「トイ・ストーリー3 Toy Story 3」 2010年

- ランディ・ニューマン Randy Newman 、リー・アンクリッチ Lee Unkrich-

<トイ・ストーリー・シリーズ>
 「トイ・ストーリー」シリーズの第一作「トイ・ストーリー」(1995年)は、映画史における初のフルCGアニメであり、世界のアニメ界をリードするピクサー社の基礎を築いた長編第一作であり、吹き替え作業が終了していたにも関らず、唐沢寿明、所ジョージら大物芸能人を声優に抜擢したアニメ映画の吹き替えを変えた問題作でもありました。しかし、そうした映画界における歴史的価値以上にこの作品の映画としての質の高さこそ特筆すべき点かもしれません。
 フルCGではないもののSF映画「トロン」は世界初のCG映画として歴史的に重要な作品です。しかし、今やその存在は忘れられつつあります。それは根本的にその映画の作品的価値が評価されるほどではなかったからだと思われます。やはり、質がともなわない作品はどんなに話題性があったとしても忘れられる運命にあるのです。
 第一作が公開された1995年から15年、ついにシリーズ第三作となる「トイ・ストーリー3」が公開されました。今回はシリーズ初の3Dアニメ作品で、3部作の完結編になるらしい。そのうえ、いち早く見た人によれば、最高傑作らしいとのこと・・・。そんなわけで、今回はわが家の男3人(父、長男、次男)でかなり期待して見に行きました。

<トイ・ストーリー3>
 噂どうりこの作品シリーズ完結編に相応しい出来映えでした。今回は、特に主人公アンディが大学に入学し親元を離れるため、「別れ」が大きなテーマになっていただけに子供をもつ親としては「涙」なしには見られない作品になっています。・・・泣けました。
 しかし、それ以上に凄いのはアクション映画としての完成度です。特に後半の脱出劇のスリルとサスペンス、そして危機一髪からいかにして抜け出すのか?そのあたりの迫力は、アニメ映画史に残る名場面だと僕は思います。おまけに最後に彼らを救出するのが誰か?その意外性もまた拍手ものです。
 期待に答えて余りある内容でした。

<ランディ・ニューマン>
 この映画、素晴らしいのですが、一つ不満があります。このシリーズの音楽を第一作から担当してきたランディ・ニューマンが歌っているはずのテーマ曲が吹き替えされてしまっていることです。科白の吹き替えは、子供たちに見せるためには仕方ないとしても、作曲者自身が歌っている歌まで吹き替えてしまうなんて・・・。もし、その曲がアカデミー主題歌賞を撮っちゃったらどうするんでしょうか?実際彼は、同じピクサーのアニメ映画「モンスターズ・インク」でアカデミー賞を受賞しているのですから・・・。
 ところで、このランディ・ニューマンのアルバムで「ランド・オブ・ドリームス」という作品があります。発売は1988年ですから「トイ・ストーリー」の一作目の1995年よりもずっと古いことになります。ところが、このアルバム・ジャケットを見ると驚いてしまいます。そこにあるランディ・ニューマンの子供時代の写真がウッディそっくりのカウボーイ・スタイルなのです。周りにステッチ飾りがついた真っ赤なカウボーイ・ハット、黄色にチェックのウエスタン・シャツそして玩具の銃。ウッディのデザインが1940年代を中心に活躍した西部劇のヒーロー、ロイ・ロジャースの派手なカウボーイ・スタイルのマネなのは知られています。しかし、色やデザインまでがそっくりで、なおかつウッディのカウボーイ・ハットからのぞく髪の赤い色と髪型までもがランディのそれとそっくりなのです。そこまで似ていると、ちょっと偶然とは思えないのです。
 さらに、そのアルバムの中に「フォー・アイズ」という曲があります。その中にこんな歌詞があります。
「僕が5歳になったある9月の朝
 パパが、「息子よ、ベッドから起きろ」と言った。
 夢を見ているのかと思った、まだ外は暗かった
 もし出遅れたら一生取り返しはつかなんだぞ
 ほら、小さなブラウンのカウボーイ・シャツを着てみなさい・・・」

 そして、彼のお父さんはロイ・ロジャースのお弁当箱を持たせてくれたのだそうです。ここまでくると、「トイ・ストーリー」の原点にランディ・ニューマンのこのアルバムの存在があるのではないか?そう思えてきます。
 「ランド・オブ・ドリームス Land of Dreams」夢の大地として発展したアメリカという国に住むランディの父親たちと同世代の人々にとって最大の英雄の一人が、ロイ・ロジャースでした。誰もが憧れた英雄は、彼らが親になっても憧れの存在であり続け、子供たちにロイ・ロジャースの衣装まで着せていたわけです。ランディは、そんな父親の時代遅れの感覚に反発を覚え、それを皮肉った曲として「フォー・アイズ Four Eyes」を作ったのでした。

<父親の不在>
 そういえば「トイ・ストーリー」にお父さんは登場しません。この映画は、父親のいないアンディ少年がウッディやバズを父親代わりに一人前の青年へと育ってゆく過程を描いた物語だったともいえます。そして、今回の三作目でついに彼も大人の仲間入りを果たし、そのためにラストには本当の意味の別れがやって来ることになるのです。
 映画を見終わって出てきた時、家族連れのお父さんがこんなことを言っていました。
「この映画見ちゃったらオモチャが捨てられなくなっちゃうなあ」
 でも考えてみると、この映画「オモチャを大切に!」とは教えてくれますが、
「いつかはそれを卒業して、それを愛してくれる子供に受け渡すように!」と言っていることもお忘れなく。
 ちなみに映画から帰って、うちの奥さんにその話をしたらやはり予想どおりの答えが返ってきました。
「そんなの関係ありません。じゃまなモノは捨てます!」
 やっぱりね、女にはわからんのですよ、この気持ち・・・。

<あらすじ>
 大学に進学することが決まったアンディは故郷の街を離れることになり、引越しの準備中でした。彼は母親に「オモチャたち」の処分先を決めるように言われ悩んだ末、アンディだけを引越し先に持ってゆき、それ以外は実家の屋根裏部屋にしまうことにしました。ところが、間違って母親がそのオモチャたちを捨てようとしてしまいます。バズやバービー、ポテトヘッドたちは、このまま捨てられるぐらいなら幼稚園で使われた方が良いと思い、近所の幼稚園に寄付するものの箱に自ら入ってしまいます。
 彼らが向かった先のサニーサイド幼稚園は、一見平和で暮らしやすい理想郷のように見えました。しかし、実際は熊のヌイグルミ、ロッツオに支配された監獄のような社会であることを知った彼らは、そこから脱出しようとしますが、そこには厳しい監視体制がひかれていました。一度はそこを脱出したウッディは、サニーサイドの真実の姿を知り、彼らの救出に向かいます。しかし、アンディの引越しは明日に決まっています。彼は、仲間たちを救い出し、無事にアンディのもとに帰ることができるのか?スリル満点の脱出劇が始まります!

「トイ・ストーリー3 Toy Story 3」 2010年
(監)リー・アンクリッチ Lee Unkrich
(製)ダーラ・K・アンダーソン Darla K.Anderson
(製総)ジョン・ラセター John Lasseter
(原)マイケル・アーント Michael Arndt
(音)ランディ・ニューマン Randy Newman

20世紀映画劇場へ   トップページへ