女子サッカー強豪国はなぜ強い?

<[なでしこ力」は世界を変える>
<「なでしこ」はなぜ強い?>
 女子のワールドカップ・サッカーを見ていると、なぜ「なでしこ・ジャパン」はあんなに強いのか、と疑問に思いませんか?
 男子の代表チームは、現在世界ランク52位にまで落ちているのに、なでしこはここ4年間10位以下に落ちたこともありません。
 1991年に初めて女子のワールドカップ・サッカーが開催されているように、女子サッカーの歴史は男子より60年ほど遅れているといえます。そのせいもあり、強い弱い以前に女子サッカー代表チームすら存在しない国も多く、地域間の格差は男子より大きいといえます。(中東では、女性がサッカー場での観戦すら許されない国もあります)
 そのうえ、世界的に見てもプロのサッカー選手として食べて行けるのはごく一部にすぎないのが女子サッカー界の現状です。そのため、アマチュアとしてプレーできる経済的な余裕がなければ女性たちがサッカーを続けるができず、女子のサッカー人口は経済的な豊かさにも左右されることになります。
 そうなると、女子サッカーの強豪国になるには、女性の地位が確保され、経済的な自立が可能で、社会的、宗教的にプレーが認められるという様々な条件がクリアされる必要があります。
 では、2015年の今、そんな条件をクリアした女子サッカーの強豪国とはどんな国なのでしょうか?
 具体的にそれを調べてみたところ、実に興味深いことがわかりました。(この分野で一冊本がかけそうです)

<女子サッカーの強い国>
 2015年7月の世界女子サッカー・ランキングの上位50チームを地域的に分類するとこうなります。(下記に一覧表を添付しています)
<ヨーロッパ>27<アジア>12<北中米><南米><アフリカ>

さらに2015年のワールドカップ・カナダ大会出場の24チームでは、・・・
<ヨーロッパ><アジア><北中米><南米><アフリカ>

そして、そこからベスト16に残ったチームだと・・・
<ヨーロッパ>7(ノルウェー、イングランド、スイス、ドイツ、スウェーデン、フランス、オランダ)
<アジア>4(日本、中国、韓国、オーストラリア)
<北中米>2(アメリカ、カナダ)
<南米>2(ブラジル、コロンビア)
<アフリカ>1(カメルーン)

ベスト8となると、・・・
<ヨーロッパ>3(イングランド、ドイツ、フランス)
<アジア>3(日本、中国、オーストラリア)
<北中米>2(アメリカ、カナダ)

 ここから見えてくるのは、女子サッカー界の二大勢力は、「欧米とアジア」だということです。
 男子のサッカー界は、昔からずっと「ヨーロッパと南米」の二大勢力により争われてきましたが、女子はそうではないのです。
 さらにこの分析を続けます。

<女子サッカーの弱い国(男子は強いのに)>
 男子の世界ランキング30位以内の国の中で、そのランキングに比べて20位以上、下に女子がランキングされている国は11あります。要するに、男子が強いわりに女子が弱い国です。
それらの国を地域別に分類してみると、以下のようになります。
<ヨーロッパ>5(ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、クロアチア、ギリシャ)
<南米>4(アルゼンチン、コロンビア、ウルグアイ、チリ)
<アフリカ>2(アルジェリア、コートジボワール)
 ここからわかることは何か?
 ヨーロッパの5か国は、ルーマニア、スロバキア、クロアチアが東欧圏の国で、ギリシャは「ギリシャ危機」の当事国だということで、ポルトガルも含め、ヨーロッパでも貧しい国に属しています。
 宗教的には、スロバキア、ポルトガル、クロアチアがカトリック、ルーマニアはルーマニア正教、ギリシャがギリシャ正教の国です。
 南米の4か国について言えるのは、南米の中では貧しい国ではないけれども、いずれも白人中心のカトリックの国でサッカー伝統国だということ。
 アルジェリア、コートジボワールも、アフリカでは経済的には貧しくないもののイスラムの国です。
 傾向的にいえそうなのは、プロテスタントの国ではなく、経済的に豊かな国でもなく、保守的な思想を持ち、サッカーを男のスポーツと考える国民性の国ということでしょうか。
 「サッカーは女のやるスポーツじゃねえんだ」という頑固おやじの国といえるかもしれません。

<女子サッカーの強い国(男子は弱いのに)>
 女子の世界ランキング30位以内の国の中で、逆に20位以上、下に男子がランキングされている国も11ありました。今度は女子が強いのに男子が弱い国です。
それらの国を地域別に分類すると、以下のようになります。
<アジア>7(日本、北朝鮮、オーストラリア、中国、二―ジーランド、韓国、タイ)
<ヨーロッパ>3(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)
<北中米>1(カナダ)
 ここからわかることは、「アジアとヨーロッパ(北欧)」が、男子に比べて女子サッカーが強い国だということです。

 では、この11か国のうち、9か国が出場している2015年のカナダ大会出場国についても見てみましょう。
 大会出場国24のうちで、女子のランキングの方が同じか男子より上にいる国は15あります。
<ヨーロッパ>6(ドイツ、アメリカ、フランス、スウェーデン、イングランド、スペイン)
<アジア>6(日本、オーストラリア、中国、ニュージーランド、韓国、タイ)
<北中米>2(アメリカ、カナダ)
<アフリカ>1(ナイジェリア)

