米国風リアリズム・スポ魂・青春群像劇


「プライド 栄光への絆 Friday Night Lights」
<アメリカン・フットボール映画>
<アメ・フト映画>
 スポーツを題材にした映画において、今も昔も変わらない常識「ボクシング映画に駄作なし」があります。このサイトにもボクシング映画の名作リストがありますが、確かにそうそうたる作品が並んでいます。それも世界中で名作が作られていて、数々の映画賞も受賞しています。一対一のシンプルな男の闘いは、スポーツの究極の形であると同時に、人間ドラマの究極の形でもあります。人種、体格の関わりなく挑めるスポーツというのもボクシングの特徴といえます。ではそんなスポーツの原始の形である「ボクシング」の対極に位置するスポーツは何か、それは「アメリカン・フットボール」でしょう。
 出場選手、控え選手の数の多さ。ルールの複雑さ。その歴史の新しさ。プレーされている国の少なさ。様々な点で「ボクシング」と「アメリカン・フットボール」は、対極にあるスポーツだと思います。そうなると、アメリカン・フットボールの映画は作りのが難しいのでしょうか?
 そんなわけで、スポーツ映画のベスト100(米国のスポーツ情報サイト「Bleacher Report」の競技別作品数を数えてみました。するとその結果は、1位が野球の20、2位がアメフトの18,3位がボクシングの16(以下、バスケット、アイスホッケー、サッカーと続きます)アメリカ人が選んだ作品なので、当然偏った見方ではありますが、ほぼ納得の結果に思えます。
 ただし、野球、ボクシングの日本での人気に比べると、アメフトは日本ではほとんど見られていないので、公開されていない作品も多いと思います。およその作品を年代順に並べてみると・・・(なぜか70年代と2000年代に集中しています)
「タイタンズを忘れない」(2000年)、「しあわせの隠れ場所」(2009年)、「インヴィンシブル/栄光へのタッチダウン」(2006年)、「僕はラジオ」(2003年)
「エクスプレス/負けざる男たち」(2008年)、「リプレイスメント」(2000年)
「ザ・エージェント」(1996年)、「エニイ・ギブン・サンデー」(1999年)
「ブライアンズ・ソング」(1970年)、「ロンゲスト・ヤード」(1974年)、「天国から来たチャンピオン」(1978年)、「ノースダラス40」(1979年)
「ジョーイ」(1977年)、(番外作品)「M☆A☆S☆H」(1970年)

<映画のテーマ>
 チーム・スポーツであるアメフトや野球は、映画化する場合、必然的に主人公を絞る必要があり、そうでない場合も、テーマを絞る必要があります。そのため、それぞれの作品には主人公が立ち向かう対象にテーマが現れています。
主人公もしくは主人公の家族が難病やケガと闘う。「ブライアンズ・ソング」、「ジョーイ」
主人公が人種差別と闘う。「タイタンズを忘れない」
主人公が八百長事件に巻き込まれる。「ノースダラス40」
主人公が刑務所内の不正な扱いと闘う。「ロンゲスト・ヤード」
主人公がエージェントと共に闘う。「ザ・エージェント」
主人公が厳しい家庭環境から脱出するために闘う。「しあわせの隠れ場所」
主人公が天国に行って地上に戻ろうと闘う。「天国から来たチャンピオン」
 それぞれ何かのテーマがあり、そのために障害となる困難と闘いながらも、それを乗り越えた主人公は試合で結果を残すことで、素晴らしいドラマを生み出すのです。しかし、この映画「プライド」は、あえて主人公を複数とし、テーマも複数としたアメフト映画では珍しい群像劇として製作された作品なのです。
 人種問題、地域間格差、家庭内暴力、地域社会におけるスポーツ文化の存在価値、そして青春時代の苦悩・・・これらを乗り越えた先にクライマックスとなる決勝の試合がありました。
 アメフトをチーム全体として描くという困難に挑み、見事に成功させたのは、監督の手腕もあるでしょうが、様々な登場人物の人間像を詳細に描き出した原作のノンフィクションの存在なしには不可能だったと思います。
 まるでドキュメンタリー映画のように多くのカットを積み上げ、編集した映像の数々も原作があったからこそ、選べたし、リアリティーがあったのだと思います。

<高校アメフトは甲子園だ!>
 アメリカにおける高校生のアメフト選手権は、日本における高校野球の甲子園大会と同じ存在なのだとわかりました。特にこの映画のバーミアン高校のあるオデッサのような小さな町の高校だと、チームにかかるプレッシャーは甲子園の比ではなさそうです。監督はまだしも、選手たちにかかるプレッシャーの重さは半端ないはずです。だからこそ、そんな生徒たちの気持ちを理解したうえで、監督が試合前に語りかける言葉には感動させられました!強いチーム、勝利者となるチームには、それなりの監督がいなければならないのだと納得しました。ぱっと見はごく普通のオジサンでカリスマ性など感じられない監督役のビリー・ボブ・ソーントンの演技は、実に見事です!
 選手たちが口々に言う「人生のピークを迎えるのが早すぎたかもしれない」という言葉にも考えさせられます。残念ながら、僕にはそこまで熱い青春の思い出はありません。でも、そんな体験をしていたら、それを自信に次のステージでもきっと頑張れるだろうとは思います。
 夏の甲子園を沸かせた秋田の金足農業の活躍を映画にするときっとこんな感じになるのでしょう!アメフトのプロ・チームは大都市にしかいませんが、高校のチームならアメリカ中の田舎町にも存在するので、誰もが身近な存在として応援できるわけです。
 ただし、そこまでの結果を州大会で残したにも関わらず、その年のバーミアン高校の選手からプロで活躍する選手は誕生しなかったのですから、やはりアメフトの世界はレベルが高い選手が多いということなのでしょう。
 逆に考えれば、そこまでのスーパースターがいなくても、監督の手腕と一丸となって戦えるチームなら上位進出は可能だということでもあります。これもまた高校生によるアメフトの魅力なのでしょう。彼らには「ワン・フォー・オール・オール・フォー・ワン」の精神がまだ失われてはいないのです。(プロになるとどうなのか?)だからこそ、生まれる奇跡のドラマをこの映画は見事に映像化してみせたのでした。
「映画は観客に異なる人生を体験させる装置である」と僕は思っています。
 その意味で、この作品は観客にバーミアン高校アメフト部のメンバーとして決勝の舞台に立たせてくれ、その興奮を体感させてくれます。それはまるで、クイーンのメンバーとなって、ライブ・エイドのステージに上がった時の興奮であったり、ロッキーがアポロ・クリードとの試合を前にリングの登場した時の興奮だったり、「いまを生きる」で生徒たちが学校への抗議の姿勢を示すために机の上に登った時の興奮なのだと思います。

