僕だけがビートルズを知る世界にて


映画「イエスタデイ Yesterday」

- ダニー・ボイル、ザ・ビートルズ -
<もしビートルズがいなかったら?>
 この作品の設定が、「ビートルズ」以外の存在ならどうなるのか?つい考えてしまいました。
 もし、エジソンがいなかったら、街に電気がつくのは十年遅れたのか?たぶん、それはないはずです。彼がライバルたちを様々な方法で蹴落としていたことは有名で、彼以外にも成功のチャンスを持っていた人物はテスラリュミエール兄弟など数多くいたはずです。
 21世紀を代表する天才ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズの存在も大きいのですが、彼らがいなくてもネット世界のスピードはどんどんアップしたはず。(インターネットを発明した?ティム・バーナーズ=リーの存在の方が世界を変えたのかもしれません)
 ベートーベン、チャック・ベリージェイムズ・ブラウンボブ・ディランあたりも音楽の歴史を大きく変えた存在ですが、音楽文化への影響以上の存在ではないように思えます。広い意味で世界を変えた存在をあげるなら、キング牧師マハトマ・ガンジーレーニン、J・F・ケネディあたりの大物政治家あたりの大物でなければならないかもしれません。そう考えると、音楽だけではなく、美術、政治、ファッション、ライフスタイル全般すべてに影響を与えた存在で、ビートルズを越える存在はいなかったように思います。

<ダニー・ボイル>
 この作品の監督ダニー・ボイル Danny Boyle といえば、イギリスの若者たちの頽廃的なライフスタイルを描いた「トレインスポッティング」によって世に出た監督ですが、今やロンドン・オリンピック開会式の演出家として英国を代表する大御所となった人物と言えるでしょう。彼の出身はリバプールではなくマンチェスターですが、もちろん、ビートルズ愛も半端じゃないはず。1956生まれなので、解散前のビートルズも知っている世代でもあります。そのおかげもあるのでしょう。この作品は絵的にも様々なビートルズゆかりの地が登場し、台詞の中にも歌詞からの引用があるなど、細部までビートルズのファンにはうれしい作品になっています。
 ちなみにこの作品のエド・シーランの役は、当初、コールドプレイのヴォーカリスト、クリス・マーティンにオファーされていたとのこと。クリスが断ったため、エドにオファーが回ったようですが、二番手でもエドなら快く引き受けてくれたのでしょう。日本が大好きで何度もお忍びで来日しているエドのメンタルは、どうやら日本人的で優しそう。そんな彼のメンタルがこの作品にはピタリとはまっています。主人公が歌う名曲の数々に圧倒され落ち込みながらも、けっして恨んだりしない感じがエド・シーランの好感度をさらに上昇させましたね。

<「イエスタデイ」という曲>
 この作品のタイトルになっている「イエスタデイ」という曲。改めてその歌詞を見てみると、どうもこの作品のストーリーの下敷きになっているようにも思えます。その一部を訳してみるとこんな感じです。
 どうです?この作品の中で、事件が起こるきっかけは世界中が影(暗闇)に覆われるところでしたよね。そして、主人公は突然、その世界にとっては別の人間になったしまったわけです。そして、彼の恋は困難なものになったわけです。その困難を脱するには隠れるしかなかったわけです。

「イエスタデイ Yesterday」
Suddenly I'm not half the man I used to be
There's shadow hanging over me
Oh, Yesterday came suddenly

Yesterday love was such an esy game to play
Now I need a place to hide away
Oh, I believe in yesterday

