新たなる希望となったサムライ・戦争アクションSF


「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ROGUE ONE : A STAR WARS STORY」

- ギャレス・エドワーズ Gareth Edwards -
<新たなる希望>
 「スター・ウォーズ」シリーズは、今まで第一作から常に公開時に映画館で見てきました。しかし、最近は子供たちに付き合って見に行くものの、毎回、少々がっかり気味に映画館を出ていました。「フォースの覚醒」もイマイチでした。ところが、今回の「ローグ・ワン」は久しぶりに忘れかけていた「スター・ウォーズ」の魅力を「覚醒」、いや思い出させてくれました。これなら、また「スター・ウォーズ」の新たな傑作が今後も生まれるかもしれない。そんな「新たなる希望」を抱かせてくれる作品でした。
 この映画の中で、何度も「希望(HOPE)」という言葉が使われていますが、この作品はシリーズにとって、まさに「希望(HOPE)」となる作品に仕上がっています。
 では、この作品が面白いのはなぜなのか?考えてみました。

<サムライ映画>
 監督へのインタビューにも書かれていましたが、この作品は一作目の「エピソード4 新たなる希望」以来の「サムライ映画」として作られています。一作目が黒澤明の「隠し砦の三悪人」を下敷きにしていたのに対し、本作は「七人の侍」と「座頭市」が下敷きになっているといえます。
 中国人俳優ドニー・イェンが演じるチアルートは、まさに座頭市そのものです。(もともと目を閉じても戦える「ジェダイ」は、「座頭市」的存在でしたが)
 本作の悲劇的な結末は、「七人の侍」の結末に近いものがあります。(この作品は、7人ではなく6人ですが・・・)
 師匠のジョージ・ルーカス同様、日本と日本映画が好きなギャレス・エドワーズ監督は、彼が最も愛する一作目同様、サムライ映画を下敷きにするという原点回帰を行ったと言えます。

<戦争アクション映画>
 このシリーズ一作目のオリジナル・タイトルは、「STAR WARS=宇宙の戦い」です。この後、シリーズは「父と子の対立」や神話からの様々な引用などにより人間ドラマとしての要素が強まり、より奥の深い物語になりました。しかし、このシリーズの原点は「宇宙空間で展開する戦争アクション映画」であり、それをいかに格好良く描くかが最重要の課題でした。その意味でも、本作は「戦争アクション映画」としての原点に回帰しています。
 この映画は、宇宙空間での戦闘あり、市街戦あり、海岸での地上戦あり、「エピソード4」と「エピソード5」、「エピソード6」の要素を上手く組みこんでいます。映画には、登場するキャラクターの魅力が重要ですが、登場するドロイド、兵器、メカの魅力もまた重要な存在です。本作は、それらのメカ、ドロイドなどを見事に生かすことで素晴らしい「戦争アクション映画」になりました。

<反戦争映画>
 この作品は、戦争アクション映画の傑作となりましたが、そこには現実の戦争に対するアンチの姿勢が見えている気もします。
 デススターの実験により、消滅させられた惑星ジェダの聖なる街。街の雰囲気は明らかに中東風で、ソ連軍の空爆によって地獄のような状況になってしまったアレッポの街を思い浮かべてしまいます。
 ラストのデススターによる惑星スカリフへの攻撃になると、その強い光や強烈な爆風と煙から「原子爆弾」の爆発を思い出さずにはいられません。そう思いながら、ギャレス・エドワーズの経歴を調べていて驚きました。
 イギリス出身の彼は、BBC放送のテレビ番組などで特殊効果を担当。そこからキャリアをスタートさせています。そして、2005年のBBCのドキュメンタリー番組「Hiroshima」では、広島に爆撃機エノラゲイから原子爆弾が投下された瞬間を、特殊効果を使ってリアルに再現。世界中にその映像は衝撃を与えました。この時の英国アカデミー賞特殊効果賞を受賞した彼の原爆投下映像は、You Tubeで見ることができます。(「原爆投下」で)
 2014年に彼がリメイクして世界的な大ヒットなったゴジラ Godzilla」もまた原子爆弾が生んだ怪獣の映画であり、日本映画のリメイクでした。彼と原子爆弾との関りは、どうやらかなり深そうです。

<「エピソード3.5」としての映画>
 もうひとつこの作品の重要なポイントは、第一作「スター・ウォーズ 新たなる希望」への様々な布石を散りばめた「エピソード3.5」としての魅力にあります。もし、あなたが「エピソード4」の内容を忘れているようなら、是非もう一度見直してから本作を見ることをお薦めします。
 映像的にもそうした次作へのつながりを意識している様々な工夫がなされています。ダース・ベイダーに攻め込まれた宇宙船内部の映像は「エピソード4」の冒頭のシーンを思い出させます。さらに登場時間は短いものの、次回作へのつなぎ役となるキャラクターの登場もうれしい限りです。R2D2、C3PO、ダース・ベイダーはもちろんですが、それ以上に驚きだったのが、レイア姫とモフ・ターキン総督です。
 1994年にこの世を去ったピーター・カッシングが演じていたターキン総督の役は誰がやっているのか?でも、どう見ても本人ではないのか?と思ったら、やはりそれはCG映像を用いていたようです。同じくまだ生きてはいるもののかつての容姿とは程遠くなったキャリー・フィッシャーに代わって若きレイア姫を演じているのもまたCG映像のようです。
 いよいよ映画は実写版とCG映像の区別が消え、優れた俳優たちは資してなお、映画に出演できる時代に突入したといえるのかもしれません。
「映画会社と5本の出演契約を行った俳優は、もし事故などでこの世を去っても、自らのCG映像によって映画に出演する義務を負う」
 なんていうハリウッドの契約条項が生まれるかもしれません。それどころか、近い将来「俳優」の肉体は不要となり、「声優」しかいらなくる時代が来る可能性もあるでしょう。(スタントマンもいらないし、メイクも不要だし、何か国語でも喋れるし、どんな場所にも行けるし・・・)いやまてよ、声こそサンプリングしてしまえば不要になるか!

