ルーツ・サウンド編

1900年〜1949年

<ルーツ・サウンドの歴史をたどる旅>
 20世紀前半のポピュラー音楽の歴史「音魂大全」を書きあげた時点で、それからさらに50年さかのぼってさらなる作業を行おうとは思ってもいませんでした。しかし、「音魂大全」の中で、すでにジョージ・ガーシュインやロバート・ジョンソンなどを取り上げていたこともあり、ロック誕生以前のアーティストたちの人生がそれ以後のアーティストたちよりも波乱万丈、ドラマに満ちていることはわかっていました。問題なのは、過去に戻るほど、そうした音楽に関する歴史を調べることが困難になるということです。現代のそれに比べ情報量が絶対的に少ないのです。そのため、今回は音楽の本だけではなく20世紀前半に関わる情報を広く調べる必要があり、そうやってなんとか50年分の歴史をまとめることができました。
 ただし、ポピュラー音楽というジャンルは、良くも悪くも都市型大衆社会が生まれる中からできたものです。したがって、20世紀前半の時点で、ポピュラー音楽というものが存在していたのは、ある程度限られた地域だけでした。まして、当時はレコードもまだごくごく一部の人々しか持っていませんでした。(やっとラジオ放送が始まったのがこの頃です)そんなわけでここで取り上げられている国や地域には、かなり偏りがあるかもしれません。もちろん、ここで取り上げられていない地域にも、それぞれの土地独特の音楽があったはずですが、ほとんどは記録として残らなかったということです。
 それから今回はあえて音楽とは直接的に関係のない事件やムーブメントについても取り上げることにしました。なぜなら、当時は音楽とは関係なかった出来事も、その後多くの人々に影響を与えることでロック誕生以降のアーティストたちにも多大な影響を与えているものばかりだからです。
 例えば、「シュルレアリスム」は、ビートニクたちに大きな影響を与え、それがドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、そしてパンクの女王、パティ・スミスに受け継がれました。ロバート・キャパの写真は、多くの戦場カメラマンを生み出し、彼らが撮ったベトナムの写真によって燃え上がった反戦運動からボブ・ディランの「風に吹かれて」など多くの名曲が生まれました。
<ロックなるのもとは?>
 こうして、ロック以前の歴史をたどってみると、「ロックなるもの」の本質はロック以前にも存在していたことに気づかされます。「現状に不満を持ち、それを破壊してでも革新しようとする未来志向の精神」それが「ロックなるもの」の本質なら、ブラックとともに二人だけでキュビズムへと向かった天才ピカソ、バウハウスの活動によって芸術をあらゆるジャンルに生かそうと考えたカンディンスキー、忌まわしきファシズムと協調した未来派のアーティストたち、女性たちに自由のファッションを広めたココ・シャネル、映画によって現実を大衆に伝えようとしたチャップリンやハリウッド10、アドリブを取り入れることでジャズを新しい段階へと引き上げたバディ・ボールデンやルイ・アームストロング、ニュートンの理論を越えた新しい宇宙像の創造に挑んだアインシュタイン・・・etc.彼らもまた「ロックなるもの」の精神を体現する先駆者だったといえるように思うのです。そして、そうした「革新を求める精神」が一般大衆へ、世界中へと広まったのが、1960年代という激動の時代であり、その時ぴったりの名前として選ばれたのが「ロック」だったのです。
 そんなことを思いつつ、ロックの誕生へと至る道のりでもある、トラッド、ヒルビリー、ブルース、ジャズ、ブギウギ、ラグタイム、ビ・バップ、フォーク、プロテスト・フォーク、映画音楽、タンゴ、ハバネラ、ソン、ポルカ、サンバ、オペラ、現代音楽、歌謡曲、フラメンコ・・・etc. 現代ポップスのルーツとなった音楽が誕生した歴史を二つの世界大戦に揺れた激動の世界史とともに、じっくりとお読みいただければと思います。
 それではルーツ・サウンドを巡る歴史の旅をごゆっくりお楽しみ下さい!