突然、半分別の人間になってしまったように
僕は影におおわれてしまったんだ。
ああ、それは昨日、突然そうなってしまったんだ。

昨日までは、愛は簡単なゲームだったのに・・・
今は隠れる場所が欲しいぐらいなんだ。
ああ、僕は昨日までのことを信じているんだ。

曲名  演奏  作曲・作詞  コメント 
「Summer Song」
「Rock This Road」 
ヒメーシュ・パテル
Himesh Patel 
Richard Curtis
Aden Ilhan
Daniel Pemberton
ジャック・マリクのオリジナル曲
絶妙に普通の良い曲
「Daft」  ハスキー・ループス
Husky Loops
Husky Loops  ロンドンのインディーズ・バンド
2018年の同名アルバムより 
「Love & Hate」  マイケル・キワヌカ
Michael Kiwanuka 
Brian Burton
Dean J. Cover
Michael Kiwanuka
実名で出演しているロッキーを首にしたアーティスト
イギリスのアフリカ系シンガー・ソングライター
2016年の同名アルバムより 
「When I'm 64」  ザ・ビートルズ
The Beatles 
ジョン・レノン
John Lennon
ポール・マッカートニー
Paul McCartney 
「イエロー・サブマリン」(1967年)収録
映画「ガープの世界」のテーマ曲としても有名
「イエスタデ」
Yesterday 
ザ・ビートルズ
The Beatles  
John Lennon
Paul McCartney 
「ヘルプ!4人はアイドル」(1965年)収録
20世紀ポップスを代表する名曲 
「エリナ―・リグビー」
Eleanor Rigby
ザ・ビートルズ
The Beatles  
John Lennon
Paul McCartney 
1966年発表のシングル(全米11位)
「Revolver」(1966年)収録
マッケンジー神父と老女エリナ―・リグビーの物語
「Maxwell's Silver Hommer」  ザ・ビートルズ
The Beatles  
John Lennon
Paul McCartney 
名盤「アビイ・ロード」収録
マックス・ウェルによる不気味なハンマー殺人のお話 
「ひとりぼっちのあいつ」
Nowhere Man 
ザ・ビートルズ
The Beatles  
John Lennon
Paul McCartney 
「ラバー・ソウル」(1965年)収録(英国では)
シングルは全米3位
「A Day In The Life」  ザ・ビートルズ
The Beatles  
John Lennon
Paul McCartney 
サイケデリック・ロックの名曲
「サージェントペパーズ・ロンリー・クラブ・バンド」(1967年)
「Let It Be」  ザ・ビートルズ
The Beatles  
John Lennon
Paul McCartney 
同名アルバム(1970年)
バンド活動中、最後のシングルで全米1位 
「抱きしめたい」
I Want To Hold Your Hand 
ザ・ビートルズ
The Beatles   
John Lennon
Paul McCartney 
「ミート・ザ・ビートルズ」(1963年)収録
5枚目のシングルで全米1位の大ヒット
「She Loves You」  ザ・ビートルズ
The Beatles   
John Lennon
Paul McCartney 
4枚目のシングルで全米1位の大ヒット(1963年) 
「I Saw Her Standing There」 ザ・ビートルズ
The Beatles   
John Lennon
Paul McCartney 
「プリーズ・プリーズ・ミー」(1963年)収録
シングル「抱きしめたい」B面 
「In My Life」  ザ・ビートルズ
The Beatles   
John Lennon
Paul McCartney 
「ラバー・ソウル」(1960年)収録
私的な体験から生まれたジョン・レノンの作品 
「Shape of You」  エド・シーラン
Ed Sheeran
Kevin Briggs
Steve Mac
Ed Sheeran他
アルバム「÷」収録
2017年全米1位の大ヒット 
「バック・イン・ザ・USSR」
Back In The U.S.S.R.
ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
「ザ・ビートルズ」(1968年)収録
チャック・ベリー「バック・イン・ザ・USA」のパロディー
「Penguins」  エド・シーラン
Ed Sheeran 
John McDavid
Ed Sheeran
この作品のためにオリジナル曲
「ザ・ロング&ワインディング・ロード」に破れた曲
「The Long And Winding Road」 ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
「レット・イット・ビー」(1970年)収録
ビートルズのラスト・シングルで全米1位の大ヒット
「Here Comes The Sun」  ザ・ビートルズ
The Beatles  
ジョージ・ハリソン
George Harrison 
「アビイ・ロード」(1969年)収録
「太陽」をイメージさせるビートルズの代表曲 
「Something」  ザ・ビートルズ
The Beatles    
George Harrison 「Come Together」との両A面シングル(1969年)
全米1位のジョージ・ハリソンの代表曲 
「While My Guitar Gently Weeps」 ザ・ビートルズ
The Beatles    
George Harrison  ジョージの後のソロ曲「ギターは泣いている」の姉妹曲
「ホワイト・アルバム」(1968年)収録 
「Carry That Weight」  ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
「アビイ・ロード」(1969年)収録
アルバムを象徴するメドレー、ラスト曲 
「Strawberry Fields Forever」  ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
「マジカル・ミステリー・ツアー」(1967年)収録
「ペニー・レイン」との両A面シングルで全米8位 
「Hello Goodbye」  ザ・ビートルズ
The Beatles   
John Lennon
Paul McCartney  
「マジカル・ミステリー・ツアー」(1967年)収録
ビートルズを代表する全米1位ヒット
「Wonderwall」  (オアシス)  Noel Gallagher  「モーニング・グローリー」(1995年)収録
オアシスの代表曲であり90年代を代表する曲(全米8位) 
「Hey Jude」  ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
全米1位のシングルでB面は「レヴォリューション」
レノンの息子ジュリアンの愛称「ジュールズ」を変えた 
「ヘルプ! Help !」  ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
映画「4人はアイドル」(1965年)タイトル曲で全米1位
アイドルの苦悩を描いた私的な曲でもあります。
「イエローサブマリン」
Yellow Submarine 
ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
同名アニメ映画のサントラ盤(1969年)収録
全米2位のリンゴ・スターのヴォーカル曲
「You Need Me, I Don't Need You」 エド・シーラン
Ed Sheeran  
Ed Sheeran  アルバム「+」(2011年)収録
ファースト・アルバムからのセカンド・シングル
「愛こそはすべて」
All You Need Is Love 
ザ・ビートルズ
The Beatles    
John Lennon
Paul McCartney  
「マジカル・ミステリー・ツアー」(1967年)収録
世界に録音を生中継した歴史的な名曲で全米1位 
「One Life」  エド・シーラン
Ed Sheeran  
Steve Mac
John McDavid
Ed Sheeran
この作品のためにオリジナル曲でサントラ盤未収録 
「オブラディ・オブラダ」
OB・LA・DI,OB・LA・DA
ザ・ビートルズ
The Beatles   
John Lennon
Paul McCartney   
「ホワイト・アルバム」(1968年)収録
「While My Guitar Gently Weeps」とカップリングで全米49位
歌詞にデズモンド・デッカーの名前がある元祖ホワイトレゲエ
(スカからレゲエ時代のシンガー)
「Hey Jude」   ザ・ビートルズ
The Beatles     
John Lennon
Paul McCartney 
 

