャル監督、ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス主演で映画化。「NINE」
「NINE」 2009年
(監)ロブ・マーシャル(米)
(製)ハーヴェイ・ワインシュタイン(脚)アンソニー・ミンゲラ(撮)ディオン・ビーブ
(出)ダニエル・デイ・ルイス、マリオン・コティアール、ペネロペ・クルス、ファーギーニコール・キッドマン
フェデリコ・フェリーニの名作「81/2」を下敷きにしたミュージカル 

「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ Little Shop of Horrors」(1982年)
 (作曲)アラン・メンケン(作詞・台・演)ハワード・シュマン
 オフ・ブロードウェイ作品で2209回公演のロングラン・ヒット。
 2003年にブロードウェイで再演。
 1960年、ロジャー・コーマン監督で映画化。「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」
 1986年、フランク・オズ監督が、リック・モラニス主演で再映画化。「リトルショップ・オブ・ホラーズ」

「ラ・カージュ・オ・フォール La Cage aux Folles」(1983年1761年)
 (作曲・作詞)ジェリー・ハーマン(台)ハーヴェイ・ファイアスティン(演)アーサー・ローレンツ
 原作は、フランスの作家、ジャン・ポワレの同名戯曲「Mr.レディMrマダム.」
 1978年、エドゥアール・モリナロが監督し映画化され大ヒットしました。(ウーゴ・トニャッティ、ミシェル・セロ-主演)
 ゲイのカップルを主役とした作品として初のヒットなったブロードウェイ作品。
 南仏のサントロペでゲイ・ナイトクラブを経営するジョルジュと店の看板スターの女装芸人アルバンは、20年同居。
 ジョルジュの子供ジャン・ミシェルを二人で育ててきました。ところが、息子が突如結婚宣言。
 恋人の両親、議員夫妻が家に来ることになり大騒ぎとなります。
 「ありのままの私」「ラ・カージュ・オ・フォール」

「サンデイ・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ Sunday in the Park with George」(1984年604公演)
 (作曲・作詞)スティーブン・ソンドハイム(台・演)ジェイムズ・ラパイン
 <1幕>1884年セーヌ川の中州グランジャッド島で恋人のドットを描く画家スーラの物語。
 <2幕>1984年ニューヨークに住むスーラの曾孫の彫刻家ジョージが、グランジャッド島を訪れる物語。
 ダンスなしの異色のミュージカル。ピュリッツアー賞受賞。

「レ・ミゼラブル Les Miserables」英国1985年、米国1987年6680公演)
 (作曲)クロード=ミシェル・シェーンベルク(作詞・台)アラン・ブーブリル、ジャン・マルク・ナテル
 (演)トレヴァー・ナン、ジョン・ケアード(ロイヤル・シェークスピア・カンパニー)(美)ジョン・ネイピア
 19世紀のパリを舞台にしたヴィクトル・ユゴーの同名小説のミュージカル化。
 パンを盗んだことがきっかけで19年間投獄されたジャン・ヴァルジャンと彼をつけ狙う警部ジャヴェール、女工ファンテーヌの物語。
 「かなわぬ夢」「オン・マイ・オウン」「私は誰?」がヒット。
 2012年、トム・フーパー監督、ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、ラッセル・クロウ主演で映画化。「レ・ミゼラブル」
「レミゼラブル LES MISERABLES」 2012年
(監)トム・フーパー(米)
(原)ビクトル・ユゴー(原)(脚)アラン・ブーブリ、クロード=ミシェル・シェーンベルク
(脚)ウィリアム・ニコルソン(撮)ダニー・コーエン
(出)ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、ハーバード・クレッツマー
ハーバード・クレッツマーがアカデミー助演女優賞
確かに素晴らしい映画です。 

