女子サッカー界の伝説から世界への言葉


- ミーガン・ラピノー Megan Rapinoe -
<2019女子ワールドカップ・サッカー>
 2019FIFA女子ワールドカップ・サッカー・フランス大会が終わりました。なでしこジャパンは、ベスト16で終わりましたが、オランダとの試合は素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。内容的には勝ちに等しい試合でした。
 とはいえ、アメリカと当たっていたら、まだまだ歯が立たなかったでしょう。それだけアメリカの強さは際立っていました。少々思い上がりが鼻につくきらいはありましたが、心技体ともに最高の状態を保っていたようです。なでしこは伸び盛りの選手が多いので、来年はきっともっと良い試合を見せてくれるだろうと思っています。それでもなお、日本とアメリカの差に愕然とさせられたのは、サッカーの試合ではなくニューヨークで行われた祝勝パレードでのミーガン・ラピノー選手の演説を聞いた時でした!
 今大会のMVPにも選出されたミーガン・ラピノーこそ、この大会の象徴であり、現在のアメリカ社会を象徴する存在です。そして、彼女は優勝記念講演で、プレー以外の面でも大会を象徴する存在だったことを見事に証明してみせました。

 なでしこジャパンが優勝した年、日本は東日本大震災という歴史的な災害の直後でした。そして、チームには澤穂希という素晴らしい精神的主柱が存在しました。そして今年、アメリカにはミーガン・ラピノーという強力な主将がいて、賞金の男女平等を訴えながら、トランプ大統領という国家的な災害との対決姿勢も鮮明にしていました。チームはそのために一丸となっていました。
 2020年東京オリンピックでは、今度こそアメリカとなでしこが戦うことになるかもしれません。今の状態ではホーム・アドバンテージだけでは、敵わないでしょう。
 アメリカ代表の優勝をお祝いすると同時に、今後の彼女たちのサッカー以外での活躍を祈り、ラピノー選手の名演説をご紹介しておこうと思います。

<ミーガン・ラピノーの演説より>2019年7月10日(ニューヨーク市庁舎前にて)
「私たちのチームには、ピンクの髪や紫の髪、タトゥーをいれてる子、ドレッドヘアの子、白人、黒人、そのほかの人種の人たち、いろんな人がいます。ストレートの女の子も、ゲイの女の子も。ねえ!」

「あなたのメッセージは、多くの人を排除しています。私を排除しています。私に似た人や、白人以外の人を排除しています」

「(トランプは)けっしてすべての人にとっては素晴らしくなかった時代に逆戻りしようとしています。ごく一部の人には素晴らしかったのかもしれません。そして今もごく一部にはそうかもしれないけれど。でも多くの米国人にとって、この世界は素晴らしくなんかないのです」

「私たちはもっと良くできるはず、もっと愛し合い、憎しみ合うのを止めて、もっと人の言葉に耳を傾けましょう。これはみんなの責任だと認識しなければなりません。
 ここにいる人たち、いない人たち、いたくない人たち、賛同する人たち、反対する人たち・・・世界をより良い場所にするのは、私たちの責任です。
 このチームはそれを背負い。自分たちの立場と発言力を素晴らしく理解していると思います。
 そう、私たちはスポーツをする。
 そう、私たちはサッカーをする。
 そう、私たちは女子アスリート。
 でも、私たちはそれ以上でもあります。みなさんも、それ以上の人たちです。
 みなさんは、ただのファンではありません。
 みなさんは、ただのスポーツ・ファンではありません。
 みなさんは、4年に一度だけテレビで応援する人ではありません。

 みなさんは、それぞれの道を毎日歩いています。
 共に生きる人たちと毎日ふれ合っています。
 周りの人たちのためにできることは何でしょうか?・・・
 家族のため、親しい人たちのためにできること。
 親しい10人のため
 親しい20人のため
 親しい100人のため
 この責任が一人一人にあるのです。
 この数年でたくさんの論争がありました。
 私もその被害にあいました。協会との対立では、時にその原因でもありました。
 謝りたいこともあります。謝らないこともありますが、今は結束する時です。
 今は結束する時です。この会話こそが、次のステップなのです。
 協力をしなければなりません。みなさんが必要です。」


<ミーガン・ラピノーとカミングアウト>
 ミーガン・ラピノー Megan Papinoeは、1985年7月5日アメリカ、カリフォルニア州レディング生まれ。オレゴン州ポートランドのポートランド大学を卒業し、シアトル・サウンダーズ所属。ミッドフィルダーとして活躍し、アメリカ女子代表の主将となる。
 2012年にレズビアンであることを公表。(かつて澤のライバルだったワンバック選手も同性愛であることをカミングアウトしていました)
 今大会出場選手中、38名が同性愛であることをカミングアウトしているという記事もありました。男子では現役中に同性愛者であることをカミングアウトすることはほぼないことに比べると女子選手の間では同性愛はかなり受容されていることがわかります。(ちなみにフランス代表のイケメン選手、ジルーは引退後にカミングアウトしているようです)
 先日、ドイツの2部リーグで活躍した後、日本の大学でスポーツ界のLGBTについて研究している女性研究者の記事を読みました。自身もカミングアウトしている彼女によると、女子サッカーの世界では「自分は”メンズ”なので」とカミングアウトすることは、欧米では普通にあるとのことです。「メンズ」という言葉には、LGBTの区分けとは別の大雑把な「男っぽい」選手という意味があり、それで十分理解されるということでした。
 時代は確かに変わりつつありますが、アメリカはトランプ政権によって時計の針を巻き戻らされてしまいました。
 今後もアメリカ代表チームはアメリカ国内できっとプレー以外でも戦いを続けることになると思います。
 もうすぐ大統領選挙ですから・・・。

スポーツ関連のページへ   サッカー関連のページへ   トップページヘ