「イエスタデイ Yesterday」 (2019年)
(監)(製)ダニー・ボイル
(製)ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、マシュー・ジェイムズ・ウィルキンソン他
(製総)ニック・エンジェル、リー・ブレイジャー、ライザ・チェイシン
(原案)ジャック・バース
(脚)(原案)リチャード・カーティス
(撮)クリストファー・ロス
(PD)パトリック・ロルフ
(編)ジョン・ハリス
(音)ダニエル・ペンバートン
(出)ヒメ―シュ・パテル(ジャック・マリク)、リリー・ジェームズ、ケイト・マッキノン、ジョエル・フライ(ロッキー)
エド・シーラン、ジェームズ・コーデン(テレビ司会者)、ロバート・カーライル(ジョン・レノン!)
<DVDのおまけ>
 DVDのおまけに未公開映像がついています。これがなかなか面白いので是非ご覧ください!
モスクワのライブハウスで「バック・イン・ザ・USSR」を歌い出す前にあやうく大コケしそうになっていたこと。そこでのエド・シーランの残念そうな顔。
主人公がモスクワでエンジニアの女性とベッドインしてしまうという間違ったシーン。(これはカットしてよかった)
主人公の彼女が別の男性と仲良くなってしまうシーン。
本編に関わりのある面白い場面ばかりです。
さらにヒメ―シュ・パテルが、ビートルズの聖地「アビイ・ロード」スタジオでビートルズの曲を演奏する映像。

現代映画史と代表作へ   トップページヘ