「オペラ座の怪人 The Phantom of the Opera」英国1986年、米国1988年11700公演+α)
 (作曲)アンドリュー・ロイド=ウェバー(作詞・台)チャールズ・ハート、リチャード・スティルゴー(演)ハロルド・プリンス
 (振付)ジリアン・リン(美・衣)マリア・ビョルンソン
 原作は、ガストン・ルルーの同名小説(1911年)
 パリのオペラ座の地下に住む醜い怪人と歌姫クリスティーヌとの禁断の恋をミュージカル化。
 「オペラ座の怪人」「Music of the Night」などがヒット。
 2004年、ジョエル・シューマッカー監督、ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム主演で映画化。「オペラ座の怪人」

「イン・トゥ・ザ・ウッズ Tnto the Woods」(1987年)
 (作曲・作詞)スティーブン・ソンドハイム(台・演)ジェイムズ・ラパイン
 「ジャックと豆の木」「シンデレラ」「赤ずきん」などのおとぎ話をもとに作られたミュージカル。
 「イン・トゥ・ザ・ウッズ」がヒット。
 2014年、ロブ・マーシャル監督、メリル・ストリーブ、ジョニー・デップ、エミリー・ブラント主演で映画化。「イントゥ・ザ・ウッズ」

「ミス・サイゴン Miss Saigon」英国1989年、米国1991年4092公演)
 (作曲・作詞・台)クロード=ミシェル・シェ-ンベルク、アラン・ブーブリル(演)ニコラス・ハイトナー(美)ジョン・ネイピア
 原作は、プッチーニのオペラ「蝶々夫人」、そのベトナム戦争版。
 1975年のベトナム戦争終結直前のサイゴンが舞台。
 村も両親も失った少女キムは生きるため売春婦となりますが、アメリカ兵クリスと恋に落ちます。
 レア・サロン(フィリピン人女優)が、アジア人初のトニー賞主演女優賞受賞。
 「命をあげよう」「ブイドイ」が有名。

「グランド・ホテル Grand Hotel」(1989年1017公演)
 (作曲・作詞)ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト(作曲・作詞補)モーリー・イエストン(台)ルーサー・デイヴィス(演・振付)トミー・チューン
 原作は、ヴィッキー・バウムの同名小説。「グランド・ホテル」は、1932年には映画化され大ヒットしています。
 1958年にミュージカル化された作品をリメイク。
 1928年ドイツのベルリンにあるグランド・ホテルを舞台に多様な人々が織りなす人間模様を描いた作品。
 こうしたスタイルの映画をこの映画の後「グランド・ホテル形式」と呼ぶようになりました。
 「グランド・パレード」「恋など起きない」などがヒット。

<1990年代の代表作>
 1990年代は、「蜘蛛女のキス」や「RENT」などLGBTやエイズのような社会問題を扱ったミュージカルが登場。ミュージカル界全体が出演者だけでなく作者も若返り始めました。
 さらにディズニーがミュージカル界に参入したことで、一気に観客層が弱年齢層にまで広がります。
 ミュージカルは大人の楽しみから、家族全員で楽しめるエンターテイメントの主流となり、巨額の利益を生み出すビジネスへと発展し始めることになります。
 

「クレイジー・フォー・ユー Crazy For You」
(1992年1622公演)
 (作曲・作詞)ジョージ&アイラ・ガーシュイン(台)ケン・ルドウィッグ(演)マイク・オクレント(振付)スーザン・ストローマン
 映画「ガール・クレイジー」(1930年)を基本にガーシュインのラブ・ソングを集めた作品。
 1930年代ニューヨークに住むダンスに夢中な銀行の跡取り息子ボビーが仕事で田舎の町へ。
 そこで出会ったポリーに恋をするが、彼女は債務の取り立て先の劇場主の娘だった!
 「I Got Rhyzm」「Someone To Watch Over Me」「But Not For Me」などの名曲を使用。