1900年 パリ万国博覧会と19世紀の終わり 未来世紀である20世紀を体現した街、パリ。そこは未来の街であると同時に、
19世紀がヨーロッパの時代であったことを美と豪華さによって表現する場所でもありました。
アール・ヌーヴォーの芸術家たち
1901年 ジャズを作った男の悲劇の物語 ジャズの基礎となったアドリブ演奏を取り入れたコルネット奏者、バディ・ボールデンの物語 バディ・ボールデン
(ジャズ・ミュージシャン)
1902年 旅するグラモフォン、カルーソーと出会う レコード時代を切り拓いたグラモフォン、イタリアのオペラ歌手カルーソーと出会う エンリコ・カルーソー
(オペラ歌手)
1903年 ティン・パン・アリー黄金時代を築いた男たち アーヴィング・バーリン、ジェローム・カーンそして、ジョージ・ガーシュインなど アーヴィング・バーリン、ジェローム・カーン(作曲家)
1904年 ラスト・オペラ・ヒーロー 「蝶々夫人」などオペラの名作を数多く残したオペラ界最後のヒーロー ジャコモ・プッチーニ
1905年 物理学が美学だった頃 アインシュタインなど物理学の英雄たちが活躍した物理学における「奇蹟の年」とは? アルバート・アインシュタイン、ニールス・ボーア(物理学者)
1906年 未来を描いた野獣たちの絵画 マティス、ルオー、デュフィなどフォヴィズムの画家たち アンリ・マティス、モーリス・ド・ブラマンク他(画家)
1907年 ハリウッドの誕生と映画黄金時代の始まり ハリウッドがロス郊外にできた理由。映画黄金時代の始まりの裏話 リュミエール兄弟、エジソン、ワーナー兄弟、J・メリエス他
1908年 映画音楽の誕生と映画黄金時代の始まり サン=サーンスによる世界最初の映画音楽「ギーズ公の暗殺」誕生秘話と映画音楽の歴史 サン=サーンス(作曲家)
1909年 キュビズムという名の破壊衝動 「キュビズム」という絵画の革命を行った2人の天才はいかにして歴史を変えたのか? パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック
1910年 タンゴの生い立ちとバンドネオンの登場 タンゴはいかにして生まれたのか?その歴史とバンドネオンが入った理由 オルケスタ・ティピカ初期のバンドたち
1911年 ラグタイムの王、没落の時 ラグタイムの王と呼ばれた男、スコット・ジョップリンの栄光と悲劇の人生 スコット・ジョプリン(作曲家、ピアニスト)
1912年 「ブルースの父」はブルースマンではなかった 「ブルースの父」と呼ばれる男は実はブルースマンではなかった。「セントルイス・ブルース」誕生秘話 W・C・ハンディ
1913年 雑音芸術と未来派宣言 ルイジ・ルッソロの雑音楽器とロシアが生んだ天才作曲家ストラヴィンスキーが示した未来の音楽 ルイジ・ルッソロ、ストラヴィンスキー(作曲家)
1914年 皆殺しの天使、静かに舞い降りる ココ・シャネルらファッション・デザイナーたちによる女性解放の歴史 ココ・シャネル(ファッション・デザイナー)
1915年 映画の創生者が描いたアメリカの創生 映画の創生者が生み出した撮影技術の数々と映画の原点 D・W・グリフィス
1916年 サンバを生んだ小さな店の仲間たち チア・シアータと彼女の店にやってきたサンビスタたちによるサンバ復興物語 ドゥンガ、マウロ・ヂ・アルメイダ他(作曲家、サンビスタ)
1917年 家具としての音楽を描い男 エリック・サティーとピカソ、ジャン・コクトーらによる総合芸術バレエ「パラード」 エリック・サティー(作曲家)
1918年 芸術の歴史を変えたダダの衝撃 芸術の解体「ダダ」が生まれた時代背景とその後への影響 フーゴ・バル、トリスタン・ツァラ、ジャン・アルプ他、
1919年 元祖ポップ・スターの物語 エンターテナーとして初のスーパー・スターとなった男のショービズ人生 アル・ジョルスン
1920年 ダンス音楽の基本形「ソン」の誕生 世界のダンス音楽の基礎となった「ソン」の特徴、生い立ち セステート・アバネーロ、トリオ・マタモロス他
1921年 自由を表現し続けたダンスの女神 20世紀ダンスの歴史を切り拓いたカリスマ・ダンサーの波乱に満ちた人生 イサドラ・ダンカン(ダンサー)
1922年 フラメンコを蘇らせた悲劇の詩人 スペインの歴史から消された詩人、ガルシア・ロルカとフラメンコ復活の物語 ガルシア・ロルカ(詩人、戯曲作家)
1923年 ジャズ・エイジの物語 ジャズ・エイジと呼ばれた1920年代という時代について S・フィッツジェラルド、A・ヘミングウェイ他
1924年 シュルレアリストとファシスト 「シュルレアリスム宣言」(アンドレ・ブルトン)と「わが闘争」(アドルフ・ヒトラー)、二つの思想を生んだ年 アンドレ・ブルトン(詩人)、アドルフ・ヒトラー(政治家)
