- XTC -

<ひねくれ者の英国人>
 昔から英国人はひねくれ者と言われています。保守的で伝統を重んじる気風でありながら、常に新しいものを求める相反する国民性、それが英国の文化の最も大きな特徴ではないでしょうか。だからこそ、未だに女王などという古い存在を認めていながら、ビートルズやパンク・ロックなど時代の先端となる文化を生みだし続けているのです。

<ブラック・ユーモアの伝統>
 そんな英国の伝統を最もよく表しているのが、イギリスの誇るブラック・ユーモアの世界でしょう。例えば、独特の毒のあるユーモアで有名なモンティー・パイソン・シリーズ。それにラジオ・ドラマからテレビ・ドラマ化、小説化までされたカルト作品「銀河ヒッチコックガイド」、古くはジョナサン・スウィフトの「ガリバー旅行記」にまでその歴史をたどることもできます。

<最も英国人らしいひねくれバンド>
 そしてポップスの世界におけるそんなひねくれサウンドの代表といえるのが、僕の大好きなXTCです。彼らほど見事にねじれたバンドも珍しいでしょう。バンド名のXTCも、実は「エクスタシー」を意味しているといいます。人間くさい言葉「エクスタシー」をあえて「XTC」と記号化、無機質化する発想からして、彼らは英国人気質のひねくれバンドと言えるでしょう。

<結成からデビューへ>
 XTCが結成されたのは1977年、メンバーは、アンディ・パートリッジ(Vo,G)、コリン・ムールディング(B)、テリー・チェンバース(D)、バリー・アンドリュース(KB)の四人でした。彼らは、当時セックス・ピストルズの後継者となるパンク・バンドを探していたヴァージン・レコード期待の新人として1978年アルバム「ホワイト・ミュージック」でデビューしました。当然、デビュー当時の彼らのサウンドはアバンギャルド・パンクとでも呼ぶべき新しいパンク・サウンドで、その斬新さは、さっそくイギリス中の注目を集めました。

<メンバー・チェンジから人気バンドへ>
 二枚目のアルバム「GO2」発表後、バンドの二本柱のひとつだったバリー・アンドリュースは、元キング・クリムゾンロバート・フリップに引き抜かれてしまいます。しかし、代わりにギタリストのデイブ・グレゴリーが入ると、もう一人の主役だったアンディ・パートリッジのもつ独特のポップ・センスを生かしたXTCのサウンド・スタイルが、かえってはっきりとうち出されるようになります。(とはいえ、XTCはアンディのワンマン・バンドだというわけではありません。コリン・ムールディングは素晴らしい曲を数多く作っているし、デイブ・グレゴリーの存在も大きいと思います)
 1979年の「ドラムス・アンド・ワイヤーズ」、1980年の「ブラック・シー」と徐々にそのポップ・センスは輝きを増し、1982年の二枚組アルバム「イングリッシュ・セツルメント」で、いよいよ彼らのひねくれポップスは、ひとつの頂点をむかえます。(ちなみに、この時のプロデューサーは、後にポリスやジェネシスらを手がけることになるヒュー・パジャムでした)

<世界制覇へのチャレンジ>
 しかし、彼らは傑作アルバム「イングリッシュ・セツルメント」をもってしても、世界的なスターにはなれませんでした。彼らのひねくれポップは、世界一のロック音楽産業の市場、アメリカでは受け入れられなかったのです。(アメリカ人のほとんどのには、XTCを楽しめるセンスがないのと思われますので、それは当然のことかもしれませんが、・・・)それでも、ヴァージン・レコードは、彼らをアメリカで売れるバンドにするため、アメリカ人プロデューサーの起用を進言しました。そこで彼らが自ら選んだのは、アメリカ人ではあっても、彼らと同じようにかなりひねくれた男、アーティスト兼プロデューサーのトッド・ラングレンでした。そして、この二つの強烈な個性のぶつかり合いによって、美しい傑作「スカイラーキング」が生まれ、このアルバムは初めてアメリカのカレッジ・チャートをにぎわすことになりました。

<究極のマイナー・ヒーロー>
 とは言え、彼らは結局世界的なスーパー・スターにはなれませんでした。彼らもまた、イギリスのロック史において、ゾンビーズバッド・フィンガー最近ではオアシスなどが言われ続けてきた「?年代のビートルズ」とか「ビートルズの弟バンド」の系譜に属するバンドなのでしょうか?
 ただ言えるのは、彼ら自身はけっしてそういう存在になろうなどとは思っていなかったと言うことです。心の内側に正直に語りかけながら作ったサウンドが、自然にひねくれているように見えるのです。そのため、僕も含めたひねくれ者とって、XTCは実に正直で純粋な存在に映るのかもしれません。
 ヴァージン・レコードがなかなかマイナーの域を脱することができない彼らを、何故手放そうとしなかったのか?そんな質問に対し、アンディーはこう答えたことがあるといいます。「それは、ヴァージンの社内に僕らのファンがいて、彼らががんばってくれているおかげだよ」きっとそうに違いないでしょう

<XTCの魅力>
 XTCの作り出す音楽は、偽りの臭いがする美しさ、悲しさ、楽しさに満ちている。しかし、現実の世界が多くの偽りによって成り立っていることを思えば、そんな偽りに満ちた世界を生み出す精神の気高さこそ、聞く者の心を打つことができるのかもしれない。
「だって、世の中全体が間違っているんだから、まともな人間がひねくれて見えるのは当然でしょう」
 もし、あなたがそんな考え方に共鳴できるなら、今すぐXTCのファンになるべきです。
 彼らほど、聞く者に哲学させるパワー・ポップ・バンドは、未だかつてないかもしれません。
「たかがポップス、されどポップス」です。

<締めのお言葉>
「すべては毒にして毒にあらず」
 パラケルスス

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