 この15か国は当然「女性が強い国」ということになるはず・・・。そこで、世界経済フォーラムによる「世界男女平等ランキング」を見てみました。
 女性の社会進出や政界での活躍度合、教育格差などの男女差について調査したこのランキングによると、上記15か国の中でその男女平等ランキング30位以内に入っているのは10か国。
 ノルウェー(3位)、スウェーデン(4位)、ドイツ(12位)、ニュージーランド(13位)、フランス(16位)、カナダ(19位)、アメリカ(20位)、オーストラリア(24位)、イングランド(26位)
 スペイン(29位)となっています。
 この10の国は、当然、女性の地位が確保された男女平等が実現しているからこそ女子サッカーが強くなったと想像されます。
 それに対して、注目すべきなのは、ランク外になっている5か国です。その一つナイジェリアは男子が33位で女子43位とそれほど大きな差とはいえません。しかし、残りの4つは明らかに大きな違いがあります。
 タイが女子が29位で、男子は129位(男女平等ランキング61位)
 中国は女子が16位で、男子は79位(男女平等ランキング87位)
 韓国は女子が18位で、男子は58位(男女平等ランキング117位)
 そして日本は、女子が4位で、男子が52位となっています。(男女平等ランキング104位)

 アジアの4つの国だけが、まったく異なる結果なわけです。確かにこれらアジアの国々は、ヨーロッパの基準から見ると男女平等にはほど遠いのかもしれません。にもかかわらず、女子のサッカーは強い。それはなぜでしょう?
 そこには、ヨーロッパの基準とは異なる女性のパワー「アジア的女子力」が働いているのではないかと思います。ヨーロッパの国々では、あらゆることにおいて、男女平等が実現しているのかもしれません。しかし、アジアでは逆に女性の方がパワーを発揮する部分があるのではないでしょうか?それは、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの関係に象徴されているように思います。
 「なでしこ」が強いのは、日本だけが優れているわけではなく、アジア全体のレベルが高いという背景があることを忘れてはいけないのです。

 長年、男子サッカーのトップに君臨しているドイツ・サッカーを支えてきたのは、「ゲルマン魂」と呼ばれる「名誉と誇りを守る」闘争心でした。それに対して、日本の女子サッカーが世界の女子サッカーのトップに位置できている原動力「なでしこ力」は、女性ならではの「笑顔と友情が生み出す」しなやかでしたたかな力です。
 
<笑顔の秘密と強さの秘密>
 女子サッカーの選手は、男子に比べて背負うものが少ないといえます。
 彼女たちは、基本的に好きだからサッカーをやっているのであって、それでビッグ・マネーを得ようとか、芸能人や評論家になろうとか、国のためにメダルを持ち返ろうとか思いながらサッカーをしているわけではありません。
 だからこそ彼女たちは、どんな場面でも笑顔でプレーすることができるのです。
 ただし、好きだからサッカー選手になったのは、他の国の選手にもいえることです。重要なのは、現時点でそんな彼女たちがプレーする環境は世界中ほぼ同レベルにあるということです。女子サッカーには、今のところ世界中のどこにもバルサやマンU、レアルのような巨大クラブはなく、どの選手もほぼ同じような環境で練習し、試合を行っているのです。(逆に、サッカーすらできないマイナス要因はありますが・・・)
 世界中が条件的に横並びで勝負でき、お金や名誉を求めての戦いとは別の試合を行うのですから、そこには「神の手」や「汚い挑発行為」などの汚いプレーは必要とされないし、FIFA上層部のような金の亡者が理事に選ばれることもないはずです。(南米の女子チームが優勝できないのは、そんな男子のマネをしていないからかもしれません)
 今後もし、女子サッカー界が男子のように巨額のお金が動くビッグ・ビジネスになってゆくなら、世界のサッカー勢力図は大きく変わって行くでしょう。
 その時、もう「なでしこ」のあの笑顔は失われているかもしれません。
 
 ファッション界における「カワイイ文化
 アニメやゲームの世界における「オタク文化」
 そして、サッカー界における「なでしこ力」
 これら、日本発のピースフルな文化がアジアを経由して、世界に広がることで、世界は今よりずっと平和になるのではないか?
 僕はそう思っています。これはけっして大げさなことではないはずです。

<参考>
FIFA女子サッカーランキング
ピンク色が今大会出場国)
  1位 ドイツ  11位  ノルウェー  21位  スコットランド 31位  アイルランド  40位  ルーマニア      
  2位 アメリカ 12位  オランダ 22位  ロシア  32位  ポーランド  42位  チリ         
  3位 フランス 13位  イタリア  23位  ウクライナ  33位  ナイジェリア  43位  ミャンマー  53位 カメルーン     
  4位 日本 14位  スペイン 24位  フィンランド  34位  ベトナム  44位  ウズベキスタン         
  5位 スウェーデン  15位  デンマーク  25位  メキシコ  35位  ウェールズ  45位  セルビア         
  6位 イングランド 16位  中国  26位  オーストリア  36位  アルゼンチン  46位  スロベニア         
  7位 ブラジル 17位  ニュージーランド  27位  ベルギー  37位  コスタリカ  47位  トリニダード・トバゴ      67位 コートジボワール 
  8位 カナダ  18位 韓国  28位  コロンビア  38位  ポルトガル  48位  エクアドル         
  9位 北朝鮮 19位 スイス  29位  チェコ  39位  台湾  49位  ベラルーシ         
 10位 オーストラリア 20位  アイスランド 30位  タイ  40位  ハンガリー  50位 パプア・ニューギニア         

サッカー関連のページへ   トップページへ