「蜘蛛女のキス Kiss of the Spider Woman」(1993年904公演
 (作曲)ジョン・カンダー(作詞)フレッド・エブ(台)テレンス・マクナリー(演)ハロルド・プリンス(振付)ヴィンセント・パターソン
 原作は、マヌエル・プイグの同名小説(1976年)のミュージカル版。
 南米の独裁国の刑務所が舞台。未成年へのわいせつ行為で逮捕されたゲイのモリーナと政治犯逃亡幇助のヴァレンティンとの対話と友情と裏切り。
 「蜘蛛女のキス」「Dear One」「彼女は今」
 1985年、ヘクトール・バベンコ監督、ウィリアム・ハート、ソニア・ブラガ主演で映画化。「蜘蛛女のキス」

「サンセット大通り Sunset Boulevard」英国1993年、米国1994年977公演)
 (作曲)アンドリュー・ロイド=ウェバー(作詞・台)ドン・ブラック、クリストファー・ハンプトン(演)トレバー・ナン(振付)ジョン・ネイピア
 ビリー・ワイルダー監督のハードボイルド映画「サンセット大通り」の傑作をミュージカル化。
 サイレント映画時代の大女優ノーマが売れない脚本家ジョーを雇い映画界への復帰を目指しますが・・・
 もう過去の存在となっていたノーマに映画界は冷たく、悲劇が訪れます。
 「ガール・ミーツ・ボーイ」「 Too Much In Love To Care」など

<ディズニー・ミュージカルの登場>
 1994年ディズニーがミュージカルに参入。ディズニー・シアトリカル・プロダクションズの第一弾作品「美女と野獣」が誕生し大ヒット。
 ここからディズニー製ミュージカルの時代が始まります。
 「美女と野獣」「ライオン・キング」「アイーダ」の他
 「ターザン」(2006年486公演)
 「メアリー・ポピンズ」(ロンドン初演2004年NY初演2006年2619公演)
 「リトル・マーメイド」(2008年685公演)
 「ニュージーズ」(2012年1004公演)
 「アラジン」(2014年)

「美女と野獣 Beauty and the Beast」(1994年5461公演)
 (作曲)アラン・メンケン(作詞)ティム・ライス、ハワード・アシュマン(台)リンダ・ウールヴァートン(演)ロバート・ジェス・ロス
 原作は、フランスの作家ジャン・コクトーの戯曲。
 1991年のアニメ版「美女と野獣」をミュージカル化した作品。
 13年を超える超ロングランヒット!

「レント RENT」(1996年5123公演)
 (作曲・作詞・台)ジョナサン・ラーソン(演)マイケル・グライフ(振付)マーリス・ヤービー
 プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」を現代のニューヨークに移した作品。
 1991年冬のイーストビレッジの立ち退きを迫られた協同住宅が舞台。
 シンガーソングライターのロジャー、映像作家志望のマーク、そして二人の彼女や友人たちのクリスマスがメイン。
 若き無名のアーティストたちの群像劇でエイズ問題も扱った社会派ミュージカルでピュリッツアー賞受賞。
 「シーズン・オブ・ラブ」など
 2005年、クリス・コロンバス監督、ロザリオ・ドーソン、アダム・パスカル主演で映画化。「RENT/レント」
「レント RENT」 2005年
(監)(製)クリス・コロンバス(アメリカ)
(製)ロバート・デ・ニーロ、ジェーン・ローゼンタール他(原)(音)ジョナサン・ラーソン(脚)スティーブン・チョボスキー
(撮)スティーブン・ゴールドブラット(PD)ハワード・カミングス(編)リチャード・ピアソン(振)キース・ヤング
(出)ロドリオ・ドーソン、アダム・パスカル、イディナ・メンゼル、アンソニー・ラップ、トレイシー・トムズ 
キース・ヤング、ジョナサン・ラーソンによるミュージカルの映画化
1980年代末、貧しいアーティストたちが住むNYイーストビレッジの一年。
古いレント・アパートメントに住む若者たちの芸術にかける青春。
エイズや貧困、芸術作品を生み出す苦しみを赤裸々に描いた重い内容。
テーマ曲の美しさ、優しさがドラマを救います。役者もみな生き生きしています。
セットも実によくできていて、オープニングから見ごたえあり。 