<テンポを生み出す音楽>
 この映画の素晴らしいテンポを生み出しているのは、素晴らしいカットの連続を生み出した編集の力かもしれません。ただし、それに加えて、場面ごとにテンポを変え、ドラマを生き生きと動かしている音楽の存在もこの映画の成功に寄与するところ大だと思います。特に、素晴らしいのはテキサス出身のインスト・ロック・バンド、エクスプロージョン・イン・ザ・スカイによるオリジナル曲の数々です。青春の苦悩を、歌うようなギターソロ演奏によって表現している彼らの音楽のおかげで、この作品には深い味わいがもたらされています。
 そんなロック系、白人系の音楽に対して、パブリック・エネミーなどによる黒人系のラップミュージックは、よりテンポを上げ、重量級の重さを映画にもたらしています。その対比は、白人選手が多く小柄なバーミアン高校と黒人選手ばかりの大柄なカーター高校の対比にもなっています。

曲名  演奏  作曲  コメント 
「Terminator X To The Edge of Panic」  パブリック・エネミー
Public Eney 
Carlton Ridenhour
Norman Rodgers
William Drayton
デビュー・アルバム
「Yo!Bum Rush The Show」より
(1987年)
「Wild Side」 モトリー・クルー
Motley Crue
Tommy Lee
Nikki Sixx ,Vince Neil 
アルバム「Girls, Girls, Girl」より
(1987年) 
「Fool Proof」  Joey Scarbury  Julius Robinson
David A. Young 
 
「It's Tricky」  RUN DMC  Joseph Simmons
Darryl McDaniels
Jason Mizel ,Rick Rubin 
13枚目のシングル(1987年) 
「Black Steel In The Hour of Chaos」  パブリック・エネミー
Public Enemy 
Carlton R,Hank Shocklee
Eric Sadler,William Drayton 
アルバム「It Takes A Nation of Millions
to Hold Us Back」より (1988年)
「Nothin' But A Good Time」  Poison  Bret Michaels,C.C.DeVille
Rikki Rockett,Bobby Dall 
 
「Shoot For Thrills」  L.A.Guns  Kelly Nickels   
「Bling The Noise」 パブリック・エネミー
Public Enemy 
Carlton R,Hank Shocklee
Eric Sadler,George Clinton Jr. 
アルバム「It Takes A Nation of Millions
to Hold Us Back」より(1988年)
「Just Got Paid」  Z Z Top Billy F. Gibsons, Bill Ham アルバム「Rio Grande Mud」より
(1972年) 
「Wew Noise」  Retused David Sandstrom,Dennis Lyxzen
Kristoter Sten,Jon Brannstorm 
 
「Welcom To The Terrordome」  パブリック・エネミー
Public Enemy
Carlton Ridenhour, Keith Shockley  アルバム「Fear of A Black Planet」
(1990年)
「Jack & Gen」 Adam Smalley  Adam Smally  
「Sonho Dourado」  ダニエル・ラノア Daniel Lanois  Daniel Lanois   
「I Wanna Be Your Dog」  ザ・ストゥージズ
The Stooges 
Ronald Asheton, Scott Asheton
Dave Alexander, Iggy Pop
イギ―・ポップが所属していたバンド
元祖パンク
「Seagull」  バッド・カンパニー
Bad Company
Paul Bernald Rogers
Mick Ralphs
 
「Your Hand In Mine」
「Six Days At The Bottom of the Ocean」
「Memorial」 
「The Only Moment We Were Alone」
「A Poor Man's Memory」
「With Tired Eyes, Tired Minds, Tired Souls, We Slept」
Explosions in the Sky Christopher Hransky
Munaf Rayani Mark
Thomas Smith
Michael Aaron James
ポスト・ロックバンド
(アメリカ・テキサス出身)
「First Breath After Coma」 
「Have You Passed Through This Night ?」
Explosions in the Sky  Christopher Hransky
Munaf Rayani Mark
Thomas Smith
Michael Aaron James 
 

「プライド 栄光への絆 Friday Night Lights」 2004年
(監)(脚)ピーター・バーグ Peter Berg
(製)ブライアン・グレイザー
(原)H・G・ビッシンジャー
(脚)デヴィッド・アーロン・コーエン
(撮)トビアス・A・シュリッスラー
(PD)シャロン・シーモア
(編)デヴィッド・ローゼンブルーム、コルビー・パーカーJr.
(音プロ)ブライアン・レイチェル
(出)ビリー・ボブ・ソーントン、デレク・ルーク(ブービー)、ジェイ・ヘルナンデス、ルーカス・ブラック、ギャレット・ヘドランド

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