「北国の帝王」、「ロンゲストヤード」

- ロバート・アルドリッチ Robert Aldrich -

<B級アクション映画の帝王>
 アカデミー賞などの映画賞とは無縁。これが最高傑作といえる名作を残したわけでもない。しかし、これほどレベルの高い娯楽映画を撮り続けた監督はそうはいないはずです。この監督の描くテーマは実にシンプル。「男と男の闘い」です。中には、「女と女の闘い」を描いた作品もありますが、それあそれで男同士の闘い以上に熱いバトルが展開されています。どの作品を見ても、はずれのない「B級アクション映画の帝王」ともいえる存在、それがロバート・アルドリッチです。

<ロバート・アルドリッチ>
 ロバート・アルドリッチ Robert Aldrichは、1918年8月9日ロードアイランド州クランストンで生まれています。彼の家系は政界、財界で活躍する名家で、彼はそうした一族から離れ、ヤクザな映画作りの道を目指していました。ヴァージニア大学を卒業した彼は1941年RKO撮影所に入社。第二次世界大戦の真っ只中だったことから、撮影上ではスタッフが不足していたこともあり、彼は様々な大物監督たちのもとで助監督をつとめることができました。その中には、チャールズ・チャップリン(あの名作「ライムライト」の助監督!)、ジャン・ルノワール、ジョセフ・ロージーなど伝説とも言える監督たちもいました。監督としてのデビュー作は、1953年の野球映画「Big League」。一作目から、「男と男の闘い」がテーマでした。
 1954年の西部劇「ヴェラクルス」は、早くも傑作と呼べる見事な娯楽作品でした。カーク・ダグラスとバート・ランカスターという二大スターが演じるガンマンが対決する痛快なアクション映画。その見所は、黒ずくめの悪役バート・ランカスターがニヤッと笑ったときに見せるキラリと輝く歯。子供だった僕は、なんとも格好いい悪役にほろぼれしたものです。「悪役を格好良く描く」これは彼の映画における鉄則の一つでした。
 軍隊内の不条理な暴力や不正など内幕を暴いた映画「攻撃」(1956年)は、戦争アクション映画でありながらも、体制批判のメッセージもこめられた骨太な作品でした。「体制への反抗」それもまた彼の映画における鉄則の一つでした。
 「何がジェーンに起こったか?」(1962年)は、彼の作品としては珍しく「女の闘い」を描いた作品でした。ただし、女の闘いは男のそれよりもずっと恐ろしいホラー映画になっています。往年の大スター、ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードがその老いを生かして鬼気迫る演技を見せています。
 「飛べ!フェニックス」(1966年)は、サハラ砂漠に不時着したオンボロ輸送機の脱出劇を描いた痛快娯楽作でした。この作品は、その後2004年にリメイクもされています。
 「特攻大作戦」(1967年)は、ノルマンディー上陸作戦に投入された死刑囚ばかりを集めた特殊部隊がそれぞれの個性を生かして大活躍する戦争アクション作品でした。

「北国の帝王」 1973年
(監)ロバート・アルドリッチ
(脚)クリストファー・ノッフ
(撮)ジョゼフ・バイロック
(音)フランク・デ・ヴォル
(出)リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナイン、キース・キャラダイン、チャールズ・ダナー
 1930年代、大不況のアメリカでは働き場所を求めたり、冒険を求めるために鉄道にタダ乗りする人々(ホーボー)があとをたちませんでした。鉄道会社もホーボーを列車から降ろすために暴力を用いるようになります。そんな時代「北国の帝王」と呼ばれた伝説のホーボー(リー・マーヴィン)はある列車で彼らを撃退することに燃える車掌(アーネスト・ボーグナイン)と死闘を繰り広げます。この映画で描かれている一対一の男の対決は、数あるアルドリッチ作品の中でもベストと呼べる迫力です。そして、この作品における最大の悪役アーネスト・ボーグナインはまるで怪獣のようなド迫力です。ネビル・ブランドかアーネスト・ボーグナインか、怪獣的悪役俳優としての彼にとっても、この作品は代表作となりました。

「ロンゲストヤード」 1974年
(監)ロバート・アルドリッチ
(脚)トレーシー・キーナン・ウィン
(撮)ジョゼフ・バイロック
(音)フランク・デ・ヴォル
(出)バート・レイノルズ、エディ・アルバート、エド・ローター、マイケル・コンラッド、ジム・ハンプトン、バーナデッド・ピータース、リチャード・キール
 車を盗んで刑務所入りした元プロ・フットボーラーのポール(バート・レイノルズ)は囚人チームを率いることになり看守チームと試合をすることになります。しかし、彼は試合に負けるよう命じられていました。試合はお互いの意地と憎しみのぶつかり合う激しい試合になってゆきます。勝てば一生刑務所暮らしだと脅された彼は勝負を捨ててしまうのか?それとも意地と友情のために勝利を目指すのか?
 この作品でも悪役看守チームのリーダー(エド・ローター)が格好いいです。当時、セクシー男優として人気ナンバー1の存在だったバート・レイノルズもその男臭さを存分に発揮しています。塀の中のスポーツものは数多くありますが、文句なしの最高傑作だと思います。(この映画は2005年、ピート・シーガル監督によってリメイクもされています)ちなみに様々なスポーツ映画がある中でも、アメリカン・フットボールものには傑作が多いと思います。「ノースダラス40」、「天国から来たチャンピオン」など、ボクシングもの、陸上競技ものと並んで名作が多いジャンルです。

 その他、核ミサイルの基地に侵入した犯罪者がミサイルを使ってアメリカを脅迫するという彼の映画の中では大作に入るアクション映画「合衆国最後の日」(1977年)も、見ごたえのある作品です。(バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、チャールズ・ダーニング、ジョセフ・コットンなど)
 彼にとって異色の「女同士の闘い」の映画「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)も忘れられない作品です。女子プロレスのスター選手とそのマネージャー(ピーター・フォーク)のドサ回りの旅を描いたロード・ムービーもまた素敵な映画でした。女子プロレスとはいえ、さすがはアルドリッチだけあって迫力十分のスポ根映画です。
 もしかすると、彼にとって「女の闘い」は「男の闘い」以上に描くべき存在になりつつあったのかもしれません。なぜなら、「エイリアン」の公開が1979年。あの映画のヒロイン、リプリーの登場から「闘う女性」の時代が始まりつつあり、「男の闘い」は時代遅れの存在になりつつあったように思えます。
 彼は1983年12月5日、「カリフォルニア・ドールズ」を遺作にこの世を去りました。
 敵も、味方も格好良い「男の世界」を描き続けたロバート・アルドリッチは、男の時代の終わりとともこの世を去ったのかもしれません。

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