あなたの隣人は人間か?それとも?


「アンダー・ザ・スキン 種の捕食 Under The Skin」

- ジョナサン・グレイザー Jonathan Glazer -

<見逃がさなくて良かった!>
 BBC放送が選んだ21世紀以降の偉大なる映画100のリストになければ、この映画見ないで終わっていたと思います。おまけに、てっきりオカルト映画かと思っていたので、TUTAYAでもなかなか見つけられずにいました。(SFだったんですね)
 幸いなことに、どんな映画なのか?ほとんど情報なしに見られたのは良かったです。
 なにせ、この作品、先が読めませんし、最後までわからないところがいろいろあります。だって、ほとんど台詞はなく、もちろんナレーションもないので、観客は少ない情報から物語を推測してゆくしかありません。
 ここまで、新鮮な驚きの連続だった作品は久々でした。たとえ、謎がそのまま残されたとしても、たまにはこんな映画を見たいものです。映画とはそもそも観客を驚かせるために生み出された娯楽ののですから。そんなわけで、変に情報がない方が良いという方は、ここから下は読まずに先ずは映画を先に見て下さい。

<2001年宇宙の旅ミニ・ヴァージョン>
 オープニングは映画にとって非常に重要です。僕には、目が生まれる段階を映像化しているようであり、太陽系の惑星直列を重ねたようにも見え、背景では言語を習得する段階が途切れ途切れの音として表現されているようにも聞こえました。そして、オープニングで光が遥か彼方から近づく映像をなぞるように、再び遠くから光が動いてきますが、それはバイクのヘッドランプだということが明らかになります。
 ここまでの一連の流れだけで、一気に引き込まれました!これはやはり「2001年宇宙の旅」へのオマージュなのでしょうか?
 
 こうして映画はスタートしますが、彼女が住むところがどこなのか?なかなかわかりません。アメリカ?東欧?後にそこがスコットランドだとわかります。この映画のもうひとつの魅力は、スコットランドの不思議な光景の数々です。海の波と霧、富士山の樹海のような深く寒々しい森などが地球であって、地球でない場所を見せてくれます。そして、そうした風景とエイリアンの持ち込んだ不思議な空間は微妙に結びつきます。真っ白な霧の中は、まるで彼女が女性から衣服を脱がせる場面の背景のようです。
 しかし、そんな異世界的風景以上に不思議なのが主人公の家?の中の空間です。連れ込んだ男性を誘惑する場面で背景になる黒が恐いのですが、彼らが生きたままその空間に保存されていることの方がもっと怖いかもしれません。よく見ると、最初に衣服を奪われた女性も涙を流していました。ということは、彼女は生きていたのです!
 もしかすると女性が男性を誘惑し皮膚を奪う場面は、黒の世界で行われ、男性(もしかするとバイク乗り?)が女性を誘惑する場面は白の世界なのでしょうか?

 彼女のように男性を誘惑し、その皮膚を奪う仕事をしていると、いつの間にか「情が移る」ことでいつしか人間性を身に着けるようになるのかもしれません。そして、ある時、彼女は自分の仕事に疑問を持つようになり、脱走してしまうです。
 しかし、たとえ脱走できても、その肉体は長くはもたず、限界が訪れる。だから彼女の性器に異常が起き、最後に驚きの正体が明らかになったのでしょう。(あそこまで見せなくても良かったと思うのですが・・・)そう考えると、オープニングの衣服を奪われた女性はもしかすると、そんな脱走エイリアンだったのかもしれません。
(それにしても、男たちが服を脱ぎながら彼女に向かう場面、僕にはどうしても宮沢賢治の「注文の多い料理店」に思えてしまいました。思えば、男たちに服を脱がせるなら女性を出した方が簡単ですね)

<彼らの目的>
 エイリアンたちの目的は何なのでしょうか?
(1)地球生物(人類)の調査が目的でそのために標本を集めている。(実は「皮膚コレクター」のエイリアンだったとか・・・)
(2)地球征服のため、人類の皮をかぶったエイリアンを少しづつ地上に増やしている。(スコットランドの道行く人々がエイリアンに見えてきました・・・)
(3)人類との交雑をすることで、新たな人類型エイリアンを生み出そうとしている。(そのためにセックスが必要なので、美とセクシーさも必要になった・・・)
(4)地球征服のために人類の情報を収集している。(セックス、皮膚、心理的交流、・・・様々な情報を、スコットランドだけでなく世界各地で収集している)
 あなたはどう思いますか?

<あらすじ>
 バンに乗った女性が道行く男性に声をかけ、一人暮らしの男性を乗せると、彼を自宅に招きます。彼女は彼を誘惑し、服を脱ぎながら、招き寄せると、彼の身体は・・・。
 海辺で出会った男性が溺れそうな夫婦を助けようと・・・すると彼女はその男の頭を殴り車に乗せます。彼の寝泊まりしていたテントには、謎のバイク乗りが現れます。
 ある日、彼女はいつものように道で男を乗せますが、彼は崩れた顔のおかげで女性と付き合ったこともなく、彼女の誘惑に夢を見ていると感じていました。そんな彼に対し、彼女は何かを感じたのか?彼はそのまま解放されます。
 そして、彼女は一人放浪し始めることになります。バイクの男は彼女を探し始めます。
 一人でバスに乗っていた彼女を心配して中年男性が、家に泊めてくれます。そんな優しい男性と彼女は夜、セックスしようとしますが・・・
 再び、一人放浪し始めた彼女は森の中をさまよい、山小屋で一晩過ごそうとしますが、トラック・ドライバーの男が彼女を襲います。彼女は、男から逃げようとしますが、ついに捕まり、衣服をはぎ取られます。しかし、・・・

「アンダー・ザ・スキン 種の捕食 Under The Skin」 2013年
(監)(脚)ジョナサン・グレイザー Jonathan Glazer
(製)ジェイズ・ウィルソン、ニック・ウェクスラー
(脚)ウォルター・キャンベル
(原)ミッシェル・フェイバー
(撮)ダニエル・ランディン
(プロ・デザイン)クリス・オッディ
(編)ポール・ワッツ
(音)ミカ・レヴィ(イスラム風の音階、「音楽」というよりも「音響」のような背景曲は、LA批評家協会賞、ヨーロッパ映画賞で共に音楽賞獲得!)
(出)スカーレット・ヨハンソン、ポール・ブラニガン 

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