<国際色豊かな映画>
 もうひとつこの作品の特色として特筆すべきは、俳優陣の国際性です。
 英国からは、フェリシティ・ジョーンズ Felicity Jones(ジン・アーソ)とイスラム系のリズ・アーメッド Riz Ahmed(ボーディー・ルック)
 メキシコからは、ディエゴ・ルナ Diego Luna(キャシアン・アンドー)
 オーストラリアから、ベン・メンデルソーン Ben Mendelsohn(オーソン・クレリック)
 中国からは二人で、ドニー・イェン Donnie Yen(チアルート・イムウェ)とチアン・ウェン Jiang Wen(ベイズ・マルバス)
 デンマークからは、マッツ・ミケルセン Mads Mikkelsen(ゲイレン・アーソ)
 アメリカからは、顔出し出演でフォレスト・ウィテカー Forest Whitaker(ソウ・ゲレラ)、顔なしでアラン・テゥディック Alan Tudyk(K-2SO)とジェームズ・アール・ジョーンズ James Earl Jones(ダース・ベイダー)
 日本人がいないのは残念ですが、物語の骨格が「サムライ映画」なのですからまあ良しとしましょう。
 ちなみに撮影は、一作目と同じく英国で行われています。(海岸の戦闘シーンはスリランカ)
 大枠ではディズニー映画ですが、ハリウッド映画のグローバル化を象徴する脱ハリウッド的作品といえます。(反トランプ的な作品ともいえそうです)

「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ROGUE ONE : A STAR WARS STORY」 2016年
(監)ギャレス・エドワーズ Gareth Edwards
(原案)ジョージ・ルーカス George Lucas
(脚)クリス・ワイツ Chris Weitz、トニー・ギルロイ Tony Gilroy
(ストーリー)ジョン・ノール John Knoll、ゲイリー・ウィッタ Gary Whitta
(製)キャスリーン・ケネディ Kathleen Kennedy、アリソン・シェアムール、サイモン・エマニュエル
(製総)ジョン・ノール、ジェイソン・マクガトリン
(撮)グレイグ・フレイザー Greig Fraser
(編)ジャベス・オルセン Jabez Olssen
(衣)グリン・ディロン Glyn Dillon、デイヴ・クロスマン Dave Crossman
(視効)インダストリアル・ライト&マジック
(音)マイケル・ジアッキーノ Michael Giacchino
(出)
フェリシティ・ジョーンズ Felicity Jones(ジン・アーソ)
ディエゴ・ルナ Diego Luna(キャシアン・アンドー)
ベン・メンデルソーン Ben Mendelsohn(オーソン・クレリック)
ドニー・イェン Donnie Yen(チアルート・イムウェ)
マッツ・ミケルセン Mads Mikkelsen(ゲイレン・アーソ)
アラン・テゥディック Alan Tudyk(K-2SO)
チアン・ウェン Jiang Wen(ベイズ・マルバス)
リズ・アーメッド Riz Ahmed(ボーディー・ルック)
フォレスト・ウィテカー Forest Whitaker(ソウ・ゲレラ)
ジェームズ・アール・ジョーンズ James Earl Jones(ダース・ベイダー)
(モフ・ターキン総督)(CG)
(レイア姫)(CG)
<あらすじ>
 銀河帝国軍は銀河系を征服するための秘密兵器デス・スターを完成させるため、優秀な研究者ゲイレン・アーソを誘拐し協力させます。彼を中心としたチームはいよいよその完成に迫っていました。しかし、ゲイレンは完成間近のデス・スターに秘密裏に弱点を仕込んでいました。そこを攻撃することができれば、たとえ最強の兵器でも一撃で破壊することができるようにしたのです。そして、その秘密を帝国軍のパイロットに託し、元反乱同盟軍のソウ・ゲレラに届けさせます。
 その頃、反乱同盟軍のキャシアンは、ソウ・ゲレラに届けられるメッセージについての情報を得て、ソウと接触するため、彼に育てられたゲイレンの娘ジンに協力を求めます。こうしてキャシアンと共にソウのいる惑星ジェダに向かったジンは、そこで久しぶりに育ての親だったソウと再会。彼に届けられていた父親からのメッセージを見ますが、ジェダは帝国軍のデス・スターからの攻撃によって破壊されてしまいます。
 ジンは仲間を集め、父親が残したデス・スターの弱点が書かれた設計図を盗み出す旅へと出発します。

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