1925年 アール・デコと大衆文化の時代 アール・デコとジョセフィン・ベイカーの物語、大衆文化時代の始まり ジョセフィン・ベイカー(歌手、ダンサー)
1926年 時を越えて生き続けるポルカのリズム 東欧、ドイツからやって来たポルカのリズムが生み出したテックス・メックスまでの歴史 ブレイブ・コンボ、フラーコ・ヒメネス他
1927年 ハーレム・ルネッサンスとサー・デューク ハーレム・ルネッサンスと呼ばれた黒人文化の黄金時代とデューク・エリントン デューク・エリントン(作曲家、バンド・リーダー)
1928年 ブギウギ・ピアノとハウスレントパーティー ジョン・ハモンドによって発見された伝説のブギウギ・ピアニストたち ジミー・ヤンシー、パイントップ・スミス(ブギウギ・ピアニスト)
ジョン・ハモンド(プロデューサー)
1929年 マンゲイラ誕生とエスコーラ・ジ・サンバ サンバの学校(エスコーラ・ジ・サンバ)の誕生とカーニバル黄金時代 マンゲイラ(ブラジル最古のエスコーラ)
1930年 嘆きの天使、ハリウッドへ 映画界のスターからエンターテイメントの歌い手へ、ドイツからアメリカへと渡った歌姫 マレーネ・ディートリッヒ
1931年 白と黒のMr.アメリカン・エンターテナー 大恐慌時代に登場したビング・クロスビーとキャブ・キャロウェイ、二人の大物エンターテナー ビング・クロスビー、キャブ・キャロウェイ(歌手)
1932年 Mr.アメリカン・ミュージック 20世紀を代表するスタンダードナンバーを数多く生み出した最もアメリカ的な作曲家、作詞家 コール・ポーター(作曲家)
1933年 「カントリーの父」とその早すぎた死 カントリー音楽は実はアメリカの故郷を演出するための新しいポピュラー音楽だった! ジミー・ロジャース
1934年 ムッソリーニとワールドカップ・サッカー 時代の変化の影響を受け続けてきたワールドカップ・サッカーの歴史とムッソリーニの関わり ベニト・ムッソリーニとサッカー選手たち
1935年 スウィング・ジャズ黄金時代 スウィング・ジャズ黄金時代を築いたベニー・グッドマンとジョン・ハモンド ベニー・グッドマン(バンド・リーダー、クラリネット奏者)
1936年 カメラがとらえた激動の20世紀 カメラの発明、発展と報道写真の発展を進めたカメラマンたちの物語 ロバート・キャパ他
1937年 カンザス・シティー・ジャムの終演 ビ・バップからモダン・ジャズへの道を作った伝説のジャズ・バトル カウント・ベイシー、コールマン・ホーキンス、レスター・ヤングなど
1938年 忘れられたサンバの歌姫 アメリカに渡ったサンバ界の歌姫。アメリカに消費される海外のアーティストたち カルメン・ミランダ(歌手、俳優)
1939年 黒いアメリカ人へのバラード 伝説の黒人歌手、ポール・ロブソンの栄光と悲劇の物語 ポール・ロブソン(歌手)
1940年 すべての「独裁者」に捧ぐ ナチス・ドイツを容認した欧米各国と唯一それに反抗した偉大なるコメディアン、チャップリンの選択 チャールズ・チャップリン(映画監督、俳優)
1941年 闘うフォーク・ミュージックの開拓者 権力に講義する新しい音楽、プロテスト・フォークの創始者、ルーツ・ミュージックの研究者 オルマナック・シンガース(ピート・シーガー他)
1942年 アメリカレコード業界大混乱の年 第二次世界大戦が始まる中、アメリカで起きたレコード業界の大混乱の原因とその影響 エドワード・B・マークス、ラルフ・ピアー他
1943年 モナリザの声を持つピアノ弾き 誰からも愛された歌声の持ち主を生み出したのは、わがままな観客だった? ナット”キング”コール
1944年 ジャズからロックン・ロールへ、ジャンプ! ジャズからロックン・ロールへの進化を推し進めたファンキー・バンド・リーダー、ルイ・ジョーダン物語 ルイ・ジョーダン(歌手、バンド・リーダー)
1945年 ビ・バップ革命 ジャズの革命を起こした英雄たちとその革命の地、ミントンズ・プレイハウス チャーリー・パーカー、チャーリー・クリスチャン他
1946年 ジャズ・ギターの天才、波乱の人生 ジャズ・ギターの革新者を生んだ悲劇と生い立ち、そしてアメリカへの旅 ジャンゴ・ラインハルト(ジャズ・ギタリスト)
1947年 悲劇のハリウッド・テン物語 赤狩りによってハリウッドから締め出された映画人の悲劇とその後のハリウッド ドルトン・トランボ他ハリウッド・テンのメンバー
1948年 究極の音楽を追求した導師 音楽とは何か?新しい音楽を生み出せるか?その追求の為、挑戦をし続けたカリスマ音楽家 ジョン・ケージ
1949年 J−ポップへの道、始まりの時 服部良一、古賀政男、吉田正ら、歌謡界を育てた作家とジャズ・ミュージシャンたち 服部良一、古賀政男、吉田正(作曲家)


