時代精神をビートに乗せた吟遊詩人
佐野元春とその時代
 
<デビュー40周年記念「コンプリートボックス」への感謝>
 昔から佐野元春のファンで、彼のページは結構このサイト内でも熱く書き込んだ内容だと思っています。
 そんな思いが通じたのか、佐野さんから突然の依頼を受け、40周年企画「コンプリートボックス」のための文章を書くことになりました。
 残念ながら、その文章は採用されませんでしたが、その間、素晴らしい経験をさせていただきました。
 ぶっちゃけ佐野さんに指名していただき、できた文章を読んでもらえただけでも十分感動ですし、それなりに評価もしていただいたので大満足です。
 
 かつてスティーリー・ダンのアルバム録音には、大人数の凄腕ミュージシャンたちが呼ばれ、膨大な量の録音を行いましたが、そのほとんどはアルバム未収録となりました。それでもなお、ドナルド・フェイゲンらと一緒にアルバム録音に参加したという経験、ステイタスは大きなものがあったと言われます。
 そう考えれば、作品に収める「文章」においても、その収録にこだわるのは佐野さんなら当然のことです。
 思えば、その後に見た「SWITCHインタビュー」(吉増剛三)の怖ろしいまでの「言葉のバトル」を先に見ていたら、恐れ多くて僕は依頼を最初から断っていたかもしれません。

 というわけで、完成した「コンプリート・ボックス」を最初から最後まで録音された時代順に一気に聞いてみました。その間、毎日、その感想を短くまとめてツイートしたものをここで改めて整理・収録しました。
 さらに20世紀中に発表されたアルバムについては、その時代背景を中心にアルバムと時代の関りをその年ごとにまとめました。(その一部は佐野さんに提出した文章です)
 佐野さんの目配りの広さ、気くばりの素晴らしさ、選択眼の厳しさに感心すると共に、そこにわずかながら関われたことに改めて感謝させていただきます。
 天才でありながら人間性も優れた人っているんですね!
 だからこそ、佐野元春のファンは、熱いだけでなく長く彼を追い続けているのだと実感しました。(ツイートを通してそのことも実感!)
 それでは、佐野元春に感謝をこめて!
はみ出し続けるストリートの賢者
佐野元春
(1)1980年 「BACK TO THE STREET」
(デビューからニューヨークへの旅立ち)
1981年「Heart Beat」、1982年「SOMEDAY」
(2)1984年 「VISITORS」
(ニューヨークにて、ヒップホップ&ビート文化との出会い)
 (3)1986年「Cafe Bohemia」
1989年「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」
(ロンドンにて、80年代の総決算)
 (4)1990年「TIME OUT !」
1991年「SLOW SONGS」

(日本&ロンドンにて、立ち止まる時)
(5)1992年「sweet 16」
1993年「THE CIRCLE」

(僕は大人になった)
(6)1996年「フルーツ」
(J-ロック界、豊かな実りの時)
1997年「THE BARN」
(ウッドストックにて、ルーツ・ロックへの回帰)