 2021年、リン=マヌエル・ミランダ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演でジョナサン・ラーソンの伝記映画「tick,tick...BOOM !チック、チック...ブーン!」
「tick,tick...BOOM ! チック、チック・・・ブーン!」 2021年 
(監)(製)リン=マヌエル・ミランダ(アメリカ)
(製)ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード他(原)(音)ジョナサン・ラーソン(脚)スティーブン・レヴェンソン(撮)アリス・ブルックス
(出)アンドリュー・ガーフィールド、アレクサンドラ・シップ、ヴァネッサ・ハジェンズ、ロビン・デ・ヘスス、ブラッドリー・ウィットフォード
<あらすじ>
30歳を前に8年かけて書き上げたミュージカルの視聴会を目前にしたジョンは、最後の曲がかけず悩んでいました。
友人がエイズで入院したり、恋人がダンスの教師として働くためNYを離れると言い出したり、 収入がなかったり・・・
それでも彼は当日までになんとか曲を書き上げ、観衆の前で無事に視聴会を成功させますが・・・
大ヒットしたミュージカル「RENT」の公演初日前日に35歳の若さで病によりこの世を去ったジョナサン・ラーソンの伝記映画。
「RENT」の登場人物がどうやって生まれたのかがわかるメイキング・ムービー&ミュージカル作品。
1990年いかにエイズがニューヨークで猛威を振るっていて、大きな影響を与えていたのかがわかります。
アレン・ガーフィールドが熱演! (ゴールデングローブ主演男優賞

「ライオン・キング The Lion King」(1997年7600公演を越えて継続中)
 (作曲)エルトン・ジョン、リーボM、マーク・マンチイナなど(作詞)ティム・ライス他(演・衣)ジュリー・ティモア(振付)ガース・フェイガン
 (台)ロジャー・アラーズ、アイリーン・メッキ
 アフリカ、サバンナ地方の動物王国プライドランドの王ムファサと息子のシンバ。
 ムファサの弟スカ―により父親を殺されたシンバが成長し王になるまでの成長物語。
 「サークル・オブ・ライフ」(エルトン・ジョン)
 1994年のアニメ版「ライオン・キング」をミュージカル化した作品。

「ジキルとハイド Jekyll & Hyde」(1997年1543公演)
 (作曲)フランク・ワイルドホーン(作詞・台)レスリー・ブリッカス(演)ロビン・フィリップス(振付)ジョーイ・ピッツィ
 原作は、R・L・スティーブンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」
 1888年のロンドンを舞台にしたホラー・サスペンスの歴史的名作。

「スカーレット・ピンパーネル The Scarler Pimpernel」(1997年772公演)
 (作曲)フランク・ワイルドホーン(作詞)ナン・ナイトン(演)ピーター・ハント
 原作は、バロネス・オルツィの同名小説。
 フランス革命で無実の貴族をギロチンから救い出す組織の物語をミュージカル化。

「ラグタイム Ragtime」(1998年834公演)
 (作曲)スティーブン・フラハティ(作詞)リン・アーレンズ(台)テレンス・マクナリー(演)フランク・ギャラティ
 E・L・ドクトローの同名小説をミュージカル化。
 アメリカの裕福な白人家庭。貧しい移民の父と。黒人のラグタイム・ピアニストとその恋人。3つのグループの年代記。
 1981年、ミロシュ・フォアマン監督、エリザベス・マクガヴァン、ジェームズ・キャグニー主演で映画化。「ラグタイム」(ミュージカルではない)

<PART4>2000年代~2020年代の代表作


<参考>
「ミュージカルの歴史」
 2016年
(著)小山内伸
中央公論新社

トップページヘ