物語る私たちが語りたかったこと 


「物語る私たち Stories We Tell」

- サラ・ポーリー Sarah Polley -
<ドキュメンタリー映画の名作>
 「物語る私たち」というタイトルも魅力的だし、このサイトで紹介している「21世紀の偉大な映画100選」にも選ばれている作品なので、以前から気になっていたのですが、なかなか見つけられずにいました。ところが、先日、何気なくTUTAYAで「その他」のコーナーを見ていたら、こちら向きに置いてあるではないですか!まさかドキュメンタリー映画だったとは、気づきませんでした。
 というわけで、さっそく借りてきました。ウム!これは面白い!是非、お薦めしたいと思います。

 このサイトは、できるだけネタバレしないように、お薦めの作品を紹介しているのですが、この作品はネタバレなしに紹介することが非常に難しいです。なぜなら、この映画は、ほとんど無名のカナダの一家族の母親に関するインタビュー映像を集めたドキュメンタリー映画なので、「俳優の演技」も「映像の美しさ」も「使用せれている音楽」についても、お薦めのしようがありません。
 じゃあ、どこが面白いのかって?ですよね。それは、家族の過去に隠された真実が面白く、さらには映画の裏にある真実はそれに輪をかけて面白いのです!ということで、「あらすじ」を明かすとどうしてもネタバレになるかもしれません。もちろん、最後に明らかになる(いや、指摘しないと気づかない人もいるでしょう)驚きの真相は秘密にしておきますが、できればこの文章を読む前に、この作品を見てほしいです!
 DVDレンタルのお店で、「その他」もしくは「ドキュメンタリー」のコーナーで探してください。

<サラ・ポーリーという女優・監督>
 この映画の監督サラ・ポーリー Sarah Polleyは、カナダ人女優ということもありハリウッド・メジャーの映画への出演は少なく、日本での知名度もそう高くありません。(1970年1月8日オンタリオ州トロント生まれ)母親が女優兼キャスティング・プロデューサーだったこともあり、彼女は4歳の時に映画「クリスマスに届いた愛」(1986年)で俳優デビュー。しかし、彼女が9歳の時に出演した、テリー・ギリアム監督作品「バロン」(1985年)で彼女は主人公の少女を演じましたが、撮影中トラブルが連続し、公開後も興行的に大コケしてしまいました。もしかすると、彼女はヒット作とは縁が薄いのかもしれません。そのうえ、反戦運動など社会活動に熱心な彼女は、ハリウッドの映画界にも批判的でインデペンデント映画を中心に活動しています。そして20代にしてすでに3本の映画を監督し、いずれも高い評価を受けている才女でもあります。
 そんな彼女が11歳の時、母親のダイアンが53歳で癌により他界してしまいます。その後は、父親が男手ひとつで彼女を育ててくれましたが、彼女にとって母親は遠い記憶の中のぼんやりした存在となりました。しかしいつか、母親について知りたいという思いがあり、それがこの映画を生み出すことになりました。

<母親の秘密に迫る>
 子供時代から彼女には大きな解決できない疑問がありました。なぜ自分は他の兄弟と年が離れているのか?なぜ自分は他の兄弟たちと似ていないのか?という疑問でした。
 兄弟たちもまたそのことに気づいていて、もしかすると「サラはうちの子どもじゃないんじゃないの?」と言われることもあり、両親も一緒に笑うこともありました。でもそれが事実なら、それを家族が笑いのネタにはできないはず・・・と思いながらも、そのことを両親にいつか確認したいと思っていたももの聞けないまま時が過ぎていました。
 そこで彼女が考えたのは、両親を含めて、母親のダイアンを知る人々にインタビューし、それを映画にまとめることでした。そこから、母親の実像を再生することで、自分の出生の秘密も明らかになるかもしれないそう考えたのでしょう。

<物語る私たち>
 こうして出来上がった映画は、サラによる様々な人々へのインタビュー映像と8ミリカメラに凝っていた父親が撮影した母親ダイアンのフィルムを編集することでできています。彼女の調査によってわかったのは、サラの母親ダイアンには、サラを生む前にもうひとり別の夫がいて、子供もいたことでした。自分が原因で離婚したダイアンは、子供たちの親権を父親側に奪われていました。
 その後、ダイアンは別の男性を愛するようになります。それがサラの父親で、彼は当時俳優として活躍していました。二人は、意気投合し、そのまま結婚しますが、父親は結婚後俳優業から引退し、保険代理店の仕事を始めます。それはもちろん家族を養うためでしたが、俳優をやめてしまった夫にダイアンは失望してしまったようでした。そんな中、二人の間に子供が生まれると、ダイアンは母親業に専念せざるを得なくなります。そんな子育てだけの生活にうんざりしたダイアンと夫との関係は急激に冷めていきました。
 そんな状況の中、ダイアンにモントリオールで上演される舞台劇への出演オファーが来ます。子育てに一段落していたダイアンにそのオファーは渡りに船で、夫にとっても一度離れることは、関係修復の良い機会に思えました。こうしてダイアンは子供たちを夫に預けてモントリオールへと旅立ちます。
 モントリオールでの舞台は成功し、その後もモントリオールでの仕事を続けるよう誘われたものの、彼女は母親としての仕事に戻るため、トロントに帰ります。そして、帰郷後、しばらくして生まれたのが、サラだったのでした。しかし、その当時の母親の行動を追うと、サラの父親はモントリオール時代の別の誰かである可能性が高いこともわかってきました。
 いよいよサラの父親探しが本格化。ダイアンと当時知り合いだった人物の中から3人の男性が可能性が高いと考えられ、彼女はその3人へのインタビューを行おうとします。はたして、その中に彼女の本当の父親はいるのでしょうか?

<明かしたい秘密>
「秘密には、うちあけたくなる魔力がある」
 これはこの映画のキャッチ・コピーですが、いろいろな意味でこの言葉には真実が隠されています。確かにこの映画に出演している登場人物たちは正直にインタビューに答えてくれます。日本だとこうは上手くゆかないでしょう。あっさりと秘密は明らかになり、サラの父親も簡単に自白してしまいます。ただし、父親の自白がすべてではなく、最後にさらなる秘密が明らかになるのでお楽しみに!
 そして、おまけのメイキング映像もよーく見ていて下さい。注意深く見ていると、重要な秘密が隠されていたことに気がつくはずです。この映画は本当にドキュメンタリー映画なのか?とか・・。
 それが何かは見てのお楽しみです。
 僕も、秘密を打ち明けたくてしかたないのですが・・・これ以上書くのは止めておきます。
 とにかく見てみて下さい!

「物語る私たち Stories We Tell」 2012年
(監)サラ・ポーリー
(製)アニタ・リー
(製総)シルヴァ・バスマジアン
(撮)イリス・ン
(編)マイケル・マン
(出)サラ・ポーリー、マイケル・ポーリー、ダイアン・ポーリー、ハリー・ガルキン、レベッカ・ジェンキンス
ニューヨーク批評家協会ドキュメンタリー賞
ロサンゼルス批評家協会ドキュメンタリー賞

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