<アルバム・レビュー>
 ここでは「佐野元春コンプリート・ボックス」から、アルバムが発表・録音された時代順に一言コメントを記しておきます。
 「BACK TO THE STREET」
発表当時は「アンジェリーナ」のインパクトが大きかったのですが、実は「情けない週末」などバラードが素晴らしい。 曲は80年代のブルース·スプリングスティーン風ですが、歌詞は明らかに50年代のビート文化の影響大。 そこの基本については残しつつも、ここから佐野元春の様々な挑戦が始まります!
「Heart Beat」
後に映画「SPEC」のエンディングテーマに使われた「彼女」や「バルセロナの夜」など、やはりバラードが良い。 リマスターにより音像くっきりで美しさがアップしています。 ビリージョエル、ドゥービーブラザース(後期)の影響も大で、1980年という時代の雰囲気が感じられます。 
「SOMEDAY」
改めて聞くと、21世紀の今ブームになっている「シティポップ」の傑作集でした。 そんな「シティ・ポップ3部作」の完成形として発売されて見事にヒット。 「ナイアガラ・トライアングル」の制作で大瀧詠一から学んだストリングス、多重録音の技術が生かされています。 バラード以外も、より魅力的になりバランスが良い作品に仕上がりました。 完璧に近づいた作品だったからこそ、次に行きたくなったのかもしれません。 
「LIVE AT THE SUNPLAZA 1983」 
スタジオ版がビリージョエル的だったのに比べ、ライブは完全にブルース·スプリングスティーン的でパワフル。 思えば、今や二人は日米ロック界のBOSSとなりました。 音楽はもちろん素晴らしいけど、J-ポップの歴史的な聞きどころは、やはりNYへの旅立ち宣言。 ここから佐野元春の新たな挑戦が始まります。 
「NO DAMAGE」
これは「シティポップ」の作品集であって、自分の作品におけるベストアルバムではない。 そんな佐野さんの気持ちはライブアルバムを聞いた後なので良くわかります。 だからこその日本脱出だったのでしょう。 もちろんこれはこれで素晴らしい作品集ですけどね。  
「VISITORS」
もし、1970年代だったら、佐野さんはパティ·スミスのようにロックバンドをバックにポエトリーリーディングをしていたはず。 そう考えると、たまたま1980年代という時代が、彼にヒップホップを選択させたのでしょう。 同じようにこのアルバムにおけるアフロビートやホール&オーツの導入も時代の影響。 まさにオールド・スタイルなヒップホップですが、やはり原点は古くならないことに驚かされます。 
「LIVE VISITORS」 
このライブを聞くと、「VISITORS」で佐野さんが、流行の「ヒップホップ」をやりたかったわけではなかったことが確認できます。 ライブを重視する姿勢は、今も昔も変わりませんが、それにしてもライブがこんなに格好いいなんて。 バンドの能力の高さに驚かされます。佐野元春はやっぱりライブが最高。 
「Cafe Bohemia」 
お天気の良い初夏の小樽市内をドライブしながら聞くと最高でした! お洒落で適度にエスニック風味、今聞いても古くない素敵な時代の素敵な音楽です。 でも佐野さんはそんな時代を、「奇妙な日々」だとも思っていたわけです。そこが凄い。 時代が変わるように、彼の音楽スタイルもまた変わることになります。 
「HEARTLAND」 
オフィシャルでは初のライブアルバムでしたが、圧倒的な迫力。 昔、代々木体育館で聞いたブルース·スプリングスティーンのライブを思い出しました。 パワー全開で、お洒落なスタジオ盤とは全くの別物です。 これが生で聞けるわけですから、佐野元春はライブのチケットがとれないはずです 
「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」 
ビート文化の継承者、佐野元春らしさが最も良く出た作品です。 言葉と音楽の融合が挑戦的に展開され、なおかつポップでもあるという奇跡的なバランスの傑作。 完璧なのに「はみ出している」のが佐野元春であることを再認識させる作品です。 個人的には一番好きかも? 
「Moto Singles」 
やはり、未発表曲中心に構成されたDisc2が聞き所。 アルバム収録するには個性的、素晴らし過ぎた傑作集だったとも言えます。 社会派作品、絵画的、プライベートな作品が特に魅力的です。 「水の中のグラジオラス」「風の中の友達」は特に好きです。 Other Side of Sano 
「TIME OUT !」 