「黒い大地が生んだ音楽」 アフロ・アメリカン音楽のルーツ、アフリカからの出発
「奴隷制が生み出した音楽」 奴隷船に乗ってアメリカへ、労働のための音楽
「黒人霊歌の時代」 キリスト教の浸透から広がった黒人霊歌の発展
「ブルースの誕生」 黒人たちの新しい大衆音楽ブルースの誕生
「アフロ・アメリカン、北へ」 黒人たちの民族大移動、その原因と影響
黒い魂の歴史・外伝
「バラッドの歴史」 ブルースに大きな影響を与えたバラッドはいかにしてアメリカへ渡ったか
「バラッドからスキッフルへ」 ブリティッシュ・ロックの原点となったスキッフルとは、いかにして生まれたか



マッカーシズムと赤狩り 「赤狩り」という異常なブームは何故起こったのか? ジョセフ・レイモンド・マッカーシー
シュルレアリスム Surrealisme 現代にまで影響を与え続けるシュルレアリスムの秘密 アンドレ・ブルトン他




(追記)「音魂大全」に載せられなかったミュージシャンたち

グラム・パーソンズ カントリー・ロックを生み出した悲劇のカウボーイ
サンタナ ラテン・ロックの大御所は何故未だに売れ線なのか?
ジョニー・キャッシュ 恋に身を焦がし続けたカントリーの大御所
バーナード・ハーマン ヒッチコック映画の影の功労者、サスペンス音楽作家
ジョン・ウィリアムス クラシック音楽からスペース・オペラまで、アカデミー賞の常連
ローランド・カーク ジャズ界の異端児は誰よりもポップな存在だった
トム・ウェイツ 多彩な酔いどれパフォーマーのお仕事集




<20世紀前半に生きた異人たち>

アントニオ・ガウディ
Antonio Gaudi
サグラダ・ファミリアなど神への愛を形にし続けた建築家
アルバート・アインシュタイン
Albert Einstein(前編)後編)
世界の歴史を変えた天才物理学者
アーネスト・ヘミングウェイ
Ernest Hemingway
マッチョなアメリカを象徴する冒険作家の波乱万丈の物語
ジャクソン・ポロック
Jackson Pollock
ポアリングによってピカソとウォーホルをつないだカリスマ画家
ジョン・フォン・ノイマン
John Von Neumann
コンピューターの父、原爆の開発者
「ゲーム理論」の作者
カレル・チャペック
Karel Capek(前編)
(後編)
「山椒魚戦争」「R.U.R」など時代を越える作品を残した偉大な作家
マハトマ・ガンジー
Mahatma Gandhi(前編)
(後編
非暴力、非服従による政治改革を実現した偉大な「魂の人」
ニールス・ボーア
Niels Bohr
「量子力学の導師」が挑んだもうひとつの闘い
パブロ・ピカソ
Pablo Picasso(前編)
(後編)
多作で多才な美と情熱の活火山
ロバート・キャパ
Robert Capa
第二次世界大戦からベトナム戦争へ
戦争を追い続けた伝説のカメラマン
ルドルフ・シュタイナー
Rudolf Steiner
至高の魂を求めて、新しい科学的思想体系を作り上げた思想家
サン=テグジュペリ
Saint Exupery
空飛ぶ作家の冒険人生
「星の王子さま」「人間の土地」など
スコット・フィッツジェラルド
Scott Fitzgerald(前編)
(後編)
失われた世代が生んだ悲劇の英雄
T・E・ロレンス
T
・E・Lawrence
砂漠の英雄、その深く暗い心の闇
中東紛争の原点と歴史
ワシーリー・カンディンスキー
Wassily Kandinsky
ロシア革命、ナチズムの中の激動の人生、20世紀前衛芸術の始祖