「ナポレオンフィッシュ···」の続編的な作品。 後期ビートルズ、XTC、トッド·ラングレンを思わせるシニカルな曲が並びます。 「君を待っている」は目の前で歌っているように迫ってきます。 人生にはこんな時もある!と逆に心に迫る作品。 
「SLOW SONGS」 
ランディ·ニューマンの名盤「SAIL AWAY」のジャケットを意識した内省的な表情が印象的。 オーケストラを使った曲も上記作品の影響大です。 バラード歌手なのか?と思えるほど良い曲ばかりが並びます。 ベスト盤よりも、繰り返し聞ける夜のお供にピッタリの作品集。 
「sweet 16」 
バディ·ホリーを越えた新たな時代のロックンロール・アルバム。 「廃墟の街」のように、リアルで混沌とした今の世界を写し出す曲も印象的。 でも最後は日本を代表する二人の女性アーティストと明日への希望を歌い見事に締めています。 今までなかった女神とのコラボレーションという新たな展開がお見事です
「THE CIRCLE」
バブル崩壊、世界各地での紛争が生み出したアルバム。 もう「Sweet 16」には戻れない。 そんな覚悟が感じられます。 そのために歌詞の重要性が増しています。 サウンドもずっしり。コロナ禍の今、最も聞かれるべき作品かもしれません
「NO DAMAGE Ⅱ」 
80年代後半から90年代初めまでのベストアルバム。 「NO DAMAGE」に比べて、まったく遜色のない素晴らしい曲が並びます。 佐野元春がその勢いを失っていないことを証明したアルバム。 より曲ごとの個性が明確になっています。
「THE GOLDEN RING」 
佐野さんとハートランドの活動記録とも言えるライブアルバム。 「THE CIRCLE」で閉じた輪は、金色の輪として完成を迎えました。 感慨深い作品を残し、佐野さんは次の時代へと向かいます。 やはりライブあっての佐野元春なのです! 
「フルーツ」 
夏をテーマにした短編映画を集めたオムニバス映画のような作品。 カラフルでドラマチックでノスタルジック。 映画を一本見たような余韻のあるラスト。 最高傑作をまた作りハードルを自ら上げてしまった。 どこまで行くのか?佐野元春。 
「THE BARN」 
ザ·バンド、ボブ・ディラン、ニール·ヤング、リトル·フィート、C,S,N&Yへのオマージュ ジョン·サイモンの元、ザ·バンドの聖地で作られたルーツロックの傑作。 名盤「フルーツ」という果実の後、佐野さんは今一度、畑を耕し始めました。 
「THE BARN LIVE 98」 
ジョン·サイモンとガース·ハドソンを迎え、「BARN」で作り上げたルーツロックの世界を見事なライブ·パフォーマンスへと昇華。 70年代に活躍した究極のバンドたちの世界を完成させた作品。 またも佐野さんはやりきりました。 
「Stone and Eggs」 
前作とのギャップの大きさもあり、じっくりと聞いています。 どう表現すべきか、考えがまだまとまらず。 これもまた佐野さんの意図なのか?
The 20th Anniversary Edition (1980-1999) His Words and Music
ここまで過去作品をリバイバル公開の映画を見るように聞いて来ましたが、このベストアルバムは、その総集編を聞く感じ。 それぞれの曲に思い入れが感じられ、なんだかしみじみしています。旅の終わりが近いような気分。
朝、大掃除しながら大きな音で聴いたので気持ち良かった どれもポジティブな曲ばかりなので元気が出ます。 佐野元春の音楽の良さは、たとえうまくいかないことがあっても、常に前向きだと言うこと。それがすべて
「GRASS」
ジャケットデザイン、アルバムタイトル、選曲と、ビート詩人佐野元春が全面に出たコンピ盤。 ある意味、佐野元春の今の本質が最も表現された奥深い作品集。 ふと「スイッチインタビュー」を思い出しました。シークレット曲まで味わい深い。 
「Spoken Words Collected Poems(1985-2000)」
ポエトリーリーディングの作品集。これ本当に格好いい。 バックトラックが素晴らしく、ライブ録音もあり、なにせノリが最高。これぞ究極の佐野元春 音楽とは何か? ポップミュージックとは何か? 佐野元春の引出しの奥を見た感じ。 
「THE SUN」 
デビューから24年かけ、様々な挑戦続けた佐野元春。 ぐるっと回って若く明るくなった音に驚き。でも歌詞は奥が深い。 ラテンロックとカラッとしたジャケットデザインは、新しい世界観。 コヨーテたちと向かう次なる土地は? 

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